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新年になり、心が入れ替わる。暖かくなったら、旅に行こう。
リリルとルパの鍛錬
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「ふぅ……。どうぞ。どこからでもかかってきなさい」
リリルは剣を構えながら言う。
「わかりました! ふぅ……、じゃあ、行きます!」
ルパは地面が抉れるほどの力で一歩目を踏み込み、一瞬でリリルの攻撃範囲に入り、超低姿勢から短剣を突き出して攻撃した。
「えっ、はやっ! くっ!」
リリルは剣をルパの持っている短剣に沿わせ、攻撃の軌道を流し、ルパの開いた脇腹に蹴り込もうとする。
「ふっ! そいやっ!」
ルパは空中で頭の位置を上下反転し、リリルの蹴りを回避する。そのまま、空中で姿勢を保ちながらリリルの左肩に目掛けてしなやかなばねを使った右脚で蹴り飛ばした。
ルパの蹴りは強く、鎧を着た大柄なリリルを蹴り飛ばす。
「うわっつ!」
リリルは右手を地面につけ、頭から落下するのを防ぐ。そのまま、後方に跳ね、体勢を立て直した。だが、驚きの表情が隠し切れず、僕の方をチラチラ見てくる。
「リリル、油断していると危ないよ。昔、教えたでしょ」
「え……。うわっつ!」
リリルは余所見をしていたせいで、急接近しているルパに気づけず、脚を跳ねられ転ばされる。
「はいっ!」
ルパはリリルの脚を跳ね上げて転ばせたあと、短剣を顔の目の前に突き出し、一本勝ちした。
「ま、まいりました……」
リリルはポケ~っとした顔で、何が起こっているのかわからないと言った表情をしている。
「リリル、初めて戦う相手に油断なんてしたら駄目じゃないか。チラチラと僕の方を見ても何も戦いの糸口になるような情報はないよ」
「す、すみません……。ルパちゃんの動きに圧倒されてしまいました。まさか双剣と獣族の動きがここまで相性がいいなんて……。私はまだまだですね」
リリルはペタンコ座りをしながら、うなだれる。
「違うよ、リリル。今は負けたかもしれないけど、本当の戦いじゃないから負けじゃない。死ななければ勝ちだから、実質リリルも勝っているんだ。さ、まだまだなのは練習量だよ。力量じゃない」
「は、はい! あと、ルパちゃんの動き、凄くよかったよ。初めは何とか対処できたけど、二回目は出来なかった。一回居場所を見失うと、速度についていけない。今日戦ったミートさんと似てるけど似てない感じがする。ミートさんは私の苦手な部分を的確に突いてくる感じがした。ルパちゃんも相手が嫌がる攻撃をたくさん繰り出せばもっと勝率が上がるんじゃないかな」
「な、なるほど……。ありがとうございます。やってみます!」
ルパは頭を深々と下げ、感謝の言葉を口にした。
「よし! 今日は夜遅くまで付き合うよ。明日は王都に帰るだけだから疲れないし」
リリルは立ち上がり、鎧に着いた砂埃を払って意気込む。
「よろしくお願いします!」
リリルとルパは午後八時から午後一〇時くらいまで鍛錬をして、互いにいい刺激を受けながら戦っていた。
勝率はリリルの方が高く、ルパは新しい作戦を考えるにあたり負けている印象があった。色々模索しているらしい。僕を倒すために研究をするなんて、ルパは努力家だなぁ……。
「はぁ、はぁ、はぁ……。つ、疲れた……。リリルさんとの戦い、楽しい~!」
「はぁ、はぁ、はぁ……。はは、私も、ルパちゃんとの戦い、凄く楽しいよ!」
両者は草むらに倒れ込み、息を整えていた。
僕は草原で剣を振り、体を少しでもなまらせないように磨き続ける。
「ニクス先輩の剣……、久しぶりに見たけど……凄すぎて追いつける気がしない……」
「私も、まだ勝てる気がしない。ニクスには一回も勝てないの……」
「私も一回も勝った覚えないよ。あ、と言うか聞きたかったんだけど、ニクス先輩の頭に乗っている赤い物体は何なの?」
「あれはプルスって言って赤いヒヨコ。ニクスの初めての友達なんだって」
「ヒヨコが友達……。学校にいたころ、先輩に友達いなかったんだ……。じゃあ、私も友達と思われていなかったと……」
