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新年になり、心が入れ替わる。暖かくなったら、旅に行こう。
銀羽
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僕がディアさんのお尻をチラ見したらルパに蹴られた。加えて罵るような眼で見てくる。
僕とディアさんの戦いは終わり、ルパと合わせて三人で街の人の救助に当たった。スグルさんは副団長の機嫌を取りに戻ったようだ。
人々の救出を行っているとあっという間に半日が過ぎた。飛行船が到着し、かんかんの副団長は我先に乗り込んでいく。他の近衛騎士達も乗り込んでいった。
「じゃあな、ニクス。クワルツさんにお前の無事を伝えておくぜ。確認しておくが、王城で剣術と勉学の指南を行っているクワルツさんって、お前の兄さんだよな?」
「は、はい。クワルツ兄さんは僕の実の兄です」
「だよな。まあ、俺は責務で王室に顔を結構出すんでな。王城によく行くんだ。その時にでも伝えておく。元気でな。たまにはクワルツさんに手紙でも送ってやれ。弟がいないと寂しいと言っていたからな」
「スグルさんもお元気で。暇になったらクワルツ兄さんに手紙を書こうと思います」
「あー、そのなんだ……。無駄に敬語じゃなくてもいいぜ。同期なんだ。階級が違っても気にするな」
「いやいや、特級と初級では全然違いますよ。例え同期でも敬語はやめられません」
「はぁ、そこのところは頭が固いな。ディアなんて同期なら位なんて関係なく、敬語は使ってこないぞ」
「まぁ、僕の性分みたいなところなので、別に嫌っている訳じゃないですから、気にしないでください」
「そうか。ならいい。じゃあ、俺ももう行く」
「はい、またどこかで会いましょう」
スグルさんは飛行船に乗り込んでいった。すると飛行船が浮上し、ルークス王国のある南東へと出発していった。
「スゴィ……、空飛んでる……」
ルパは飛行船を見て驚いていたが、ルパも僕と一緒に空を飛んでいるのだから、特段珍しい訳じゃないと思う。ただ、飛行船があまりに大きかったから、驚いているようだ。
「ルパちゃん、鍛錬を続ければニクス君には勝てる。そう信じて鍛錬し続けるんだ。鍛錬無くしてニクス君に勝てない。さっきの戦いだって武器の差でしかなかった。ニクス君が最高峰の名工が打った剣を持っていれば私は負けていただろう。って! 私がニクス君の剣を破壊してしまったんだった! 弁償しなければ!」
ディアさんは体中をペタペタと触り、何かを探している。
「ディア、お前の財布は作戦場所から持って来ていないぞ」
魔力が元に戻り、通常の大きさになったペガサスさんがディアさんに喋りかける。
「な、なに! そうか。急いでいたから持って来ていなかったか」
「ディアさん、気にしないでください。一本銀貨一枚の品なので痛手じゃありません」
「は? ぎ、銀貨一枚? 金貨一枚でもおかしいが、虹硬貨一枚とかじゃないのか?」
「そんな高価な剣を使えるほど余裕がありません。あと、そんな高価な武器を買う勇気もありません。さっき砕かれた剣は呪い付きだった品を安く買って浄化し、使えるようにしただけなので、全然気にしないでください」
「そ、そう言われてもな……。私の槍は虹硬貨五枚の武器だ。なのにほぼ互角に戦っていたのか……。銀貨一枚の剣で……」
ディアさんの笑みが止まらず、僕の手を掴んできた。
「また! 是非とも試合をしよう! 私を楽しませてくれる相手はもう、ニクス君しかないのだ!」
「さ、流石に言い過ぎですよ。この世界に僕以上に強い人なんていっぱいいます。ディアさんは視野が狭いだけです。もっと広げれば更なる強敵が待ち受けています。もしかしたらいきなり戦いを挑まれるかもしれません。その時は迷わず倒してください」
「もちろん、戦いを挑まれたら手加減などせずに戦うさ。だが、ニクス君以上にワクワクできるだろうか……。そのような強敵がいるのなら、是非とも戦ってみたい! はぁ~、誰か私を楽しませてくれる相手は出てきてくれるのだろうか……」
