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鶏を買ったら……知り合いが増えた。
茹で卵
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「出来た~。角ウサギの肉」
「凄いぞ、ルパ。まさか一回でここまで解体できるようになるなんて思っていなかったよ。よく頑張ってたね」
「べ、別に。ニクスに褒められてもうれしくない」
ルパは僕に背を向けた。尻尾が少し揺らいでおり、必死に我慢しようとしているのが見て取れる。
素直になってほしいが、僕の嫌われようは相当なものなので、甘えてもらえるようになるまでいったいどれくらい掛かるのやら……。
僕とルパは角ウサギを狩り、家に戻る。
僕は鶏に餌をあげる。その間に、ルパが鶏の卵を取り出した。
「卵が五個も取れた」
「お、鶏たちに感謝しないとね」
「私が三個、ニクスが二個、プルスがゼロ個ね」
「ちょっと、私だけ卵が食べられないなんて酷いじゃないですか」
「だって、プルスはヒヨコでしょ。鶏の子供。共食いになっちゃう」
「た、確かに……」
「じゃあ、プルスは卵を食べられないね。共食いは体に害が出るみたいだから、止めておきな」
「うぅ……。主がそう言うなら、仕方ないですね」
プルスは卵をしぶしぶ諦めた。
「ニクス、この卵、どうやって食べるの? 生のまま飲む?」
「いやいや。ゆで卵にしよう。その方が美味しいよ」
「ゆで卵……。人が朝に食べてた、白い塊のこと?」
「そうだね。ゆで卵は人が朝に食べる時があるかな。栄養が満点だから、ルパの体も強くなるよ」
「ほんと! なら、食べる!」
ルパは卵をキラキラした目で見つめていた。
「じゃあ、ルパは焚火を起こしてくれるかな。僕は角ウサギの解体とゆで卵を作るための道具を作るから」
「わかった!」
ルパは慣れた手つきで焚火を作った。僕は狩った角ウサギの解体を行ったあと、大きな葉っぱを使って、卵が沈むほどの水を汲めるくらいの深さの容器を作る。
「これでよし」
僕は水溜に向い、葉っぱの容器に並々の水を入れて焚火に戻った。ルパは角ウサギを遠火で焼いており、焼けるのを今か今かと待ちわびていた。
僕はプルスの前に、肉を置く。プルスは灰にして突くように肉を食べた。
僕は焚火に割れにくい真っ黒の石を入れる。
「ニクス、何で石を焚火の中に入れるの?」
「お湯を作るためだよ。鉄鍋があればそのまま火に掛ければいいんだけど、まだ鍋を買っていないからさ、原始的な方法でお湯を作ろうと思ってね」
「ふ~ん。まぁ、私は卵が食べられれば何でもいいけど」
ルパの視線は一瞬僕の方を向いたが、すぐに焚火に戻ってしまった。
僕は葉っぱの容器に入っている水に卵を鎮めていく。
「よし。あとはこの中に熱々の石を入れるだけだ」
僕は硬い木の棒を使って、焚火の中に入れていた石を取り出し、二本の木を使ってトングのように石を摘まみ、容器の中に入れた。
「うわっ! すごい、泡立ってる!」
僕は焼き石を三個ほど入れ、お湯が出来ているのを確認し、温度を調節しながら卵を茹でて行った。
角ウサギの肉が焼き上がったころ、ゆで卵も丁度いいくらいになった。
「ニクス。角ウサギが焼けた」
「ルパ、ゆで卵が出来たよ」
僕とルパは気が合うのか、たまたまなのか分からないが、言葉が良く重なる。
「はい。ニクスの肉」
ルパは僕にこんがりと焼けた角ウサギの肉を手渡してきた。
「ありがとう。じゃあ、お返しにゆで卵をどうぞ」
僕はルパに出来立てほやほやのゆで卵を渡す。
「これ、このまま食べるの?」
ルパは卵の殻ごと食べようとしていた。
「いや、殻をむいて中身だけを食べるんだよ」
「どうやってむいたらいい?」
「少し割って、殻だけをぺりぺりっとめくるんだ。少し難しいけど、やってみな」
「わ、わかった」
ルパは卵を少しだけ割り、殻に罅を入れた。爪でかりかりと引っかき、卵の殻をめくる。卵の蔓っとした肌が見えたら、ぺりぺりとむき始めた。
「な、何とかむけた……。でも、ボロボロ……」
