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勇者物語に首を突っ込む編

046-はじめての遠征

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 冒険者生活をはじめて3週間この生活にもすっかり慣れて、宿屋うさぎ亭は第二の故郷になりました。狩りを主体に稼ぎときには気晴らしに船の荷降ろしの仕事をしたりしていました。お金に余裕も出てきたのでそろそろ遠くへ行ってみようかと思い装備を整えるために王都の商店をめぐりました。私のお目当ては2つ!1つ目は物がいくらでも入る次元リュックだ。

 次元リュックは空間がねじ曲げられていて、中のスペースが倉庫2軒分ぐらいあるすぐれものだ。使用してる魔石は闇属性でこれが便利でちょっと怖いんです。便利な部分は魔力補充しやすいこと怖い部分は補充に魂を使用することだ。目には見えないんだけど魔物を狩れば自動的に吸い取るらしい。

 便利なアイテムだけど欠点がある。それは重さが一切軽減されないので入れた分だけ重くなるのです。船や馬車だと積載量が決まっているし荷積みのバランスもあるので使用できず徒歩で持つには重すぎる。

 それに最新式の次元ポーチは荷馬車ぐらいしかスペースがない代わりに重さ半減機能があり人気が高いです。そして次元リュックは使いづらく需要もなくなり売れ残っていて在庫処分セール中でした。そう一般的には!ですが私には関係ありません倉庫2軒分なら多分持てます!

 そしてもう一つのお目当てはもちろん剣です!以前折ってしまったロングソードより幅が広くて頑丈そうなバスタードソードを買いました!フフフこれでまた私は剣士に戻りましたわ!

 買い物が終わってみると貯金が綺麗サッパリなくなりました。でも大丈夫ですわ!いままで森を往復してたので近場でしか狩れませんでしたがこれで遠くに行っても平気です!

 背中には黒い魔石の付いた茶色い角ばった次元リュックを背負いバスタードソードをソードベルトに固定して準備完了!

 王都の入口にたちギルドカードに地図を表示させて行き先を決める。

 私が今いるのはナウエルス大陸の北東部の半島にあるレイグランド王国の王都スハイシュです。王都は半島の端にあり東と南を海に囲まれた港湾都市で人の往来が多い都市です。西に広がる深い森は魔の領域とよばれ多くの魔物が住んでいる危険地帯です。

 表示範囲を適当に拡大しいろいろ見ていると王都からかなり離れた魔の領域付近の森の中にポッカリ丸く木が生えていないところがありました。どうなってるんだろう?面白そうね、ここに行ってみましょう。この距離なら野営せずに行ける距離だ。普通は一日ではいけない距離だけど移動にも怪力を活かすことで長距離を移動できる。

 顔なじみになった衛兵さんに「いってきます!」と挨拶して王都を出る。

 楽な長距離移動方法それは空を飛ぶことです!とはいっても浮くわけではないんですが……

 地面が崩れないように力を調節して走り勢いがついたらジャンプ!

 幅跳び感覚で空を飛ぶ!風を切る感覚に後ろへ流れる景色この移動は爽快感がある。おっとそろそろ着地ね。私は着地地点の状況に構わず木に突っ込みなぎ倒すと地面に降りてまた助走をつけて飛ぶ。

 私流の[飛んでいく]を何度かして地図にあった森の中で木の生えていない円状のスペース付近に到着した。たしかこの先ね!ここからは歩いて行きます。鬱蒼とした森を暫く歩くと前方が明るくなり目標地点に到着する。

 そこには見上げるほど大きな魔物がいた。頭が牛で筋肉隆々の体で手には大きな斧が握られている。多分これはミノタウロスとかいう魔物だよね?

 すでに武器を構えてこちらを見ている……完全に見つかってますねどうやら戦うしか無いようです。はじめての魔物らしい魔物で少し緊張しますね。覚悟を決めて新品のバスタードソードを鞘から抜き構える。

 戦いの火蓋は切られた。牛男は大きな体を揺らしながら突進してくるマルレも臆せず距離を詰める。

 斧と剣が激しくぶつかり合い火花を散らす。人が持つには大きすぎる斧の一撃をマルレは剣一本で軽くいなす。一般の剣士であればその豪腕に武器を吹き飛ばされるところだがマルレの強靭な握力はそれを許さない。再び武器がぶつかる振り下ろされた斧を剣をしたからの振り上げで迎え撃つ!愚策にも思えるがマルレは軽々と斧を打ち上げ牛男の懐に潜り込み胴を斬りつける。

「グオォオオオアア」
「効いてはいるようだがどうも手応えがないわね……浅かったかしら?」

 思わず引いた牛男は傷を触り深さを確かめると浅いと判断しまた斧を振るう。回避せずすべての攻撃を剣で受け止めてスキあらば切りつけてくるマルレに牛男は焦りの色を見せはじめる。しかし牛男の分厚い筋肉はバスタードソードの侵入を防ぎ決定的なダメージを間逃れている。

「なかなかタフじゃない!いいわ全力で行ってあげる!」

 火花をちらす斧と剣……ついに均衡が崩れる。マルレがスキを突き膝に深い傷を与えた。自重を支えられなくなった牛男は思わず膝を付く……これは大きすぎるスキだ。マルレが見逃すはずもなく容赦なく首を狙う!

 バスタードソードは首の表面の筋肉を超え動脈をも切り裂きついには頚椎に到達し牛男の骨とバスタードソードの先端がぶつかる。何度も巨大な斧とぶつかり傷ついたバスタードソードは牛男の体重とマルレの力に耐えられず限界を迎えた。

 手応えが急に軽くなった……すぐに剣を手放す……前にも味わったこの感覚……首から血を吹き出しながら倒れる牛男。

 勝った!確かに勝った!しかし首からバスタードソードを抜くのをためらう……あの感触……

 私は恐る恐る牛男の首から剣を引き抜く……やはり中腹で剣は折れ先は首の中だ……

「また折れたあああああああああああああ!」

 私の叫びは静かな森に木霊した。 
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