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鶏を買ったら……知り合いが増えた。
二人が出来ることをやる
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「ふっ……。って、笑っちゃう味がする」
「それは美味しいのか、不味いのかどっち?」
「んー。一人で食べたら美味しくないけど、ニクスに食べさせて貰ったら美味しいかも」
「じゃあ、美味しいんじゃん。はっきりそう言いなよ。もう一口食べる?」
「食べる」
僕はルパにスープを与え、ゆっくりと食べさせた。
僕も少しずつ食べてみたが、なかなか食べられる味だった。
美味しくはないけど、不味くもない。そんな感じの味だった。
でも、初めての料理にしては上出来だ。何度も思考錯誤すれば、美味しい料理が作れるかもしれない。
「ルパ、食べてる最中ずっと尻尾振ってたね。そんなに美味しかった?」
「別に、いつもと違った感じだったから面白かっただけ。美味しかったわけじゃない」
「そうなんだ。まぁ、もっと美味しく作れるように努力するよ。ルパも料理をしてみたら楽しいかもしれないよ」
「料理……。は、くだらない。焼いて食べるだけで充分だと思う」
「またそんなやせ我慢して……。でも、料理が出来るようになったらきっと生活は楽しくなるよ」
「……」
ルパは少し考えているのか、黙った。
「僕は料理が苦手だからルパに教えてあげられないけど、本とか買って作り方を覚えれば、ルパにも作れるようになるよ」
「料理が作れて何になるって言うの。別に出来なくても困らない。生きていく中で食事は手段でしかないんだから」
「そうだね。ただ、人は料理を娯楽の一つに数えている。僕は貧乏すぎて料理どころじゃなかったけど、今ならちょっとした料理は作れるんじゃないかな。ルパも一緒に料理を作れるようになろうね」
「まさか強制なの……」
「強制するわけじゃないけど、一緒に作った方が完成したときに美味しいよ。多分、食べさせてもらうより美味しく感じると思う」
「うぅー、なら、ちょっとやってみるしかないじゃん……」
「よし。今日は安静にして、ルパが元気になったら必要な道具を買いに行こう」
「ニクス、やる気満々……。何でやった覚えもないことをそんなにやる気を出してやろうと思えるの?」
「だって、ルパといるだけで楽しいんだもん。僕はルパと何か出来るだけで充分なんだ。それが何だろうが僕は一人じゃないって思えるから、楽しくない訳ないでしょ」
「うぅ、何か恥ずかしい……。ニクスが纏わり付いてくる感じが気持ち悪い……」
ルパは引き気味に言ってくる。でも、僕は彼女の毒舌にも慣れた。逆に僕を意識してくれているようでうれしい。
「じゃあルパは今日も縄を作ってくれるかな。僕は鍛錬をして体を酷使する。ルパは絶対安静だからね。動きたくなっても激しい運動は絶対に駄目だから」
「わかってる。動こうとしなければいいんでしょ。つまり、待てと一緒か……」
ルパは立ち上がろうとするもふら付き、立ち上がれない。
僕は薪と木の皮をルパのもとに持ってきた。
「これで一日過ごせるかな?」
「ん……。薪は足りるけど、縄作りは飽きるかも」
「それなら石削りも追加しようか。同じことをするんじゃなくて、交互にやれば効率よく出来る気がするんだけど、やってみる?」
「石削りって何するの?」
「綺麗な石の周りに付いた柔らかくて見かけの悪い石を取っていくんだ。この前拾った石に綺麗な石が沢山あったから拾っておいたんだ。ちょっとお手本を見せるよ」
僕は綺麗な石に岩が付着している原石を籠から取り出した。
「今からこの石を、綺麗な石だけにしていくんだ」
僕は黒く硬い石で柔らかい岩を砕いていく。コンコンと叩けば、綺麗な石の周りの岩は簡単に砕けて行った。ものの数分でルパすら瞳を輝かせている宝石が現れる。
「よし、これで綺麗な石だけの状態になったでしょ。まずはこれをやって行こうか。この後の工程はまだやらなくていいから、岩を取り除いたら何も入っていない籠の方にそっと入れて行ってね。割れやすい石もあるかもしれないから気をつけて」
