怪力悪役令嬢は冒険者になりたい!

タハノア

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古霊の尖兵編

072-血が流れすぎてる……

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 ガオゴウレンさんは、船から降りてきて荷物の梱包用の木箱にどかっと腰を下ろし、わけがわからないよと言いたげな表情で私の言葉を聞いていた。

「だから何度も言ってますが私はガオゴウレンさんの事はなんとも思っていないのです!」

 私の言葉足らずから生まれた誤解を懸命に晴らしています。出港間近と焦っていた私は言葉を省略しすぎて、まるで旅立つ想い人に一緒について行く宣言のようになってしまい、私がガオゴウレンさんに告白したと誤解されてしまいました。

「しかし縁もゆかりも無いクロービに来たいと言うなら目的は俺では?」

 この自信はどこから来るのでしょうか?
 
「いえ、違います!私は拳法を学びたくてクロービに行きたいのです!」
「拳法を学びに?俺が拳法の使い手だから同じ戦い方がしたくて?」

 もう本当に…… 

「違います!私が知る限り唯一の素手戦闘の技だからです」
「ではクロービに来たいのは俺とは関係ないということか……」

 きっぱりと否定したかいもあって理解してもらえたようですね!あらガオゴウレンさん……何時になくしょんぼりしていますね……

 あっ!推薦を決めるのが彼だということをすっかり忘れていました……自分を上げて落とすように振った相手のためにそんな手間をかけてくれるだろうか?その事に気がついてどうしようかと思いアリッサに視線で助けを求めた。

 アリッサはやれやれと言った顔をした後木箱に座っているガオゴウレンさんになにか耳打ちしています。彼は目を見開いたり悲しげな表情で私を見たりと表情をコロコロ変えた後すくっと立ち上がった。

「わかった2人がクロービに入国できるよう手配する!」

 やった!アリッサが何を言ったかわかりませんが無事に入国許可が取れましたわ!

「やりましたわ!ありがとうアリッサ!」

 私の声をかき消すように焦った衛兵が大声を上げながら港に走り込んできた。彼は装備をチェストプレートしか付けていなくガントレットとブーツを脱ぎ裸足に素手の妙な状態だった。

「敵襲!食料品市場の広場に魔物!市民は建物内に避難!治療も戦力も不足!騎士団員は広場にむかえ!」

 一瞬の静寂の後周りの人たちがざわめき避難を始めた。私は現地へ向かうべきかここの守備をするかで一瞬の迷いが生じたが、そこにガオゴウレンさんの指示が飛んだ。

「ここにはけが人もいない!守備は俺に任せろ!マルレリンドとアリッサは発生源に急いで被害が広がるのを防いでくれ!」

 迷いが振り切れた私はアリッサの顔を伺い頷き合うと食料品市場へと急いだ。

 食料品の輸出が多い国なので食料品市場と港は結構近いので角を2つほど曲がるとすぐに食料品市場の広場が見えた。

 そこには信じられない光景が広がっていた。

 首のない人のような魔物と戦う騎士団員……

 黒い塊のような鎧の人物を取り囲むフードローブの集団……

 膝から崩れ落ち絶叫している騎士団員の腕には薄黄色のワンピースを血に染めたラーバルが抱えられていた。

「アリッサ!ラーバルを!」
「わかってる!」

 騎士団員をはねのけてすぐにアリッサは治療を始めた。部位欠損ぐらいなら余裕で治せるアリッサなら回復は容易いはずです。みるみるうちに傷はふさがっていき出血は止まった。

「傷は直った……でも血が流れすぎてる……このままじゃ……」

 ひどく落ち込んだアリッサの声に最悪の結末を思い浮かべる。

「今すぐ輸血しないと!」[血よ集まりせよ……そしてあるべき場所へと戻れ……]

 アリッサは独自の呪文を唱えると周囲の血溜まりに手をかざしラーバルの流れ出た血液を浄化しながら空中へとまとめていく。ラーバルの胸の上に薄い透明の膜に包まれた赤い球体が現れ少しずつ体内へと入っていく。

「だめ……ほとんど固まってる……使える血が少ないこれじゃ足りない!誰か血を!」
「アリッサ血液型とかの問題は大丈夫なの!?誰でも大丈夫なの?」

 すぐにでも提供を申し出たかったが前世の知識から血液型の心配をした。この世界では血液型占いのようなものもなく検査もないため自分が何型かなんて一切わからなかった。

「誰でも大丈夫!説明は後でする」
「では私の血液を!」
「でもマルレはこれから戦闘が……」
「アリッサ忘れたの?私は戦いに血は要らないわ!」

 アリッサはハッとしたあと希望に満ちた顔になった。救援と戦闘開始を同時にできる絶好のチャンスだ。

「そうだった!散った血液を勝手に集めるから何時でも行っていいいよ!」
 
 ラーバルをアリッサに託し私は戦闘に参加することにした。

「エンド・オブ・ブラッド!」

 血管から追い出された血はゆらゆらと赤い煙になって霧散する。

[血よ集まりせよ……そしてあるべき場所へと戻れ……]

 ラーバルの胸の上に浮かぶラーバルの血液玉の上に私から出た血霧が集まり血液玉になった。2つの球体は細い管で繋がり砂時計のような形に変化して何らかの処理をしながら私の血液玉からラーバルの血液玉へとポタポタと移動している。

「安定した!もう平気!集中したいからマルレは敵を抑えて!」
「わかったわ!行ってくる!」

 私は治療の妨害をしないように静かに戦乱へと駆け出した。
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