社長室での秘密 -孤高のSubを落とすまで-

小鳥遊 琉歌

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金春の淡雪

2.

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 真壁専務の元に就いて早3日。週の折り返し地点にいた葉琉は、優しい真壁専務が実は森崎常務以上に実力主義であり、妥協を許さない仕事の鬼だと思い知らされていた。そして、大企業にしては珍しく完全ホワイト企業と有名なNIIGであるが、それは社員だけで役員である専務や常務といった経営陣は全く関係ないという事も実感していた。
 週半ばにして疲れ果てている葉琉。しかし、出社した秘書室はいつもとは違い、落ち着きがなかった。

「河本室長、おはようございます。何かあったんですか?」

 いつも通り河本に挨拶をし、気になって理由を問う。昨日の退社時、特に何があるなどの連絡はなかったはずだ。

「ああ、神代君、おはよう。実はね、NIIGパリ支社で会長代理として仕事をしていたうちの社長が、急遽こっちに戻ってくることになったんだよ」

 あはは。と少し疲れた様な河本室長。
 今年3月、NIIG会長である現社長の祖父は健康診断で胃ガンであると診断された。まだ早期の発見であったので、すぐ治療に専念し完治させたのだ。その間、社長が会長代理として会長のデスクが置かれているパリ支社に出向していた。元々社長の叔父であるNIIG北米総代表が会長代理になる予定だったが、仕事の内容が大きく異なり社長のほうが適任であると判断されパリ支社へと出向していた。
 ちなみに、その間の本社社長代理は社長の母方の従兄弟である藤堂副社長であった。

「いつ帰ってくるんですか?」
「それが、今日だよ。明け方に成田に到着して、これから出社すると第一秘書の九条さんから連絡がきた」

 河本室長が疲れている原因はそこにあったのか。朧げに納得した葉琉は、もう苦笑するしかなかった。

「そこでなんだけど、神代君には今日から七々扇社長のところに就いてもらうよ」
「…は?!」

 苦笑している河本室長から思わぬ爆弾を落とされた。

「え、ちょ、オレですか!?」
「社長の秘書は今1人しかいなくてね。だから頼んだ。九条さんはキツメの美人さんだけど、仕事は誰よりもできる敏腕秘書だから」

 頼んだよ。と肩を叩かれ、思わず放心してします葉琉。
 そんな彼を置き去りにして、始業時間になってしまった。




「貴方が神代君?」

 エレベーターから一人の美女が現れる。社長秘書の九条さんだ。言い忘れていたが、各役員は全員ハイクラスのDomである。基礎スペックが高いDomのサポートとして、秘書室はクラスは問わないが全員がDomであった。秘書にはCクラスのDomが多い中、九条女史はBクラスのDomだった。

 先にDomやSubの説明をしておくと、全人口の約3%がSub、約12%がDom、約5%がSwitch、残りの約80%がNormalになっている。それぞれDomとSubにはクラスがあり、Aクラスが1%未満、Bクラスが3%、Cクラスが20%、Dクラスが60%の割合になっている。俗にいうハイクラスとは、Bクラス以上であった。
 Domは本能的にSubを求めてしまう性質であり、Subと番になったDomは自分の潜在能力をフルに発揮する事もできる。また、DomとSubが番うと、その子供は高確率でDomかSubになる。Subは元の人口が少ない事もあり、DomやSwitchから大切に扱われていた。しかし、二次性があってないようなNormalたちは、エリートの多いDomを敬い、社会的地位が低いSubを見下す傾向にあった。
 また、Domはそのクラスに応じて容姿が一般人のそれから大きくかけ離れていく。Subも同様であるが、Subの場合は"弱そう"というのが第一印象にくるため、容姿が弄ばれる一因にもなっていた。
 
 そんな中、幼い頃から格闘技をしていた葉琉の身体は、華奢でありながら筋肉が程よく付き、ハイクラスのSubであるため容姿も良く、周りは彼をDomとして誤認していた。就活の時のエントリーシートに二次性を記入するが、個人情報保護法により最重要機密扱いになるため、人事部の部長クラスでないと社員の二次性を知る事はない。また、実家や周りにいる人が全員Bクラス以上のDomである葉琉は、仕事も効率良くできる為、Domでないと配属されないはずの秘書室の配属になってしまった。

「七々扇社長の第一秘書をしている九条よ。河本室長から君がまだ新人だってことは聞いてるから、何か分からない事とかあったら聞いてね」

 エレベーターでタブレットのチェックをしながら、九条が先ほどまで無表情ではなく少しの微笑み付きで言ってくれた。いきなり魔王の異名を持つ七々扇社長の、ヘルプとは言え秘書に抜擢されたのだ。それも新卒で秘書としてまだ2週間も経っていない新人が。九条女史の微笑みには、少しの同情も見え隠れしていた。

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