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講和条約の裏で
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叔母様救出作戦が無事成功いたしました。
ダウナー叔母様だけでなく、叔母様についていたロシア貴族の一部も叔母様の付き人として亡命してきました。
ソビエトと名を変えたロシア側との交渉の結果、ニコライ2世を救うことはさすがに無理でしたが、叔母様は折り合いをつけたと言います。
現在はコペンハーゲンの北にある叔母様が購入したお屋敷で、ロシアからの亡命者とともに滞在しています。
「ご無事で何よりでしたダウナー叔母様」
「久しぶりねテューラ、元気そうで何よりだわ」
美しかった叔母様ですが、だいぶこの度の革命騒ぎで身も心もやられてしまったのかずいぶんと老けて見えます。
叔母様の屋敷に訪問した私は、その時の状況をいろいろと聞きました。
今回ダンマークとして航空便をだしましたから交渉の場にイギリスは介入したものの、ほぼ独力で連れ帰ることができたため、疲労度は前世ほどではないようです。
それでも実の息子たちをなくした失意は相当なものでしょう。
*****
叔母様を励まし、しばらくお茶をした後私はTHI本社へ向かいます。
停戦により、ようやく物流が正常化したのもありますが、イギリスから大量に製造されて余ったエンジン類が到着したと連絡があった為です。
此度の大戦において、航空機の技術開発は相当なものとなりました。
我が国で秘匿してた同軸機銃についても両国とも独力で開発が完了し、双方全金属戦闘機が飛び交うようになりました。
さらには4発爆撃機による塹壕への空爆は日常茶飯事であり、より高性能なエンジンが求められた結果、すでに1,500馬力級のエンジンが量産されるようになっていたのです。
THIではこのエンジン開発競争を指をくわえて眺めていたわけではなく、あえて戦後に技術を買うことを念頭に、全く別のエンジンを開発していました。
とはいえ、そのエンジンの開発は順調とは言えず、それまでは他国のレシプロエンジンに頼ろうというのが社の方針です。
今回イギリスから届いた航空機用のエンジンはブリストルのハーキュリーズ。
最大出力は1650馬力に達する高性能エンジンです。
戦争終結目前に「マーリン」というエンジンも完成したそうですが、量産まではされなかったらしく、このハーキュリーズも量産を開始したものの飛行機が間に合わずにだぶついた在庫をTHIが安く購入したというものになります。
「いよいよ1500馬力越えのエンジンですか、わくわくが止まりません」
THIに行けば今や代表取締役に収まっているレーナが出迎えてくれた。
すでに2男3女も生んだ今も代表取締役として仕事をこなす女傑と言っていい。
ちなみに私は名ばかりの会長職を賜っているわ。
「旅客機の性能向上はもちろんだけれど、護衛戦闘機についても性能アップが目指せるのよね?」
「もちろんです。ただ、前回はマルチロール機としましたが、今回は分ける予定です」
「どうわけるの?」
「旅客、輸送機、爆撃機の護衛用として専門の護衛戦闘機を作ります。それとは別に近接支援機に対する防御を前面に押し出した戦闘機を用意する予定です」
「それは、どうして?」
今まで1機で間に合っていたものを二つに分けねばならなくなったのでしょう?
「今までの航空機であれば、それ専用と言っても大きな差は生まれませんでした。
ですが、今こうしてエンジン性能が上がったことで、機能を特化されるとすべての性能をボチボチとしたマルチロール機では対応しきれないのです」
「それで専用機と?」
「そうです、護衛戦闘機は輸送機以上の速度と上昇力をもって敵を寄せ付けない必要があります。ですが、近接支援機へのカウンターを考えると飛行速度よりも低空、またはその後の上昇力が重要でかつ、敵の重武装に耐える必要がありますから」
「なるほど…」
「ですが、それもレシプロ期の間だけですよ。今研究しているエンジンが主流になると1機当たりの飛行機のコストは莫大な費用になります。そうするとボチボチの性能でもいろんな仕事ができる飛行機を1機だけ用意しないとやっていけなくなりますので」
「例のエンジン、開発はうまくいっているの?」
「基礎技術はアメリカなんかからも入手済みですから何とかやって見せますよ。
あとは熱への対応ですね…ここが難しい」
「いずれにせよ、あと20年で何とかしてほしいわね」
「わかってますって、私だって死にたくありませんからね」
そういってレーナは届いたエンジンのある実験室に案内してくれる。
新品のエンジンはピカピカ輝いており、甲高い音を立てながら回転している。
「いい音でしょう!さすがブリストル!!劣悪な燃料でも問題なく動きます!!!」
「どうでもいいけれど!こんなに回して大丈夫なの!?」
「ぶっ壊れるかの確認ですからいいんですよ!!」
私が来てるときに壊そうとしないでほしいわね…
とはいえ、唸りを上げるエンジンはとても力強く、良いエンジンのように見える。
レーナ曰く、これを改良することで最終的に2000馬力を超えるエンジンをこさえるとのこと。
そうなれば、4発機は2発に落とせるし、4発機の規模は今の倍には大きくできる。
なんなら、搭載量を飛行船に波にできるだろう。
そうなれば”旅客機”の世界はTHIが牛耳出るところまで来るだろう。
戦争に参加せず、生産設備にもダメージがない今こそチャンスなのですから!