ディアさんは屈指の戦闘狂だ。彼女を見て倒しにかかろうとする神獣がいるだろうか。
僕は神獣と殺し合いと言う言葉を使わずに、今ディアさんが置かれている現状をやんわり伝えた。ペガサスさんが伝えにくいと言っていたので、僕が伝えておいたのだ。
僕がペガサスさんに視線を向けると、ちっと舌打ちをされ、翼をハムハムと弄り、銀羽を咥えて僕の方に押し付けて来た。
「おぉ~! ペガも気に入ったのか! さすがニクス君。ペガに認められるなんて初めての快挙だぞ!」
ディアさんはまたもや大きな声を出して驚いていた。
僕はペガサスさんから銀羽を貰う。とても綺麗に輝いており、柔らかい。使い道がわからないが、とりあえず貰っておこう。
「ありがとう、ペガサスさん。大切に保管しておきますね」
ペガサスさんは一言もしゃべらず、僕から離れた。嫌われているのだろうか。
「では、ニクス君。私は作戦地に戻る。王都に戻ったらまた手紙を書いてもいいだろうか……」
ディアさんは指先を突き合いながら聞いてきた。
「はい、構いませんよ。ルパも文字を覚えるいい機会ですし、こっちからも手紙を送ります」
「ああ! そうしてくれ! 楽しみに待っているぞ!」
ディアさんは僕に抱き着き、ルパにも抱き着いた。汗だくなのに芳醇な匂いがして心をぐっと捕まれる。
「では、さらばだ!」
ディアさんはペガサスさんの背中に飛び乗り、手綱を引く。ペガサスさんが前足を大きく上げ、勢いをつけて走り出した。翼を広げ、一度羽ばたくと浮かび上がり、あっという間に遥か上空に移動していく。
「はぁ……。やっと行きましたね。主、そんな羽、捨ててやったらいいですよ」
「どうして? せっかくペガサスさんから貰ったのに、捨てるなんて悪いよ」
「その銀羽はペガサスの一部です。なので、どんなに距離があっても居場所が気づかれます。魔力を流せば強靭な刃となり、様々なものを切断可能です」
「へぇ……」
僕は三〇センチメートルほどの銀羽に魔力を込めた。すると、ふわふわだった羽が鉄かと思うほど硬くなり、鋭利になる。近くにあった硬そうな石に切りつけてみるとあまりにも容易に切り裂けた。怖いくらいだ。
僕とディアさんの戦いは終わり、ルパと合わせて三人で街の人の救助に当たった。スグルさんは副団長の機嫌を取りに戻ったようだ。
人々の救出を行っているとあっという間に半日が過ぎた。飛行船が到着し、かんかんの副団長は我先に乗り込んでいく。他の近衛騎士達も乗り込んでいった。
「じゃあな、ニクス。クワルツさんにお前の無事を伝えておくぜ。確認しておくが、王城で剣術と勉学の指南を行っているクワルツさんって、お前の兄さんだよな?」
「は、はい。クワルツ兄さんは僕の実の兄です」
「だよな。まあ、俺は責務で王室に顔を結構出すんでな。王城によく行くんだ。その時にでも伝えておく。元気でな。たまにはクワルツさんに手紙でも送ってやれ。弟がいないと寂しいと言っていたからな」
「スグルさんもお元気で。暇になったらクワルツ兄さんに手紙を書こうと思います」
「あー、そのなんだ……。無駄に敬語じゃなくてもいいぜ。同期なんだ。階級が違っても気にするな」
「いやいや、特級と初級では全然違いますよ。例え同期でも敬語はやめられません」
「はぁ、そこのところは頭が固いな。ディアなんて同期なら位なんて関係なく、敬語は使ってこないぞ」
「まぁ、僕の性分みたいなところなので、別に嫌っている訳じゃないですから、気にしないでください」
「そうか。ならいい。じゃあ、俺ももう行く」
「はい、またどこかで会いましょう」
スグルさんは飛行船に乗り込んでいった。すると飛行船が浮上し、ルークス王国のある南東へと出発していった。
「スゴィ……、空飛んでる……」
ルパは飛行船を見て驚いていたが、ルパも僕と一緒に空を飛んでいるのだから、特段珍しい訳じゃないと思う。ただ、飛行船があまりに大きかったから、驚いているようだ。
