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新年になり、心が入れ替わる。暖かくなったら、旅に行こう。
ギルドに向かうために街を歩く
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「ニクス、ニクス。街に着いたらカステラを買ってもいい?」
「買ってもいいけど、食べ過ぎたら太っちゃうよ。この前もカステラを食べてたし、ルパは甘いお菓子が本当に好きなんだね」
「甘いお菓子と肉はいくらでも食べられるよ」
「そうなんだ。確かにルパは大食いだからね。毎回お腹いっぱいになるまで食べてたらお金がいくらあっても足りなそうだよ。ま、ルパが頬を膨らませてモグモグしているところは可愛くて僕も好きなんだけどさ」
「ニクスは食べるのが好きなんじゃなくて、私が好きなんでしょ。ほんと、不愉快。人に好かれるとか、ニクスなんてちょっと筋肉質で、いい匂いがして、強くて優しくて誠実なくらいだし。私は全然好きじゃない。でも、ニクスが一緒にいたいって言うから仕方なくいるだけだからね」
「はいはい。わかってるよ。ありがとうね、ルパ。こんな僕と一緒にいてくれて。毎日ルパと過ごせる日々が楽しくて仕方ないよ」
「も、もぅ、いいって。そんなふうに入れてもうれしくないし」
ルパは尻尾を振らし、僕の胸に顔を当てて表情を隠していた。かわいいなもぅ。
僕達は街に到着した。と言っても、街の一歩手前でいつも通り地面に降り立つ。
「はっ。やっと離れられる。一〇分も抱き着いてるとか、仲良しみたいじゃん。誰にも見られないでよかった」
ルパは地面におりついてから五分程して、僕から離れた。どうやら、心地よすぎて寝てたらしい。僕はルパを起こすまいと空中に浮いているようにおもわせるため、すこしゆらしながら、立っていた。そのせいで五分間も地上にいるとは思わなかったらしい。
「じゃあ、街まで行こうか。ルパとプルスは魔物の警戒をしてくれるかな」
「もう、仕方ないなー」
「了解です」
角ウサギが大量発生してから草原で魔物は滅多に現れなくなった。そのお陰で魔物の警戒をする必要もあまりないのだが、ルパには魔物を見つける才能があるらしく、索敵として優秀な力を持っている。加えて七カ月の間に相当強くなった。
歩兵や兵士、ゴブリンくらいなら余裕で倒せるくらいだ。
最近になって僕もゴブリンを倒せるようになった。首の骨を折れば汚れず、楽に倒せると知ったのだ。ゴブリンの血で汚れるとルパが嫌がって一緒に寝てくれないので、あまり倒したくはないが、森で増えると角ウサギが食べられなくなるので仕方なく駆除している。
ほどなくして僕達は街の門へとやってきた。以前お世話になった傭兵のおじさんが門の前で立っており、大空を見上げてあくびをかましている。
「こんにちは。最近は温かくなってきて快適ですね」
「ああ、誰かと思えば、ニクスか。そうだな。三月に入ったら今まで寒かったのが嘘みたいに温かくなったな。だが、くしゃみ、はなみず、涙が止まらなくなる季節でもあるから、困る。紙が足りなくて仕方ないぜ」
「そうですか。それは大変ですね。口と鼻に薄手の布を着けると症状が緩和されるって聞いた覚えがありますから、試してみるといいかもしれませんよ」
「そうなのか? 早速試させてもらうとするよ。っと、こんな話をしている場合じゃなかったな。街の中に入るんだろ?」
「はい。門を開けてください」
「わかった。ギルドカードを拝見する」
僕はギルドカードをおじさんに見せて開いた門から街の中に入った。
「ニクス、あの人は何であそこに立ってるの? 凄く暇そうにしてた」
ルパは後方を振り返り、おじさんを見る。
「あの人はこの街を守っているんだよ。暇なのはいいことさ。平和ってことだからね」
「確かに……。戦っていたら暇じゃいられないもんね」
ルパは街の中を見回しながら僕の後をついてくる。両腰に革で出来た剣ホルダーを避け、刃渡り三〇センチメートルの短剣を下げている。
右腰にボトルホルダーもついており、金平糖の入っている瓶が大切に守られていた。
