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鶏を買ったら……知り合いが増えた。
冒険者ギルド
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「ん~~、街の中にやっと入れた。家は木製が多いのか。王都とは違うな。湿気対策かな」
「主、おじさんとよく喋れていたじゃないですか」
「あれは僕が質問されていたから答えられただけ。あのままあそこにいたら硬直してたよ」
「なるほど、主は会話を投げかけてもらわないと話せないんですね」
「まぁ、投げかけてくれると楽かな」
「主はめんどくさい人ですね」
「そうかもね」
僕達はおじさんに教えてもらったギルドまで向かう。途中美味しそうな食べ物を売っている屋台があったが、お金が無いので買えなかった。
「あぁ、やっぱり街の人はそこそこ綺麗な服着てるな。それに比べると僕の服はとても酷い。でも、路上生活をしている人たちよりかはましか。お金が入ったら服が数着欲しいな」
「私にも着れる服はありますかね?」
「プルスが服を着たらすぐ燃えちゃうでしょ」
「そうですね。燃えてしまったらもったいないです。なのでこのまま全裸でいいですね」
「羽に覆われてるから全裸ではないんじゃない」
「確かに……」
プルスは自分の翼を広げて体を見回した。
「さてと、冒険者ギルドはここだよね」
僕の目の前にはひときわ大きな建物があり、結構年季の入った木材で建てられている。
赤と黒が基調でどこか危なげな色彩だった。出てくる冒険者さんらしき人たちも見かけの良い人から強面、筋骨隆々、美女、魔法使いなど様々。あまり人と関わるのが苦手な僕にとって、個性が溢れている場所は苦手かもしれない。
「どうしよう、足が動かなくなっちゃった」
「どうしてですか?」
「だって、皆、僕の方をチラチラと見てくるから……」
「主、人の視線は主ではなく、背中から飛び出している石槍に向っています。誰も、普通な主を見ていませんよ」
「うん、なんか棘のある言い方だけど、それならよかった。このまま歩いてギルドの中まで行けそうだうよ」
僕は視線を下に向けながら歩いてく。
「ねえあの子、石槍を持ってるわよ」
「ほんとだ、お金が相当無いのね」
「なぁ、あいつ黒髪だぜ。結構珍しいよな。加えて、ここら辺じゃ見ない顏だ。新人か?」
「そうだな。服装的に金持ちだったんじゃね。親に捨てられたとか」
「あ、それあり得そうだな。こんな辺境の街まで着てご苦労なこった」
――僕を見て冒険者さん達が何か言ってる。でも、僕が来た手前、仕方ないか。僕から話しかけなければ関わることはないだろうし、無視しよう。
「いいですね、血気盛んな若者ですよ。主、やりましょう、今ここで消し炭にして、ぐむ……」
僕は口の悪いヒヨコを握る。
――血気盛んなのはプルスの方でしょ。あの人たちはコソコソ話をしているだけだからほっておけばいいの。
「なるほど、雑魚には興味なしということですね」
――冒険者をやってる人で雑魚はいないよ。ここにいる人達は冒険者の危険な仕事をして、今まで生き残っている。それだけで、雑魚ではないと証明しているよ。
「そう言う見方も出来ますね。ですが! やはり戦いをもごもご……」
僕はプルスを両手で包み、戦いに盛るのを防ぐ。
「えっと……、受付はあっちか」
「主、真っ暗で何も見ないんですが……。手を退けてください」
「もう盛らない?」
「私の心は常に炎が盛っているのですよ。盛らなかったら死んでしまいます」
「そう、なら出来るだけ黙ってて」
「分かりました。数分だけ頑張って堪えてみようと思います」
「出来れば、ギルドカードが発行されるまでは黙っていてほしいんだけどな……」
僕達は受付に到着した
「あ、あの……。ギルドカードを発行してもらいたいんですけど、できますかね。冒険者登録は無しでお願いします」
「ギルドカードの発行だけですか……。構いませんよ。では書類の方をお書きください」
受付の椅子に座っていた女性が書類を出そうとしたので僕はすかさず、門にいたおじさんから貰った紙を受付に出す。
「これ、門のところで書いてもらいました」
「そうでしたか。ではお預かりしますね」
「はい、お願いします」
受付の女性は僕が渡した書類を受け取り、記入漏れがないか確認していた。
「記入漏れはないですね。ではこの情報でギルドカードを発行しますので少々お待ちください」
「分かりました」
「ぴよ~、もう無理です……。息が出来なくて死ぬかと思いました」
――プルス、もう黙っていられなかったの。息を止めてやっと数分の間、喋れなくなるって相当お喋りなんだね。
「何かしていないと落ち着かないんですよ。精神的な疲れかもしれません」
――精神が疲れるほど。嫌な時があったの?