「ニクスは色々とおかしい所があるから、何かほかの考えがあったのかも。勝ったら教えてくれるかも。あ、そうだ。リリルさん、今から二人がかりでニクスを一緒に倒しましょう。ニクスが負けるところが見たい!」
「いいね。私も見たい。じゃあ、一斉に飛びかかろう」
「はい!」
――二人共、声が大きすぎて聞こえているよ……。
僕が剣を振っていと後方から、二人が走ってくる音が聞こえる。
さて、どうやって止めようか。剣を奪うか、ひっくり返してしまおうか。どの方法が一番カッコいいかな。
僕は後ろを振り返り、二人を見ると武器を持っておらず体当たりしてくるだけだった。
僕はあっけにとられ、地面に背中をつける。
「もう、いったいどうしたの。僕を倒すんじゃなかったの?」
「ニクスが背中をついたから倒れたのといっしょでしょ。ちょっとしたお遊び~」
「ニクス先輩が背中をついているところは初めて見るかもしれませんね。はぁ~、ニクス先輩の汗のにおい、懐かしい……」
「ちょ、リリル。恥ずかしいからあんまり嗅がないでよ。焼肉の煙臭いと思うし、王家のリリルがこんなことしてると知られたら、僕の方が危ないよ」
「す、すみません。でも……、ずっとこうしたかったので、もう少しだけこのままでいさせてください」
リリルは顔を僕の胸に当て、少し埋める。
僕が頭をよしよしと撫でていたら、リリルはいつの間にか寝落ちしてしまった。近くにリリルを見張っている騎士がいないかと思い、探してみるが誰もいない。
――弱ったなぁ……。
リリルと同様にルパまでも眠ってしまい、二人をどうやって移動させればいいんだと迷う。
僕はルパを背負い、リリルをお姫様抱っこして運ぶ。革袋は紐を手に巻き付けてギリギリ持っていた。大剣はルパに背負わせ、僕一人で宿まで一気に運んだ。
リリルの付けていた鎧を外し、ベッドに寝かせる。
ルパも同じように寝かせる。
鎧が闘いによって汚れていたので、剣と同様に綺麗にしておこうと思った。少しでも綺麗な方が付けていて気持ちがいいはずだ。
僕は革袋から砥粉と油、布、ブラシを取り出し、表面に付いた粗いゴミをブラシで綺麗にしてから、砥粉をまぶして布で拭き取る。すると、小さなゴミも綺麗に取り除かれ、見た目が良くなった。あとは他の汚れが付きにくいように油を着けて満遍なく伸ばすだけだ。
リリルは剣を構えながら言う。
「わかりました! ふぅ……、じゃあ、行きます!」
ルパは地面が抉れるほどの力で一歩目を踏み込み、一瞬でリリルの攻撃範囲に入り、超低姿勢から短剣を突き出して攻撃した。
「えっ、はやっ! くっ!」
リリルは剣をルパの持っている短剣に沿わせ、攻撃の軌道を流し、ルパの開いた脇腹に蹴り込もうとする。
「ふっ! そいやっ!」
ルパは空中で頭の位置を上下反転し、リリルの蹴りを回避する。そのまま、空中で姿勢を保ちながらリリルの左肩に目掛けてしなやかなばねを使った右脚で蹴り飛ばした。
ルパの蹴りは強く、鎧を着た大柄なリリルを蹴り飛ばす。
「うわっつ!」
リリルは右手を地面につけ、頭から落下するのを防ぐ。そのまま、後方に跳ね、体勢を立て直した。だが、驚きの表情が隠し切れず、僕の方をチラチラ見てくる。
「リリル、油断していると危ないよ。昔、教えたでしょ」
「え……。うわっつ!」
リリルは余所見をしていたせいで、急接近しているルパに気づけず、脚を跳ねられ転ばされる。
「はいっ!」
ルパはリリルの脚を跳ね上げて転ばせたあと、短剣を顔の目の前に突き出し、一本勝ちした。
「ま、まいりました……」
リリルはポケ~っとした顔で、何が起こっているのかわからないと言った表情をしている。
「リリル、初めて戦う相手に油断なんてしたら駄目じゃないか。チラチラと僕の方を見ても何も戦いの糸口になるような情報はないよ」
「す、すみません……。ルパちゃんの動きに圧倒されてしまいました。まさか双剣と獣族の動きがここまで相性がいいなんて……。私はまだまだですね」
リリルはペタンコ座りをしながら、うなだれる。
「違うよ、リリル。今は負けたかもしれないけど、本当の戦いじゃないから負けじゃない。死ななければ勝ちだから、実質リリルも勝っているんだ。さ、まだまだなのは練習量だよ。力量じゃない」