「ルパちゃん、鍛錬を続ければニクス君には勝てる。そう信じて鍛錬し続けるんだ。鍛錬無くしてニクス君に勝てない。さっきの戦いだって武器の差でしかなかった。ニクス君が最高峰の名工が打った剣を持っていれば私は負けていただろう。って! 私がニクス君の剣を破壊してしまったんだった! 弁償しなければ!」
ディアさんは体中をペタペタと触り、何かを探している。
「ディア、お前の財布は作戦場所から持って来ていないぞ」
魔力が元に戻り、通常の大きさになったペガサスさんがディアさんに喋りかける。
「な、なに! そうか。急いでいたから持って来ていなかったか」
「ディアさん、気にしないでください。一本銀貨一枚の品なので痛手じゃありません」
「は? ぎ、銀貨一枚? 金貨一枚でもおかしいが、虹硬貨一枚とかじゃないのか?」
「そんな高価な剣を使えるほど余裕がありません。あと、そんな高価な武器を買う勇気もありません。さっき砕かれた剣は呪い付きだった品を安く買って浄化し、使えるようにしただけなので、全然気にしないでください」
「そ、そう言われてもな……。私の槍は虹硬貨五枚の武器だ。なのにほぼ互角に戦っていたのか……。銀貨一枚の剣で……」
ディアさんの笑みが止まらず、僕の手を掴んできた。
「また! 是非とも試合をしよう! 私を楽しませてくれる相手はもう、ニクス君しかないのだ!」
「さ、流石に言い過ぎですよ。この世界に僕以上に強い人なんていっぱいいます。ディアさんは視野が狭いだけです。もっと広げれば更なる強敵が待ち受けています。もしかしたらいきなり戦いを挑まれるかもしれません。その時は迷わず倒してください」
「もちろん、戦いを挑まれたら手加減などせずに戦うさ。だが、ニクス君以上にワクワクできるだろうか……。そのような強敵がいるのなら、是非とも戦ってみたい! はぁ~、誰か私を楽しませてくれる相手は出てきてくれるのだろうか……」
ディアさんは屈指の戦闘狂だ。彼女を見て倒しにかかろうとする神獣がいるだろうか。
僕は神獣と殺し合いと言う言葉を使わずに、今ディアさんが置かれている現状をやんわり伝えた。ペガサスさんが伝えにくいと言っていたので、僕が伝えておいたのだ。
僕がペガサスさんに視線を向けると、ちっと舌打ちをされ、翼をハムハムと弄り、銀羽を咥えて僕の方に押し付けて来た。
「おぉ~! ペガも気に入ったのか! さすがニクス君。ペガに認められるなんて初めての快挙だぞ!」
ディアさんはまたもや大きな声を出して驚いていた。
僕はペガサスさんから銀羽を貰う。とても綺麗に輝いており、柔らかい。使い道がわからないが、とりあえず貰っておこう。
「ありがとう、ペガサスさん。大切に保管しておきますね」
ペガサスさんは一言もしゃべらず、僕から離れた。嫌われているのだろうか。
「では、ニクス君。私は作戦地に戻る。王都に戻ったらまた手紙を書いてもいいだろうか……」
ディアさんは指先を突き合いながら聞いてきた。
「はい、構いませんよ。ルパも文字を覚えるいい機会ですし、こっちからも手紙を送ります」
「ああ! そうしてくれ! 楽しみに待っているぞ!」
ディアさんは僕に抱き着き、ルパにも抱き着いた。汗だくなのに芳醇な匂いがして心をぐっと捕まれる。
「では、さらばだ!」
ディアさんはペガサスさんの背中に飛び乗り、手綱を引く。ペガサスさんが前足を大きく上げ、勢いをつけて走り出した。翼を広げ、一度羽ばたくと浮かび上がり、あっという間に遥か上空に移動していく。
「はぁ……。やっと行きましたね。主、そんな羽、捨ててやったらいいですよ」
「どうして? せっかくペガサスさんから貰ったのに、捨てるなんて悪いよ」
「その銀羽はペガサスの一部です。なので、どんなに距離があっても居場所が気づかれます。魔力を流せば強靭な刃となり、様々なものを切断可能です」
「へぇ……」
僕は三〇センチメートルほどの銀羽に魔力を込めた。すると、ふわふわだった羽が鉄かと思うほど硬くなり、鋭利になる。近くにあった硬そうな石に切りつけてみるとあまりにも容易に切り裂けた。怖いくらいだ。
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