「いえ、特には。もしかしたら、数分間、息を止めていたからかもしれません。そのせいで精神が疲れてしまったのだと思われます。今度からは別の方法を使わないと駄目ですね」
――自分で原因を起こして、対策して、問題点を見つけて次の時の対処法を考えてるよこのヒヨコ。
受付のお姉さんがギルドの奥から戻ってきた。
「お待たせしました。こちらがニクスさんのギルドカードになります」
受付のお姉さんは僕に名前しか記入されていない寂しいギルドカードを手渡してきた。
「あ、ありがとうございます」
僕は女性からギルドカードを受け取る。
「冒険者登録をされていないのでランクの欄は空白になっていますが冒険者登録を行った際に追加されますのでお気になさらず。あと、住所と職業、妻子などの欄も空白になっていますが気にしないようお願いします」
「主、何とも味気ないカードですね。名前しか書かれていませんよ」
――仕方ないよ。事実だから……。でも、ギルドカードを見てたら、ちょっと悲しくなってきた。
「ではこれでギルドカードの発行は終了いたしました。別のお話があればお聞きしますが、何かありますか?」
「あ、それじゃあ僕の採取した鉱物と魔石の鑑定をしてもらえませんか?」
「鉱物と魔石の鑑定ですか……。構いませんけど……無職の方ですよね?」
女性は何か不審な表情をする。
「そ、そうですけど……。何かまずいですか?」
「い、いえ。冒険者ランクを上げるいい機会なのに無職のままでいいのかと思いまして……」
「ランクが上がれば何かいい特典でもあるんですか? 買取金額が上がるとか、何か買うとき安くなるとか」
「そう言った特典はありませんけど、名声や依頼は舞い込んできますよ」
受付のお姉さんは笑顔で言った。
「主、おじさんとよく喋れていたじゃないですか」
「あれは僕が質問されていたから答えられただけ。あのままあそこにいたら硬直してたよ」
「なるほど、主は会話を投げかけてもらわないと話せないんですね」
「まぁ、投げかけてくれると楽かな」
「主はめんどくさい人ですね」
「そうかもね」
僕達はおじさんに教えてもらったギルドまで向かう。途中美味しそうな食べ物を売っている屋台があったが、お金が無いので買えなかった。
「あぁ、やっぱり街の人はそこそこ綺麗な服着てるな。それに比べると僕の服はとても酷い。でも、路上生活をしている人たちよりかはましか。お金が入ったら服が数着欲しいな」
「私にも着れる服はありますかね?」
「プルスが服を着たらすぐ燃えちゃうでしょ」
「そうですね。燃えてしまったらもったいないです。なのでこのまま全裸でいいですね」
「羽に覆われてるから全裸ではないんじゃない」
「確かに……」
プルスは自分の翼を広げて体を見回した。
「さてと、冒険者ギルドはここだよね」
僕の目の前にはひときわ大きな建物があり、結構年季の入った木材で建てられている。
赤と黒が基調でどこか危なげな色彩だった。出てくる冒険者さんらしき人たちも見かけの良い人から強面、筋骨隆々、美女、魔法使いなど様々。あまり人と関わるのが苦手な僕にとって、個性が溢れている場所は苦手かもしれない。
「どうしよう、足が動かなくなっちゃった」
「どうしてですか?」
「だって、皆、僕の方をチラチラと見てくるから……」
「主、人の視線は主ではなく、背中から飛び出している石槍に向っています。誰も、普通な主を見ていませんよ」
「うん、なんか棘のある言い方だけど、それならよかった。このまま歩いてギルドの中まで行けそうだうよ」
僕は視線を下に向けながら歩いてく。
「ねえあの子、石槍を持ってるわよ」
「ほんとだ、お金が相当無いのね」
「なぁ、あいつ黒髪だぜ。結構珍しいよな。加えて、ここら辺じゃ見ない顏だ。新人か?」
「そうだな。服装的に金持ちだったんじゃね。親に捨てられたとか」
「あ、それあり得そうだな。こんな辺境の街まで着てご苦労なこった」
――僕を見て冒険者さん達が何か言ってる。でも、僕が来た手前、仕方ないか。僕から話しかけなければ関わることはないだろうし、無視しよう。