ルパの手には殻がむけたゆで卵があったが、所々殻と一緒に身が剥がれてしまったのか、凸凹としていた。
「よく頑張ったね。じゃあ、僕の卵と交換しよう」
僕はつるつるのゆで卵をエナに差し出した。
「え……。これ、ニクスがむいたの?」
「そうだよ。僕、こういうのは得意なんだ。美味しそうでしょ」
「でも、私の凄いボロボロなのに、いいの?」
「もちろん。ルパは初めてなんだから仕方ないよ。さ、交換しよう」
「わ、わかった」
僕はルパからボロボロのゆで卵を貰った。でも、とても一生懸命にむいていた卵なので不味い訳がない。
「塩を掛けると美味しいけど、始めはそのままで食べてみようか」
「うん」
僕とルパは卵を口の中に放り投げ、頬張った。
「ん~。ほくほくで美味しい。塩を掛けなくても十分食べられるな」
「こ、これが……。ゆで卵」
ルパは俯きながら声を漏らす。
「あれ、美味しくなかった?」
ルパは首を横に振る。
「よかった。美味しかったんだね。じゃあ、あと三個もむいちゃうね」
僕はゆで卵の殻を三個むき、二個をルパにあげた。
「ハグ、ハグ……」
ルパはゆで卵を二口で食べきってしまい、口の中が膨れた状態になっている。
「ルパ、慌てて食べると喉を詰まらせちゃうよ。ゆっくり食べないと危ない」
「モグモグモグ……。わかってる」
ルパはよく噛んで卵を飲み込んだ。
「卵、凄い。お腹がもう、いっぱいになった気がする」
「はは、卵は腹持ちがいいからね。角ウサギの肉は運動の後にでも食べればいいし、無理に食べなくてもいいよ」
「別に、食べられない訳じゃない。けど、今は調子がいいからあとで食べる。体が軽い方がよく動けるみたい。今日なら、ニクスを倒せそう」
「はは……。困ったな。ルパが調子いいのに、僕は徹夜明けで体調は万全じゃないや」
「ニクス。言い訳は見苦しい。さっさと戦う」
「はいはい、わかったよ」
僕は木の棒を手に取った。
「今日は武器を使わせてもらう」
「構わない。私も使う」
ルパは短めの真剣を手に取る。
「容赦ないね」
「これなら、私でも振れる。木の棒と剣なら、剣の方が強い。私の体調は万全。ニクスは悪い。つまり、私は勝ったのも同然」
ルパは僕を睨み、殺意を向けてきた。
「凄いぞ、ルパ。まさか一回でここまで解体できるようになるなんて思っていなかったよ。よく頑張ってたね」
「べ、別に。ニクスに褒められてもうれしくない」
ルパは僕に背を向けた。尻尾が少し揺らいでおり、必死に我慢しようとしているのが見て取れる。
素直になってほしいが、僕の嫌われようは相当なものなので、甘えてもらえるようになるまでいったいどれくらい掛かるのやら……。
僕とルパは角ウサギを狩り、家に戻る。
僕は鶏に餌をあげる。その間に、ルパが鶏の卵を取り出した。
「卵が五個も取れた」
「お、鶏たちに感謝しないとね」
「私が三個、ニクスが二個、プルスがゼロ個ね」
「ちょっと、私だけ卵が食べられないなんて酷いじゃないですか」
「だって、プルスはヒヨコでしょ。鶏の子供。共食いになっちゃう」
「た、確かに……」
「じゃあ、プルスは卵を食べられないね。共食いは体に害が出るみたいだから、止めておきな」
「うぅ……。主がそう言うなら、仕方ないですね」
プルスは卵をしぶしぶ諦めた。
「ニクス、この卵、どうやって食べるの? 生のまま飲む?」
「いやいや。ゆで卵にしよう。その方が美味しいよ」
「ゆで卵……。人が朝に食べてた、白い塊のこと?」
「そうだね。ゆで卵は人が朝に食べる時があるかな。栄養が満点だから、ルパの体も強くなるよ」
「ほんと! なら、食べる!」
ルパは卵をキラキラした目で見つめていた。
「じゃあ、ルパは焚火を起こしてくれるかな。僕は角ウサギの解体とゆで卵を作るための道具を作るから」
「わかった!」
ルパは慣れた手つきで焚火を作った。僕は狩った角ウサギの解体を行ったあと、大きな葉っぱを使って、卵が沈むほどの水を汲めるくらいの深さの容器を作る。
「これでよし」
僕は水溜に向い、葉っぱの容器に並々の水を入れて焚火に戻った。ルパは角ウサギを遠火で焼いており、焼けるのを今か今かと待ちわびていた。
僕はプルスの前に、肉を置く。プルスは灰にして突くように肉を食べた。