「わ、わかった! ちょっとやってみる!」
ルパはおもむろに原石を取り出し、硬く割れない黒い石で岩を叩いていく。柔らかい岩は簡単に剥がれていくものの、硬い岩は中々剥がれない。
「むぅ……。あとちょっとなのに……。こうなったら思いっきり叩いて砕いたほうが早い」
ルパは思いっきり叩きつけようとしたのか腕を高く上げた。僕は咄嗟に止めて、コツを教える。
「ルパ、ずっと同じところを叩くんじゃなくて、円をかきながら少しずつ叩くって言う方法もあるから、着実にしていこう。そうしていれば、いつの間にか壊れていくからさ」
僕はルパの手を持ち、原石の岩を優しく叩いていく。すると、張り付いていた岩が周りから崩れ始め、簡単にポロっと取れた。
「あ、取れた……。こんなに呆気なく……」
「どう、気持ちいいでしょ。汚かった原石が綺麗な石だけになると面白いよね」
「まぁ、ちょっと楽しい」
「よかった。こまごまとした作業が好きなルパに気に入ってもらえて。じゃあ、プルスはルパの取り除いた岩石を処理してくれるかな」
「了解です。岩は焼却します」
僕はプルスをルパの足下に置く。
プルスは地面に落ちた岩を燃やし、消し炭にした。
ルパは作業をもくもくと進め始めたので僕も剣の鍛錬と槍の鍛錬を開始した。
朝食後の三時間ほど剣を振り続け、いい汗を掻いた。お腹が空いたがルパと同じ食事生活をしている僕は何も食べず、槍の鍛錬を開始した。
槍の動きは騎士養成学校の首席であるディアさんの動きを真似して練習していく。
そうした方が本番さながらの練習が出来ると思ったのだ。
僕は武器の鍛錬を終え、身体の鍛錬を行う。
武器が無くなったとしても基礎体力さえあれば生き残れる可能性が上がる。なら、自分の体を鍛えないと言う選択肢はない。
「はっ、はっ、はっ……。よし、これで今日の鍛錬は終了だ。水浴びをして汗を流さないと、ルパにまた、くさいって言われるからな」
僕は川の水で体を綺麗に洗い、乾いた布で体を拭き、新しい服に着替える。
現在の時刻は日の位置からして午後三時。僕のやりたいことが出来る時間が沢山作り出せた。
僕はいい気分になりながらルパのいる焚火場に向う。
「それは美味しいのか、不味いのかどっち?」
「んー。一人で食べたら美味しくないけど、ニクスに食べさせて貰ったら美味しいかも」
「じゃあ、美味しいんじゃん。はっきりそう言いなよ。もう一口食べる?」
「食べる」
僕はルパにスープを与え、ゆっくりと食べさせた。
僕も少しずつ食べてみたが、なかなか食べられる味だった。
美味しくはないけど、不味くもない。そんな感じの味だった。
でも、初めての料理にしては上出来だ。何度も思考錯誤すれば、美味しい料理が作れるかもしれない。
「ルパ、食べてる最中ずっと尻尾振ってたね。そんなに美味しかった?」
「別に、いつもと違った感じだったから面白かっただけ。美味しかったわけじゃない」
「そうなんだ。まぁ、もっと美味しく作れるように努力するよ。ルパも料理をしてみたら楽しいかもしれないよ」
「料理……。は、くだらない。焼いて食べるだけで充分だと思う」
「またそんなやせ我慢して……。でも、料理が出来るようになったらきっと生活は楽しくなるよ」
「……」
ルパは少し考えているのか、黙った。
「僕は料理が苦手だからルパに教えてあげられないけど、本とか買って作り方を覚えれば、ルパにも作れるようになるよ」
「料理が作れて何になるって言うの。別に出来なくても困らない。生きていく中で食事は手段でしかないんだから」
「そうだね。ただ、人は料理を娯楽の一つに数えている。僕は貧乏すぎて料理どころじゃなかったけど、今ならちょっとした料理は作れるんじゃないかな。ルパも一緒に料理を作れるようになろうね」
「まさか強制なの……」
「強制するわけじゃないけど、一緒に作った方が完成したときに美味しいよ。多分、食べさせてもらうより美味しく感じると思う」
「うぅー、なら、ちょっとやってみるしかないじゃん……」
「よし。今日は安静にして、ルパが元気になったら必要な道具を買いに行こう」