ルパの服装はショートパンツに薄手の服。背中には僕と同じマントを羽織り、首には僕の作ってあげたペンダントを下げていた。冒険者と言うわけではないが、僕達は冒険者っぽい恰好をしている。理由はこの格好をしていないと、獣族を連れて歩くのが凄く目立つのだ。
「ルパ、そのペンダントは服の内側に入れないと危ないよ。盗賊に襲われるかもしれない」
「えぇ……。でも、これ見ながら歩きたい……」
「それじゃあ、ペンダントの意味がないよ。お守りみたいなものだからさ、出来るだけ隠しておいたほうが効果はあるよ」
「そうなの……。じゃあ、仕方ないから隠すよ」
ルパはペンダントの飾りを持ち、服の胸元をグイっと引っ張って伸ばしたあと、内側に入れた。ルパのチッパイが見えそうになってドキッとしたが、実際に見えていないので問題はない。
ルパもそろそろ布で胸を隠した方がいいのではないだろうか……。だが、ルパは嫌がるだろうな。出来るだけ服は着たくないって言う変わっている部族だし。でも、人の文化に触れて徐々に羞恥心も芽生えてきたのなら付けてくれそうな気もする。
僕達は歩いて冒険者ギルドまでやってきた。少し前まで錆びついた感じだったのだが、すごく綺麗な建物になっている。
僕が狩った角ウサギの報酬で建物の改修工事を行ったらしい。そのお陰で冒険者用のアイテムや武器などを取りそろえられたらしく、冒険中に死亡する者が減ったのだとか。
まぁ、一番大きいのはBランク冒険者のグラスさんがAランクに昇格し、冒険者ギルドで新人たちの指導者役をかってでたからだそうだ。グラスさんの実力は本物らしく、召喚獣を使役できていることからも凄いと言われているらしい。
「テリアさん、冒険者ギルドに人が沢山増えましたね」
僕は受付に座っているテリアさんに話しかけた。
「あ、ニクスさん。ルパちゃん。こんにちは。おかげさまで、冒険者の数が増えて街もギルドも儲かっていますよ。今日は何をしにいらしたんですか?」
「素材の買い取りと小切手について聞こうと思いまして。あと、手紙を書いたので、あて先の方に送りとどけてください」
「わかりました。では、素材の査定させてもらいますから、ギルドカードと素材を見せてもらえますか? あと、手紙を受け取りますので出してください」
「わかりました」
僕は背負っていた籠をテリアさんに渡す。加えてディアさん充ての手紙も出した。
「買ってもいいけど、食べ過ぎたら太っちゃうよ。この前もカステラを食べてたし、ルパは甘いお菓子が本当に好きなんだね」
「甘いお菓子と肉はいくらでも食べられるよ」
「そうなんだ。確かにルパは大食いだからね。毎回お腹いっぱいになるまで食べてたらお金がいくらあっても足りなそうだよ。ま、ルパが頬を膨らませてモグモグしているところは可愛くて僕も好きなんだけどさ」
「ニクスは食べるのが好きなんじゃなくて、私が好きなんでしょ。ほんと、不愉快。人に好かれるとか、ニクスなんてちょっと筋肉質で、いい匂いがして、強くて優しくて誠実なくらいだし。私は全然好きじゃない。でも、ニクスが一緒にいたいって言うから仕方なくいるだけだからね」
「はいはい。わかってるよ。ありがとうね、ルパ。こんな僕と一緒にいてくれて。毎日ルパと過ごせる日々が楽しくて仕方ないよ」
「も、もぅ、いいって。そんなふうに入れてもうれしくないし」
ルパは尻尾を振らし、僕の胸に顔を当てて表情を隠していた。かわいいなもぅ。
僕達は街に到着した。と言っても、街の一歩手前でいつも通り地面に降り立つ。
「はっ。やっと離れられる。一〇分も抱き着いてるとか、仲良しみたいじゃん。誰にも見られないでよかった」
ルパは地面におりついてから五分程して、僕から離れた。どうやら、心地よすぎて寝てたらしい。僕はルパを起こすまいと空中に浮いているようにおもわせるため、すこしゆらしながら、立っていた。そのせいで五分間も地上にいるとは思わなかったらしい。
「じゃあ、街まで行こうか。ルパとプルスは魔物の警戒をしてくれるかな」
「もう、仕方ないなー」
「了解です」
角ウサギが大量発生してから草原で魔物は滅多に現れなくなった。そのお陰で魔物の警戒をする必要もあまりないのだが、ルパには魔物を見つける才能があるらしく、索敵として優秀な力を持っている。加えて七カ月の間に相当強くなった。
歩兵や兵士、ゴブリンくらいなら余裕で倒せるくらいだ。
