怪力悪役令嬢は冒険者になりたい!

タハノア

文字の大きさ
80 / 159
心の中へ編

080-ザロット 三家会議

しおりを挟む
 私はザロット・ドレストレイル、ナウエルス大陸の北東部の半島にあるレイグランド王国の候爵だ。

 私の家系はレイクランド王国を立ち上げた始まりの三家のうちの一つだ。

 この国は影のトレイル、豊穣のレイト、守りのレイスこの3人が率いた勢力が周辺の勢力に対抗するために同盟を組むことから始まった。

 三勢力はそれぞれドレストレイル候爵、セイントレイト王族、バルトレイス公爵と名を改め、セイントレイトは必ず遺伝する光土水属性で治水、建築、農耕をバルトレイスは騎士団を率いて防衛と治安維持を、そして我がドレストレイル家は[トレイル]という裏組織を運営し情報収集、裏工作、暗殺……国内外問わず裏の世界で生きている。

 その役割もあって我が家は表立って動くことはないゆえ国の動向を決定する[枢密院すうみついん]には参加しない。しかし我が家は外交用の情報収集や軍事施設への破壊工作なども行っているため連絡を取らない訳にはいかない……そこで不定期で[トレイル]の存在を知っている始まりの三家だけが集まる[三家会議]が行われている。

 そんな会議をすると通達が来た。

「マルレの意識が戻らないというのに呼び出しとはいい度胸だ……」

 娘のマルレが潜心術にかかって意識を失ってから一夜明けた……マルレの心の中へと入ったアリッサ嬢と共にマルレの部屋のベッドに寝かされている。私はマルレの目がさめるのを一晩中ずっと待っていた。今は会議などしている場合ではないのだ。

「あなたが居ても何も出来ないのですからお仕事してください」
 
 妻のレナータはしっかり睡眠を取り今はお茶を飲みながら読書をしている。昔から何事にも動じない女性だが娘の危機ですらどっしりと構えられると、まるで私が小物のように感じてしまう……

「しかしだな……」
「大丈夫ですよ、もう清潔の祝福を持った魂は開放されてますから」

 そういって微笑む……まさか心の中が見えているのか?

「見えていますよ、私がつないでいるのですから」
「なに!?そういう事は先に言ってくれ!」
「言っても私達は何も出来ないのですから言う必要はないと思いまして、そんなことよりおとなしく仕事に行ってきてください」

 たしかに何も出来ないが途中経過ぐらい知りたいのが心情というものだろ?それにマルレが目覚めたときにそばに居なかったら薄情な親と思われてしまうかもしれないのだ。

「しかしだな……目が冷めたときにそばに居なかっ……」

 レナータは私の言葉を遮り早口で捲し立てた。

「心の中は時間の進みが遅いのですからまだ時間はかかります!ですからあなたにしか出来ない仕事を今のうちに終わらせてください!引き伸ばせば目覚める時間と仕事がぶつかってしまいますよ!」

 これは不味い……レナータが早口になるのはイライラいしている証拠だ、おとなしく言うことを聞いておいたほうが良いな。

「わかった、会議には出席する。本当に目覚めるのはまだ先なのだな?」
「ええ、早くても明日の昼前ぐらいでしょうね」
「そうか……では留守を頼む」
「いってらっしゃいませ」

 後ろ髪を引かれる思いで屋敷を出て城へと向かう。城に近づけば近づくほどイライラが募り会議場である城の地下の隠し部屋に到着した頃にはすっかり機嫌が悪くなっていた。

「お前たち……娘の意識が戻らないのは知っているだろ?」

 私は入室してすぐにたっぷりと殺気をのせて威圧した。

「落ち着け!ワシたちの娘に手を出した奴らについての会議じゃ!」

 イージウス・バルトレイス……筋肉隆々で短髪緑髪で優しい緑の瞳をした白い鎧姿の男はいつものヘラヘラした笑顔をやめて鋭い鷹の目付きになっている。始まりの三家のうちの一つで騎士団を運営しているバルトレイス家の当主だ。

「対策を話し合うべきだろザロット?」

 デルバート・セイントレイト……青い長髪に透き通るような青い瞳、万人が美しいと思うような顔立ちに赤いマント……まるで絵本から飛び出してきたような人物……いやあの絵本はこいつがモデルか。始まりの三家のうちの一つセイントレイト家の当主つまりは国王だ。