「は、はい! あと、ルパちゃんの動き、凄くよかったよ。初めは何とか対処できたけど、二回目は出来なかった。一回居場所を見失うと、速度についていけない。今日戦ったミートさんと似てるけど似てない感じがする。ミートさんは私の苦手な部分を的確に突いてくる感じがした。ルパちゃんも相手が嫌がる攻撃をたくさん繰り出せばもっと勝率が上がるんじゃないかな」
「な、なるほど……。ありがとうございます。やってみます!」
ルパは頭を深々と下げ、感謝の言葉を口にした。
「よし! 今日は夜遅くまで付き合うよ。明日は王都に帰るだけだから疲れないし」
リリルは立ち上がり、鎧に着いた砂埃を払って意気込む。
「よろしくお願いします!」
リリルとルパは午後八時から午後一〇時くらいまで鍛錬をして、互いにいい刺激を受けながら戦っていた。
勝率はリリルの方が高く、ルパは新しい作戦を考えるにあたり負けている印象があった。色々模索しているらしい。僕を倒すために研究をするなんて、ルパは努力家だなぁ……。
「はぁ、はぁ、はぁ……。つ、疲れた……。リリルさんとの戦い、楽しい~!」
「はぁ、はぁ、はぁ……。はは、私も、ルパちゃんとの戦い、凄く楽しいよ!」
両者は草むらに倒れ込み、息を整えていた。
僕は草原で剣を振り、体を少しでもなまらせないように磨き続ける。
「ニクス先輩の剣……、久しぶりに見たけど……凄すぎて追いつける気がしない……」
「私も、まだ勝てる気がしない。ニクスには一回も勝てないの……」
「私も一回も勝った覚えないよ。あ、と言うか聞きたかったんだけど、ニクス先輩の頭に乗っている赤い物体は何なの?」
「あれはプルスって言って赤いヒヨコ。ニクスの初めての友達なんだって」
「ヒヨコが友達……。学校にいたころ、先輩に友達いなかったんだ……。じゃあ、私も友達と思われていなかったと……」
「ニクスは色々とおかしい所があるから、何かほかの考えがあったのかも。勝ったら教えてくれるかも。あ、そうだ。リリルさん、今から二人がかりでニクスを一緒に倒しましょう。ニクスが負けるところが見たい!」
「いいね。私も見たい。じゃあ、一斉に飛びかかろう」
「はい!」
――二人共、声が大きすぎて聞こえているよ……。
僕が剣を振っていと後方から、二人が走ってくる音が聞こえる。
さて、どうやって止めようか。剣を奪うか、ひっくり返してしまおうか。どの方法が一番カッコいいかな。
僕は後ろを振り返り、二人を見ると武器を持っておらず体当たりしてくるだけだった。
僕はあっけにとられ、地面に背中をつける。
「もう、いったいどうしたの。僕を倒すんじゃなかったの?」
「ニクスが背中をついたから倒れたのといっしょでしょ。ちょっとしたお遊び~」
「ニクス先輩が背中をついているところは初めて見るかもしれませんね。はぁ~、ニクス先輩の汗のにおい、懐かしい……」
「ちょ、リリル。恥ずかしいからあんまり嗅がないでよ。焼肉の煙臭いと思うし、王家のリリルがこんなことしてると知られたら、僕の方が危ないよ」
「す、すみません。でも……、ずっとこうしたかったので、もう少しだけこのままでいさせてください」
リリルは顔を僕の胸に当て、少し埋める。
僕が頭をよしよしと撫でていたら、リリルはいつの間にか寝落ちしてしまった。近くにリリルを見張っている騎士がいないかと思い、探してみるが誰もいない。
――弱ったなぁ……。
リリルと同様にルパまでも眠ってしまい、二人をどうやって移動させればいいんだと迷う。
僕はルパを背負い、リリルをお姫様抱っこして運ぶ。革袋は紐を手に巻き付けてギリギリ持っていた。大剣はルパに背負わせ、僕一人で宿まで一気に運んだ。
リリルの付けていた鎧を外し、ベッドに寝かせる。
ルパも同じように寝かせる。
鎧が闘いによって汚れていたので、剣と同様に綺麗にしておこうと思った。少しでも綺麗な方が付けていて気持ちがいいはずだ。
僕は革袋から砥粉と油、布、ブラシを取り出し、表面に付いた粗いゴミをブラシで綺麗にしてから、砥粉をまぶして布で拭き取る。すると、小さなゴミも綺麗に取り除かれ、見た目が良くなった。あとは他の汚れが付きにくいように油を着けて満遍なく伸ばすだけだ。
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