僕は焚火に割れにくい真っ黒の石を入れる。
「ニクス、何で石を焚火の中に入れるの?」
「お湯を作るためだよ。鉄鍋があればそのまま火に掛ければいいんだけど、まだ鍋を買っていないからさ、原始的な方法でお湯を作ろうと思ってね」
「ふ~ん。まぁ、私は卵が食べられれば何でもいいけど」
ルパの視線は一瞬僕の方を向いたが、すぐに焚火に戻ってしまった。
僕は葉っぱの容器に入っている水に卵を鎮めていく。
「よし。あとはこの中に熱々の石を入れるだけだ」
僕は硬い木の棒を使って、焚火の中に入れていた石を取り出し、二本の木を使ってトングのように石を摘まみ、容器の中に入れた。
「うわっ! すごい、泡立ってる!」
僕は焼き石を三個ほど入れ、お湯が出来ているのを確認し、温度を調節しながら卵を茹でて行った。
角ウサギの肉が焼き上がったころ、ゆで卵も丁度いいくらいになった。
「ニクス。角ウサギが焼けた」
「ルパ、ゆで卵が出来たよ」
僕とルパは気が合うのか、たまたまなのか分からないが、言葉が良く重なる。
「はい。ニクスの肉」
ルパは僕にこんがりと焼けた角ウサギの肉を手渡してきた。
「ありがとう。じゃあ、お返しにゆで卵をどうぞ」
僕はルパに出来立てほやほやのゆで卵を渡す。
「これ、このまま食べるの?」
ルパは卵の殻ごと食べようとしていた。
「いや、殻をむいて中身だけを食べるんだよ」
「どうやってむいたらいい?」
「少し割って、殻だけをぺりぺりっとめくるんだ。少し難しいけど、やってみな」
「わ、わかった」
ルパは卵を少しだけ割り、殻に罅を入れた。爪でかりかりと引っかき、卵の殻をめくる。卵の蔓っとした肌が見えたら、ぺりぺりとむき始めた。
「な、何とかむけた……。でも、ボロボロ……」
ルパの手には殻がむけたゆで卵があったが、所々殻と一緒に身が剥がれてしまったのか、凸凹としていた。
「よく頑張ったね。じゃあ、僕の卵と交換しよう」
僕はつるつるのゆで卵をエナに差し出した。
「え……。これ、ニクスがむいたの?」
「そうだよ。僕、こういうのは得意なんだ。美味しそうでしょ」
「でも、私の凄いボロボロなのに、いいの?」
「もちろん。ルパは初めてなんだから仕方ないよ。さ、交換しよう」
「わ、わかった」
僕はルパからボロボロのゆで卵を貰った。でも、とても一生懸命にむいていた卵なので不味い訳がない。
「塩を掛けると美味しいけど、始めはそのままで食べてみようか」
「うん」
僕とルパは卵を口の中に放り投げ、頬張った。
「ん~。ほくほくで美味しい。塩を掛けなくても十分食べられるな」
「こ、これが……。ゆで卵」
ルパは俯きながら声を漏らす。
「あれ、美味しくなかった?」
ルパは首を横に振る。
「よかった。美味しかったんだね。じゃあ、あと三個もむいちゃうね」
僕はゆで卵の殻を三個むき、二個をルパにあげた。
「ハグ、ハグ……」
ルパはゆで卵を二口で食べきってしまい、口の中が膨れた状態になっている。
「ルパ、慌てて食べると喉を詰まらせちゃうよ。ゆっくり食べないと危ない」
「モグモグモグ……。わかってる」
ルパはよく噛んで卵を飲み込んだ。
「卵、凄い。お腹がもう、いっぱいになった気がする」
「はは、卵は腹持ちがいいからね。角ウサギの肉は運動の後にでも食べればいいし、無理に食べなくてもいいよ」
「別に、食べられない訳じゃない。けど、今は調子がいいからあとで食べる。体が軽い方がよく動けるみたい。今日なら、ニクスを倒せそう」
「はは……。困ったな。ルパが調子いいのに、僕は徹夜明けで体調は万全じゃないや」
「ニクス。言い訳は見苦しい。さっさと戦う」
「はいはい、わかったよ」
僕は木の棒を手に取った。
「今日は武器を使わせてもらう」
「構わない。私も使う」
ルパは短めの真剣を手に取る。
「容赦ないね」
「これなら、私でも振れる。木の棒と剣なら、剣の方が強い。私の体調は万全。ニクスは悪い。つまり、私は勝ったのも同然」
ルパは僕を睨み、殺意を向けてきた。
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