「検討はついているお前らの先祖の古霊いにしえれいだろ?」

 王都の古霊いにしえれい始まりの三家には因縁がある。建国してから初めての世代変更で大失敗して国が潰れかけたのだ。

 二代目の王である長男だという理由だけで王になったアウゲル・セイントレイトが横暴極まりない上に無能な人物だったのだ。それに仕えたのはスルーベル・バルトレイスこちらも長男というだけで騎士団を任されていた無能だ。

 国のトップと騎士団のトップが揃って無能になり国はすぐに傾いた。我がドレストレイル家は初代様の「もうダメっぽいから他いかね?」との言葉を受けて国を捨てる準備をしているときだった。

 城に出向いていた初代様の娘であるロズヴァ・ドレストレイル様がアウゲルに手篭めにされそうになったのだ。追い詰められた彼女は命と引き換えにドレストレイル家に不浄なものを寄せ付けない清潔の祝福をかけて亡くなったのだ。

 初代様は怒り狂いその日のうちにアウゲルとスルーベルを討ち取った……赤い霧をまとい護衛を蹴散らしながら無傷で堂々とまっすぐ歩いて来る姿はセイントレイト家とバルトレイス家に恐怖を刻みつけたらしい。

 バカ二人が始末された後この二人の直系の先祖であるそれぞれの家の次男が引き継ぎ国は持ち直したらしい。そしてそのバカ二人アウゲルとスルーベルは悪霊となり今でも王都の何処かに潜伏しているというわけだ。

「どうやら魔術師団の連中が手を引いている可能性が浮上したのじゃ」

 イージウスも娘のラーバルを害されていたのだったな……怒りと悔しさが溢れている。

「そこで[トレイル]の出番なのだが魔術師団を突いて古霊いにしえれいの本拠地を探ってくれないか?」

 デルバートは相変わらず落ち着き払っている。息子しかいないこいつには娘が居る私達の気持ちはわからないのかもしれぬな。

「めんどくさい貴族をどんどん魔術師団に放り込むからこういう事になるのだよ……」
「そうだぞワシらの娘が害されたのはお前のせいでもあるのじゃぞ?」
「何をいうか!今回の敵はスルーベルの槍術を使っていたのだからバルトレイスの問題だろう!」
「何じゃと!?それを言うなら黒幕はセイントレイト家じゃろう!」

 また始まったか……この二人昔からちっとも変わらんな……

「うるさい!マルレが関わる問題なのだ真面目にやれ!滅ぼすぞ!」

「あーでたでた![滅ぼすぞ!] レナータのときは聖魔一体の事を呪術師とよばないように国中に周知しないと滅ぼすぞ!ヴィクトルのときは闇術が悪しき術だとの認識を変えないと滅ぼすぞ!どんだけ過保護なんだよまったく」

 家族を害されるならあたり前のことだろう何を言っているのだデルバートは……

「まてまて喧嘩している場合ではないじゃろ」
「ふぅ……そうだな、それで[トレイル]は動いてくれるのか?」
「そのつもりだ先祖達が先送りにしてきた問題を我々の代で片付けてやろうではないか」
「そうだな、王家も戦闘に向けて準備しておく」
「騎士団と近衛も協力するぞ」

 私の家族に牙をむいたのだ古霊いにしえれいには滅びてもらう……

「なら決まりだな、それで一つ頼みがある」
「何だ言ってみろ」
「片がつくまでマルレを国外に避難させておきたい……」

 私の要求はすんなり通った。これで心置きなく[トレイル]は暴れられる……
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

【完結】番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

悪役令息の継母に転生したからには、息子を悪役になんてさせません!

水都(みなと)
ファンタジー
伯爵夫人であるロゼッタ・シルヴァリーは夫の死後、ここが前世で読んでいたラノベの世界だと気づく。 ロゼッタはラノベで悪役令息だったリゼルの継母だ。金と地位が目当てで結婚したロゼッタは、夫の連れ子であるリゼルに無関心だった。 しかし、前世ではリゼルは推しキャラ。リゼルが断罪されると思い出したロゼッタは、リゼルが悪役令息にならないよう母として奮闘していく。 ★ファンタジー小説大賞エントリー中です。 ※完結しました!

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

処理中です...