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レイの記憶①

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 少女は、中学に入学したころのことを思い出していた。

 「レイ」というのは実際には漢字表記だが、本名である。それらしく思われないようにカタカナ表記にしたのである。

 小学3年生の頃からふくらみ始めた胸は、クラスメイトの格好の標的になった。男子はもちろん、女子も着替える時にあからさまに見ている。3年生の終わりころには乳首が下着から透けて見えるようになっていた。

 4年生の時には母の勧めでブラジャーをするようになったが、それがさらに注目を集める原因になった。健康診断の時、担任の女性教師は子供体形の他の女子と同じようにブラを外し、上半身裸になって保健室に行くように命じた。手で必死に隠していると、

 「みんな同じ体をしているんだ。何を恥ずかしがることがある」

 と、それすら許さなかった。あれは自分に対する妬みだったのだろうと思う。担任はごく普通というより、貧乳に近い体つきだったから。

 5年生になって担任は30過ぎの男性教師になった。明らかに自分を女として見ている。気持ちが悪くて仕方がなかった。苦痛に耐えながら学校に通った。胸はますます大きくなり、クラスメイトのいたずらなども増えていった。このまま自分のことを知っている子達と一緒に地元の中学に行く気がしなくなった。

 林間学校や修学旅行で入浴するときは体にバスタオルを巻き付けて、他の子に絶対に見せなかった。見せたら今まで以上にからかわれるに決まっている。そんなことされるくらいなら死んだほうがましだとさえ思った。部屋にユニットバスがあるときには必ずそちらを使った。パジャマに着替えるときは布団を頭から被って着替えた。

 もう周りに男子がいるのもこりごりだったので、両親に私立の女子校に行かせてもらえるよう頼み、必死で勉強した。そして合格、入学した。同じ小学校から行く子はおらず、小学生時代の嫌なことを知っている人はもういない。

 周りにいるのは女子だけ。先生も男性はいない。男の視線がないだけで、ここまでほっとするものかと思った。
体育の授業などで着替えるとき、ここでもやはり注目を集めたけど、もう気にはならなくなった。むしろ自分がアイドルになったようで気分が良かった。

 女子ばかりなので、こんなことを言ってくる子も出てくる。

 「ねえ、胸触らせて」

 男女共学だったら

 「なんてこと言うの」

 と嫌がったに違いないが、むしろ

 「そんなに羨ましい?だったら触らせてあげる」

 という気分になっていた。

 近くの席の子が触るようになると、聞きつけたクラス中の子が触りに来るようになった。さらには隣のクラスの子まで。

 まるで風俗嬢だけど、少しも嫌ではない。

 触った子は

 「柔らかーい」

 「大きい」

 「羨ましい」

 といった言葉を掛けてくれる。

 そのうち、ブラの上からではなく、

 「中味を見せて」

 という子まで現れた。

 「校外授業の時になったらね」

 と答えておいた。恥ずかしいわけではないけど、何でもすぐ応じていたのではつまらない。

 「校外授業」というのは新入生は初めて顔を合わす子ばかりなので、親交を深めるため学校に慣れたゴールデンウィーク明けに二泊三日で設定されている。泊りがけの遠足のようなもの。

 グループ分けの時レイと同じグループになりたがる子が殺到した。不公平にならないようにじゃんけん大会までやったが、負けた子は名残惜しそうに言った。

 「部屋に行ってもいいよね」

 親交を深めるためなので、自由時間以降は特に他の部屋に行くことは制限されていない。

 宿ではグループごとに部屋割りがあり、時間をずらして大浴場で入浴するが、女子生徒ばかりなので犯罪を防ぐために貸し切りになり、男風呂も解放されていた。二部屋ずつ入浴することになっていたが、女風呂、男風呂のどちらに入るかは個人の自由。

 入浴時間になると、同じ時間に入浴する子がレイの後にぞろぞろと付いてくる。いったん入ってしまうと行き来ができないので、同じ方に入ろうという考え。

 レイが男風呂の脱衣所を選ぶと、女風呂は偶然同時刻に入浴する教師しか向かわなくなった。教師は生徒の入浴時間帯に関係なく交代で二人ずつ入ることになっているが、ガラガラの女風呂に訳が分からず戸惑っている。

 レイが脱ぎだすと、周りの子は一斉に手を止める。全員がレイに注目している。

 下着姿になると、

 「おおっ」

 というため息ともつかない声が漏れた。

 レイは注目されていることは承知のうえで、

 「何を気にしているの?」

 というかのように脱いでいった。

 再びため息が漏れる。ヒロインになった気分で実に気持ちがいい。

 レイが浴室に向かう。もちろん前や胸を隠したりはしない。

 呆気に取られていたクラスメイト達は我に返って脱ぎだした。そして追いかける。レイのからだを見たくてたまらない。

 レイが体を洗っていると、たちまち周りを囲まれた。沈黙がしばらく続いた後、一人が口を開く。

 「背中、流してあげる」

 まるでハーレム状態だ。

 背中を流してもらうとき、その子の乳首がさーっと当たる。

 「なんだか、感じる」

 これが「目覚め」だったのかもしれない。

 「ずるい」「私も」

 他の子も次々とレイの背中を流しに来る。

 体を洗い終わったレイが浴槽に入ると、他の子もぞろぞろと入ってくる。いくら浴槽が広いと言ってもさすがに「サルの温泉」状態。

 改めて周りの子を見てみる。

 中学生になったばかりであるから、成長は個人差がある。レイのように胸が膨らんでいる子、膨らみつつある子、真っ平らな子もいる。

 膨らんでいる子の中でもレイはやはり突出していて、みんな見たがるのは当然かな、と思う。

 そろそろ交代時間だ。浴室から出て、持参してきた替えの下着と浴衣を身につける。やはり、周りの子が手を止めて自分に注目している。人気グラドルになった気分。

 部屋に戻るとき、入浴に向かう子がレイを見つけて一斉に振り向く。すでに学年中の有名人になっていた。

 すべての部屋の入浴が終わると、次は夕食。

 食事をしながら、別の部屋の子に言われた。

 「自由時間、楽しみにしてるからね」









 
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