「いいですね、血気盛んな若者ですよ。主、やりましょう、今ここで消し炭にして、ぐむ……」
僕は口の悪いヒヨコを握る。
――血気盛んなのはプルスの方でしょ。あの人たちはコソコソ話をしているだけだからほっておけばいいの。
「なるほど、雑魚には興味なしということですね」
――冒険者をやってる人で雑魚はいないよ。ここにいる人達は冒険者の危険な仕事をして、今まで生き残っている。それだけで、雑魚ではないと証明しているよ。
「そう言う見方も出来ますね。ですが! やはり戦いをもごもご……」
僕はプルスを両手で包み、戦いに盛るのを防ぐ。
「えっと……、受付はあっちか」
「主、真っ暗で何も見ないんですが……。手を退けてください」
「もう盛らない?」
「私の心は常に炎が盛っているのですよ。盛らなかったら死んでしまいます」
「そう、なら出来るだけ黙ってて」
「分かりました。数分だけ頑張って堪えてみようと思います」
「出来れば、ギルドカードが発行されるまでは黙っていてほしいんだけどな……」
僕達は受付に到着した
「あ、あの……。ギルドカードを発行してもらいたいんですけど、できますかね。冒険者登録は無しでお願いします」
「ギルドカードの発行だけですか……。構いませんよ。では書類の方をお書きください」
受付の椅子に座っていた女性が書類を出そうとしたので僕はすかさず、門にいたおじさんから貰った紙を受付に出す。
「これ、門のところで書いてもらいました」
「そうでしたか。ではお預かりしますね」
「はい、お願いします」
受付の女性は僕が渡した書類を受け取り、記入漏れがないか確認していた。
「記入漏れはないですね。ではこの情報でギルドカードを発行しますので少々お待ちください」
「分かりました」
「ぴよ~、もう無理です……。息が出来なくて死ぬかと思いました」
――プルス、もう黙っていられなかったの。息を止めてやっと数分の間、喋れなくなるって相当お喋りなんだね。
「何かしていないと落ち着かないんですよ。精神的な疲れかもしれません」
――精神が疲れるほど。嫌な時があったの?
「いえ、特には。もしかしたら、数分間、息を止めていたからかもしれません。そのせいで精神が疲れてしまったのだと思われます。今度からは別の方法を使わないと駄目ですね」
――自分で原因を起こして、対策して、問題点を見つけて次の時の対処法を考えてるよこのヒヨコ。
受付のお姉さんがギルドの奥から戻ってきた。
「お待たせしました。こちらがニクスさんのギルドカードになります」
受付のお姉さんは僕に名前しか記入されていない寂しいギルドカードを手渡してきた。
「あ、ありがとうございます」
僕は女性からギルドカードを受け取る。
「冒険者登録をされていないのでランクの欄は空白になっていますが冒険者登録を行った際に追加されますのでお気になさらず。あと、住所と職業、妻子などの欄も空白になっていますが気にしないようお願いします」
「主、何とも味気ないカードですね。名前しか書かれていませんよ」
――仕方ないよ。事実だから……。でも、ギルドカードを見てたら、ちょっと悲しくなってきた。
「ではこれでギルドカードの発行は終了いたしました。別のお話があればお聞きしますが、何かありますか?」
「あ、それじゃあ僕の採取した鉱物と魔石の鑑定をしてもらえませんか?」
「鉱物と魔石の鑑定ですか……。構いませんけど……無職の方ですよね?」
女性は何か不審な表情をする。
「そ、そうですけど……。何かまずいですか?」
「い、いえ。冒険者ランクを上げるいい機会なのに無職のままでいいのかと思いまして……」
「ランクが上がれば何かいい特典でもあるんですか? 買取金額が上がるとか、何か買うとき安くなるとか」
「そう言った特典はありませんけど、名声や依頼は舞い込んできますよ」
受付のお姉さんは笑顔で言った。
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