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鶏を買ったら……知り合いが増えた。

呪われた剣

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「その剣はどうしますか? 仇の武器ですが主は槍よりも剣の方が得意なんですよね」

「そうだけど、騎士でもない僕はこの剣を使えないよ。プルスの仇の剣なら、マグマにでも鎮めておこう」

「私は別に気にしませんけどね」

 プルスは僕の前の契約者に関心がないようだ。

「この剣の持ち主が何で剣をここに突き刺したままにしておいたのか分からないけど、持ち主のいない剣は呪われている可能性があるから、即座に処理しよう」

「了解です。では主、両手を燃やして剣を引き抜いてください。そうすれば呪われません」

「そんな効果があるんだ」

「他にも毒系や麻痺、睡眠などのあらゆる状態効果を全て燃やし尽くして無効にします」

「何それ、凄い……。状態異常に掛からないってすごく便利だね。病気になって死なないなんてありがたいよ」

「そうですか。ならよかったです」

 僕は両手を燃やしながら、突き刺さっている剣を引き抜く。

 剣、全体を炎で包み、呪いを燃やしたら、剣が崩れかけたのですかさずマグマの中に投げ込む。

「これであの剣も主のもとに戻れたね」

「ですね。相当昔の人ですから生まれ変わっていてもおかしくありません」

「まぁ、生まれ変わっていても昔の記憶何てないだろうから、気にする必要ないよ」

「分かっていますよ。では主、街まで向かいましょう。もっと速度を出せばすぐに着けるはずです」

「あれ以上、速度を出すのは怖いけど、落ちないのなら大丈夫か。それにしても、この場所、凄く心地いいんだけど。魔力が溢れてる感じ……」

「確かにこの場には魔力が充満していますね。星の内部に秘められた魔力がマグマと共に地上へ噴き出しているんだと思います」

「なるほど、熱くない僕たちにとっては凄くいい休憩場所だね」

「ですね。この火山のおかげでお腹も満たせました。魔力も補充完了しました。これで対空戦になっても長時間飛べます」

「対空戦ね……。僕としては全く想像できない戦いだよ」

「空を飛ぶ魔物を倒すと思えばいいんですよ」

「ああ、なるほど。でも、空を飛ぶ魔物と普通戦わないよ。僕達人間は圧倒的に不利だからね」

「主なら空を飛べますから、対等に戦えますよ」

「対等に戦えたとしても、戦う必要がないから。というか、本当にプルスは戦うのが好きなんだね。ヒヨコなのに」

「私の楽しみと言えば食事と戦いくらいしかないんですよ。長い時を生きていると何もかもつまらなくなっていくんです。私を楽しませてくれるのは血気盛んな戦いと、食事だけです」

「そうか、プルスにとって趣味が食事と戦いなんだね。それじゃあ、仕方ないか。僕も趣味をしないと生きているのがつまらなく感じるし」

 僕は趣味が出来ない状況の辛さを知っていたので、プルスも相当辛いと思い、少しでも楽になってもらうと思い、手ごろな戦いを考える。

「じゃあちょっとだけ何かと戦ってみようか」

「本当ですか! それじゃあ、今すぐ戦いに行きましょう! そうですね、始めはワイバーン辺りがいいんじゃないでしょうか。それか、さっきのブラックベアー一◯頭でも構いませんよ。主の戦っているところを私はじかで見たいです!」

 プルスは僕の頭の上でぴょんぴょんと跳ね、喜んだ。

「ワイバーンにブラックベアー、無理無理。今のところ僕が倒せると確信しているのは角ウサギだから。角ウサギで勘弁して」

「角ウサギですか? ん~、まぁ、いいでしょう。主が毎日毎日、角ウサギの肉を投げ入れてくれたので、私の好物になってしまいましたから」

「あ、そうなんだ。じゃあ、角ウサギを倒しに火山の麓に向うよ」

「了解です」

 プルスは僕の頭から首根っこを通って背中にくっ付く。

『炎の翼』

 背中に魔力を集めると、炎の翼が現れて僕の体が一気に軽くなる。

「よし、ふっ!」

 僕は強めに地面を蹴る。すると体が浮き上がり、そのまま上昇していく。

「羽ばたいてないのになんで上がっているんだ……」

「火山による上昇気流で浮き上がっているようですね。無駄な魔力を使わずに済みますから、浮上地点にも使えそうです」

「ほんと便利な場所になってるな……。さすがプルスのいた場所。上手くいきすぎて誰かに考えられてるんじゃないの?」

「どうでしょうね、神がいるのなら配慮してくれている可能性は十分あります」

「神様ね……。まぁ、プルスも神獣だし神様が作り出した生き物ってことでしょ。なら絶対に配慮されているよ」

「私は神の顔を知らないので信じられませんがね。逆に死なない体になっているのが少々不愉快です」

「そうなんだ。長生きできたらいいって僕は思うけどね」

「ざっと五億年くらい生きていたら、何もかもつまらなくなりますよ」

「そうか……。僕には五億年がどれくらい長いのか想像できないや。でも、僕は友達としてプルスを何とか楽しませようと努力するから。僕の人生も短いけどその間、いっぱい楽しんでよ」

「主……。それなら、今すぐブラックドラゴンの生息地に行きましょう!!」

「うん、無理だね」

 僕はプルスの意見を押しのけて火山の麓に向う。

 僕達は火山の麓に到着し、冷え切ったマグマの上に降りた。

「よし……。下降もさっきやったから大分上手くできるようになったぞ」

「主は一回できるようになったらすぐに上達する加護でも持っているんですか? あまりにも上手くなりすぎのような気がします」

「え? そんな加護もってないよ。一度できてしまえば、どんな場面でも容量は同じだからさ、そう考えると恐怖がなくなるんだよ」

「ほんと、主から恐怖心が消えたらどうなってしまうんでしょうか。私はそれが気になります」

「人は怖がりの生き物だからね。恐怖心がなくなったらそれは人間じゃないよ。人間に似た他の何かなんじゃないかな」

「私は死の恐怖を感じませんから、恐怖する対象がないんですよね。恐怖、感じてみたいです」

「そっか、死の恐怖がないんだ。死、以上の恐怖心はないと思うんだけど……」

「そうですか、残念です。あ、主、あそこに角ウサギがいますよ」

 プルスが僕の顔を角ウサギがいる方向に変える。

「あ、本当だ。じゃあ、プルスはどうやって戦うのが好き? 魔法や素手、武器、一応どれでも戦えるけど」

「ん~、やっぱり素手の殴り合いが好きです。あれほど力と力のぶつかり合いはありませんから。相手は角ウサギですが、主の戦闘能力がどれほどのものか見させてもらいます」

「素手か、わかった。じゃあ生け捕りすればいいんだね」

「はい。お願いします」

「了解」

 僕は背負っている籠を地面におろし、炎の翼を消す。

 プルスは僕の頭に翼をパタパタとはためかせて飛び乗ってきた。
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