ダウナー叔母様だけでなく、叔母様についていたロシア貴族の一部も叔母様の付き人として亡命してきました。
ソビエトと名を変えたロシア側との交渉の結果、ニコライ2世を救うことはさすがに無理でしたが、叔母様は折り合いをつけたと言います。
現在はコペンハーゲンの北にある叔母様が購入したお屋敷で、ロシアからの亡命者とともに滞在しています。
「ご無事で何よりでしたダウナー叔母様」
「久しぶりねテューラ、元気そうで何よりだわ」
美しかった叔母様ですが、だいぶこの度の革命騒ぎで身も心もやられてしまったのかずいぶんと老けて見えます。
叔母様の屋敷に訪問した私は、その時の状況をいろいろと聞きました。
今回ダンマークとして航空便をだしましたから交渉の場にイギリスは介入したものの、ほぼ独力で連れ帰ることができたため、疲労度は前世ほどではないようです。
それでも実の息子たちをなくした失意は相当なものでしょう。
*****
叔母様を励まし、しばらくお茶をした後私はTHI本社へ向かいます。
停戦により、ようやく物流が正常化したのもありますが、イギリスから大量に製造されて余ったエンジン類が到着したと連絡があった為です。
此度の大戦において、航空機の技術開発は相当なものとなりました。
我が国で秘匿してた同軸機銃についても両国とも独力で開発が完了し、双方全金属戦闘機が飛び交うようになりました。
さらには4発爆撃機による塹壕への空爆は日常茶飯事であり、より高性能なエンジンが求められた結果、すでに1,500馬力級のエンジンが量産されるようになっていたのです。
THIではこのエンジン開発競争を指をくわえて眺めていたわけではなく、あえて戦後に技術を買うことを念頭に、全く別のエンジンを開発していました。
とはいえ、そのエンジンの開発は順調とは言えず、それまでは他国のレシプロエンジンに頼ろうというのが社の方針です。
今回イギリスから届いた航空機用のエンジンはブリストルのハーキュリーズ。
最大出力は1650馬力に達する高性能エンジンです。
戦争終結目前に「マーリン」というエンジンも完成したそうですが、量産まではされなかったらしく、このハーキュリーズも量産を開始したものの飛行機が間に合わずにだぶついた在庫をTHIが安く購入したというものになります。
「いよいよ1500馬力越えのエンジンですか、わくわくが止まりません」
THIに行けば今や代表取締役に収まっているレーナが出迎えてくれた。
すでに2男3女も生んだ今も代表取締役として仕事をこなす女傑と言っていい。
ちなみに私は名ばかりの会長職を賜っているわ。
「旅客機の性能向上はもちろんだけれど、護衛戦闘機についても性能アップが目指せるのよね?」
「もちろんです。ただ、前回はマルチロール機としましたが、今回は分ける予定です」
「どうわけるの?」
「旅客、輸送機、爆撃機の護衛用として専門の護衛戦闘機を作ります。それとは別に近接支援機に対する防御を前面に押し出した戦闘機を用意する予定です」
「それは、どうして?」
今まで1機で間に合っていたものを二つに分けねばならなくなったのでしょう?
「今までの航空機であれば、それ専用と言っても大きな差は生まれませんでした。
ですが、今こうしてエンジン性能が上がったことで、機能を特化されるとすべての性能をボチボチとしたマルチロール機では対応しきれないのです」
「それで専用機と?」
「そうです、護衛戦闘機は輸送機以上の速度と上昇力をもって敵を寄せ付けない必要があります。ですが、近接支援機へのカウンターを考えると飛行速度よりも低空、またはその後の上昇力が重要でかつ、敵の重武装に耐える必要がありますから」
「なるほど…」
「ですが、それもレシプロ期の間だけですよ。今研究しているエンジンが主流になると1機当たりの飛行機のコストは莫大な費用になります。そうするとボチボチの性能でもいろんな仕事ができる飛行機を1機だけ用意しないとやっていけなくなりますので」
「例のエンジン、開発はうまくいっているの?」
「基礎技術はアメリカなんかからも入手済みですから何とかやって見せますよ。
あとは熱への対応ですね…ここが難しい」
「いずれにせよ、あと20年で何とかしてほしいわね」
「わかってますって、私だって死にたくありませんからね」
そういってレーナは届いたエンジンのある実験室に案内してくれる。
新品のエンジンはピカピカ輝いており、甲高い音を立てながら回転している。
「いい音でしょう!さすがブリストル!!劣悪な燃料でも問題なく動きます!!!」
「どうでもいいけれど!こんなに回して大丈夫なの!?」
「ぶっ壊れるかの確認ですからいいんですよ!!」
私が来てるときに壊そうとしないでほしいわね…
とはいえ、唸りを上げるエンジンはとても力強く、良いエンジンのように見える。
レーナ曰く、これを改良することで最終的に2000馬力を超えるエンジンをこさえるとのこと。
そうなれば、4発機は2発に落とせるし、4発機の規模は今の倍には大きくできる。
なんなら、搭載量を飛行船に波にできるだろう。
そうなれば”旅客機”の世界はTHIが牛耳出るところまで来るだろう。
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