「ニクス、やる気満々……。何でやった覚えもないことをそんなにやる気を出してやろうと思えるの?」
「だって、ルパといるだけで楽しいんだもん。僕はルパと何か出来るだけで充分なんだ。それが何だろうが僕は一人じゃないって思えるから、楽しくない訳ないでしょ」
「うぅ、何か恥ずかしい……。ニクスが纏わり付いてくる感じが気持ち悪い……」
ルパは引き気味に言ってくる。でも、僕は彼女の毒舌にも慣れた。逆に僕を意識してくれているようでうれしい。
「じゃあルパは今日も縄を作ってくれるかな。僕は鍛錬をして体を酷使する。ルパは絶対安静だからね。動きたくなっても激しい運動は絶対に駄目だから」
「わかってる。動こうとしなければいいんでしょ。つまり、待てと一緒か……」
ルパは立ち上がろうとするもふら付き、立ち上がれない。
僕は薪と木の皮をルパのもとに持ってきた。
「これで一日過ごせるかな?」
「ん……。薪は足りるけど、縄作りは飽きるかも」
「それなら石削りも追加しようか。同じことをするんじゃなくて、交互にやれば効率よく出来る気がするんだけど、やってみる?」
「石削りって何するの?」
「綺麗な石の周りに付いた柔らかくて見かけの悪い石を取っていくんだ。この前拾った石に綺麗な石が沢山あったから拾っておいたんだ。ちょっとお手本を見せるよ」
僕は綺麗な石に岩が付着している原石を籠から取り出した。
「今からこの石を、綺麗な石だけにしていくんだ」
僕は黒く硬い石で柔らかい岩を砕いていく。コンコンと叩けば、綺麗な石の周りの岩は簡単に砕けて行った。ものの数分でルパすら瞳を輝かせている宝石が現れる。
「よし、これで綺麗な石だけの状態になったでしょ。まずはこれをやって行こうか。この後の工程はまだやらなくていいから、岩を取り除いたら何も入っていない籠の方にそっと入れて行ってね。割れやすい石もあるかもしれないから気をつけて」
「わ、わかった! ちょっとやってみる!」
ルパはおもむろに原石を取り出し、硬く割れない黒い石で岩を叩いていく。柔らかい岩は簡単に剥がれていくものの、硬い岩は中々剥がれない。
「むぅ……。あとちょっとなのに……。こうなったら思いっきり叩いて砕いたほうが早い」
ルパは思いっきり叩きつけようとしたのか腕を高く上げた。僕は咄嗟に止めて、コツを教える。
「ルパ、ずっと同じところを叩くんじゃなくて、円をかきながら少しずつ叩くって言う方法もあるから、着実にしていこう。そうしていれば、いつの間にか壊れていくからさ」
僕はルパの手を持ち、原石の岩を優しく叩いていく。すると、張り付いていた岩が周りから崩れ始め、簡単にポロっと取れた。
「あ、取れた……。こんなに呆気なく……」
「どう、気持ちいいでしょ。汚かった原石が綺麗な石だけになると面白いよね」
「まぁ、ちょっと楽しい」
「よかった。こまごまとした作業が好きなルパに気に入ってもらえて。じゃあ、プルスはルパの取り除いた岩石を処理してくれるかな」
「了解です。岩は焼却します」
僕はプルスをルパの足下に置く。
プルスは地面に落ちた岩を燃やし、消し炭にした。
ルパは作業をもくもくと進め始めたので僕も剣の鍛錬と槍の鍛錬を開始した。
朝食後の三時間ほど剣を振り続け、いい汗を掻いた。お腹が空いたがルパと同じ食事生活をしている僕は何も食べず、槍の鍛錬を開始した。
槍の動きは騎士養成学校の首席であるディアさんの動きを真似して練習していく。
そうした方が本番さながらの練習が出来ると思ったのだ。
僕は武器の鍛錬を終え、身体の鍛錬を行う。
武器が無くなったとしても基礎体力さえあれば生き残れる可能性が上がる。なら、自分の体を鍛えないと言う選択肢はない。
「はっ、はっ、はっ……。よし、これで今日の鍛錬は終了だ。水浴びをして汗を流さないと、ルパにまた、くさいって言われるからな」
僕は川の水で体を綺麗に洗い、乾いた布で体を拭き、新しい服に着替える。
現在の時刻は日の位置からして午後三時。僕のやりたいことが出来る時間が沢山作り出せた。
僕はいい気分になりながらルパのいる焚火場に向う。
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