最近になって僕もゴブリンを倒せるようになった。首の骨を折れば汚れず、楽に倒せると知ったのだ。ゴブリンの血で汚れるとルパが嫌がって一緒に寝てくれないので、あまり倒したくはないが、森で増えると角ウサギが食べられなくなるので仕方なく駆除している。
ほどなくして僕達は街の門へとやってきた。以前お世話になった傭兵のおじさんが門の前で立っており、大空を見上げてあくびをかましている。
「こんにちは。最近は温かくなってきて快適ですね」
「ああ、誰かと思えば、ニクスか。そうだな。三月に入ったら今まで寒かったのが嘘みたいに温かくなったな。だが、くしゃみ、はなみず、涙が止まらなくなる季節でもあるから、困る。紙が足りなくて仕方ないぜ」
「そうですか。それは大変ですね。口と鼻に薄手の布を着けると症状が緩和されるって聞いた覚えがありますから、試してみるといいかもしれませんよ」
「そうなのか? 早速試させてもらうとするよ。っと、こんな話をしている場合じゃなかったな。街の中に入るんだろ?」
「はい。門を開けてください」
「わかった。ギルドカードを拝見する」
僕はギルドカードをおじさんに見せて開いた門から街の中に入った。
「ニクス、あの人は何であそこに立ってるの? 凄く暇そうにしてた」
ルパは後方を振り返り、おじさんを見る。
「あの人はこの街を守っているんだよ。暇なのはいいことさ。平和ってことだからね」
「確かに……。戦っていたら暇じゃいられないもんね」
ルパは街の中を見回しながら僕の後をついてくる。両腰に革で出来た剣ホルダーを避け、刃渡り三〇センチメートルの短剣を下げている。
右腰にボトルホルダーもついており、金平糖の入っている瓶が大切に守られていた。
ルパの服装はショートパンツに薄手の服。背中には僕と同じマントを羽織り、首には僕の作ってあげたペンダントを下げていた。冒険者と言うわけではないが、僕達は冒険者っぽい恰好をしている。理由はこの格好をしていないと、獣族を連れて歩くのが凄く目立つのだ。
「ルパ、そのペンダントは服の内側に入れないと危ないよ。盗賊に襲われるかもしれない」
「えぇ……。でも、これ見ながら歩きたい……」
「それじゃあ、ペンダントの意味がないよ。お守りみたいなものだからさ、出来るだけ隠しておいたほうが効果はあるよ」
「そうなの……。じゃあ、仕方ないから隠すよ」
ルパはペンダントの飾りを持ち、服の胸元をグイっと引っ張って伸ばしたあと、内側に入れた。ルパのチッパイが見えそうになってドキッとしたが、実際に見えていないので問題はない。
ルパもそろそろ布で胸を隠した方がいいのではないだろうか……。だが、ルパは嫌がるだろうな。出来るだけ服は着たくないって言う変わっている部族だし。でも、人の文化に触れて徐々に羞恥心も芽生えてきたのなら付けてくれそうな気もする。
僕達は歩いて冒険者ギルドまでやってきた。少し前まで錆びついた感じだったのだが、すごく綺麗な建物になっている。
僕が狩った角ウサギの報酬で建物の改修工事を行ったらしい。そのお陰で冒険者用のアイテムや武器などを取りそろえられたらしく、冒険中に死亡する者が減ったのだとか。
まぁ、一番大きいのはBランク冒険者のグラスさんがAランクに昇格し、冒険者ギルドで新人たちの指導者役をかってでたからだそうだ。グラスさんの実力は本物らしく、召喚獣を使役できていることからも凄いと言われているらしい。
「テリアさん、冒険者ギルドに人が沢山増えましたね」
僕は受付に座っているテリアさんに話しかけた。
「あ、ニクスさん。ルパちゃん。こんにちは。おかげさまで、冒険者の数が増えて街もギルドも儲かっていますよ。今日は何をしにいらしたんですか?」
「素材の買い取りと小切手について聞こうと思いまして。あと、手紙を書いたので、あて先の方に送りとどけてください」
「わかりました。では、素材の査定させてもらいますから、ギルドカードと素材を見せてもらえますか? あと、手紙を受け取りますので出してください」
「わかりました」
僕は背負っていた籠をテリアさんに渡す。加えてディアさん充ての手紙も出した。
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