怪力悪役令嬢は冒険者になりたい!

タハノア

文字の大きさ
30 / 159
破滅回避工作編

030-アリッサの決意

しおりを挟む
 私は見慣れた寮の自室で目を覚ましました。あのまま寝てしまったのか……ベッドに横になったまま昨日の出来事をゆっくりと思い出す。

 追放処分……マルレが回避するのではなくそれを望んでいる……。もし運命が彼女にそう思わせているのであれば多分回避は不可能なのだろう。ならば回避するべきは裁判の後に彼女が殺されることだろう。

 そもそも彼女はなぜ殺害されたのだろう? 確か判決は、婚約破棄と追放処分で死刑ではなかったはずだ。そもそも死刑なら正当な手順に沿って行われるはず……。

 つまりゲーム内で死亡したのは事故か暗殺? あのスチルの出血量から刃物による傷と見て間違いないだろう。すると暗殺か?

 しかし、暗殺なら裁判所なんて警備が厳重な所で行うより、追放処分後にすれば良いことだ。つまりは事故ということになる? 裁判所で罪人が死亡するケースは……。

 逃走を図った?

 しかし、一人を捕縛するのは簡単なはず……。そうなると協力者がいて捕縛は難しいと考えた場合かな? 逃走されるぐらいならと衛兵が殺した可能性が高いか?

 マルレの逃走を手助けする人たち……[トレイル]だろうか? いや3人で国をつぶせる彼らが協力すればやすやすと逃走できるはず。

 すると誰か? 私はマルレに味方しそうな人たちを思い浮かべてみた。王都の住民たち……。マルレが彼らの手助けをしているのはよく見ている。もしかしたら冤罪えんざいだと知ってる住民が押し寄せたのだろうか? それなら説明が付くかもしれない。

 衛兵はむやみに住人を傷つけられない。しかし、マルレを逃がすわけに行かない……。それならばいっそ……ということなのかもしれない。とにかく裁判の場に刃物を持ち込めるのは、衛兵が最有力だ。この推論を軸にマルレが死ぬことを避ける手立てを考えよう。

 運命によって起こされるであろうことは、冤罪えんざいでの婚約破棄と追放処分。そして、マルレの死すなわち滅亡……。マルレの死後[トレイル]を止めるのは不可能だろう。冤罪えんざいもマルレが望んでいることだ。きっと虚偽の自白をして普通に冤罪えんざいを晴らすより、難しく不可能だろう。唯一誰も望んでいないのはきっとマルレが死ぬというところだけだろう。

 マルレの死その一点だけを全力で回避する。そうすれば、全てまるく収まるような気がする。

 やることが決まった私は、決意する。

 目的は裁判で冤罪えんざい追放処分をされた後マルレを無事に逃がすことだ。

 ベッドから体を起こすと、心配そうな表情をしたマルレがこちらを見ていた。

「昨日はおかしなことを言ってしまって、ごめんなさい」

 その言葉から私は、マルレが一人でも冤罪えんざい追放をやり切ると感じ取った。

「大丈夫! 全力で協力する!」

 絶対にあなたを死なせない!

「そうですの? 助かりますわ! 事情を知っているアリッサにしか頼めませんもの。良かったわ!」
「マルレは心配しないで! すべて私がかたをつける!」
「え? そこまでしていただかなくても……」
「いえ! マルレは下手に動かないで! 絶対に私がどうにかするから!」

 きっと運命に逆らえるのは、転生者である私だけ! それならばマルレには何もしてもらわないほうが良いはずだ。

「そっそうですか、ではよろしくおねがいします」
「うん! 任せて! 卒業式までに準備を終わらせとく!」

 猶予は約1年! 工作に根回し、そして、マルレが斬られても治療できるような最高の回復魔法! そうだ! 衛兵なら騎士団管轄だからラーバルにも協力を頼む必要があるわ!

「マルレ、ラーバルにも協力してもらおうと思うけど、いいかな?」
「ええ! もちろんですわ! 私の夢を知っているのは、二人だけですし心強いですわ!」
「わかった! じゃ、ラーバルには私から話しておくから任せておいてね!」

 ん? ちょっと表情が暗くなった? でもここは我慢してもらわないと困る!

「わかりました。私にもなにかできることがあったら、教えてくださいね」
「もちろんよ」

 やはり自分でも、なにかしたかったみたいだね。けれども任せてもらうしかないわ……。さっそくラーバルに協力を求めたほうが良さそうね。

「マルレ! すぐにラーバルと話してくるわ」
「え? 何もそんなに急がなくても!」
「いえ時間が足りないぐらいだわ! 経過報告は、きっちりするからマルレは、どっしり構えててね!」

 そう言い残すと、ラーバルがいるはずの騎士団訓練場へと急いだ。

 学園の隣りにある騎士訓練場に付くと、入り口の騎士にラーバルの所在を確かめる。今日は休みで寮の自室いるとのことでした。部屋番号を聞いて寮へと向かう。

 寮の玄関にある案内図で部屋の位置を調べて、寮の中を進む。春休暇中はほとんどの生徒が家に帰っているので、人通りはなくとても静かだ。目的の部屋に着き扉をノックする。

「アリッサです。ラーバルはいますか?」
「どうぞお入りください」

 この国のため……というよりもマルレのために覚悟を決め部屋へと入る。

しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

【完結】番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

悪役令息の継母に転生したからには、息子を悪役になんてさせません!

水都(みなと)
ファンタジー
伯爵夫人であるロゼッタ・シルヴァリーは夫の死後、ここが前世で読んでいたラノベの世界だと気づく。 ロゼッタはラノベで悪役令息だったリゼルの継母だ。金と地位が目当てで結婚したロゼッタは、夫の連れ子であるリゼルに無関心だった。 しかし、前世ではリゼルは推しキャラ。リゼルが断罪されると思い出したロゼッタは、リゼルが悪役令息にならないよう母として奮闘していく。 ★ファンタジー小説大賞エントリー中です。 ※完結しました!

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

処理中です...