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第9話 おっさん、街に入る
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翌朝
そういえば異世界の分身体での行動について、昨日のレベルアップのタイミングで、分身と「同期した」と表現したが「記憶を認識した」の方が正しいかもしれない。
便宜上「分身体」とも言っているが、全てが「本体」というのが正しい感覚だ。
昨日一日、異世界で過ごしたし、現代でも仕事もしている。
一日という時間の中で、3体分の行動をしており、どれも独立した俺の一日の行動として記憶に存在している。
だがそれぞれの体験が混ざったり時系列がおかしくなったりはしておらず混乱もない。
これも並列思考のおかげだろうか。
まあ、問題なさそうだし気にしないことにする。
そんなわけで同期した異世界の俺の一日目はこんなカンジだった。
───
もう一人の俺が現代の自宅に転移したあと、俺は街に向かうことにした。
最初に、おっさんの俺は、変幻自在で見た目は20代前半にしておこうとしたが、『健康』スキルのおかげかすでにそんな感じの見た目になっている。
こっちの世界の成人ってどれくらいなんだろうな。
もし成人が15歳とかなら20代で出稼ぎとか、怪しまれるだろうか。
大抵の異世界ものは15歳くらいで成人の場合が多いよな。
物によっては12歳とかも。
よし、15歳の俺で行こう。若いほうが侮ってもらえるだろう。
髪と目の色は変えておくか。
黒髪が珍しい世界の場合もあるし。大抵、過去の転移者がやらかしてて、特徴が黒髪黒目の日本人だったりするんだよな。
無難に茶髪にしておくか。変えた髪色のほうが珍しいなんてことになったら、嫌だからな。
目も茶色でいいか。
って具合に、街道に出る前に『変幻自在』で容姿を変更していった。
森を抜け、森から続く小道を歩いて街道に突き当たると、左折した先に壁というかおそらく防壁が見える。
あれが街なのだろう。
防壁に囲われているということはあまり治安が良くないのか。
その場合、敵は人間か或いは魔物か。どちらが脅威なんだろうな。
とにかく、現代日本の治安の良さは、忘れたほうが良さそうだ。
外務省に渡航制限された紛争地域にでも来たと思っておこう。
距離はおそらく歩いて30分以上かかる気はするが、間に何もなく防壁の規模感もイメージがつかないため、街まで1時間(4、5km)程度なのか、もっと遠くにあるのか、都会っ子の俺には摑めなかった。
実際歩いてみると、体感で1時間前後というところで街に到着した。
入口と思われる門に、10人程度が並んでいたのでその最後尾についた。
こっそり並んでいる人々を伺うと、剣や盾を装備した冒険者風の見た目の人たちが半数で、残りは行商や住人といったところか。
髪色、目の色含め、彼らの見た目と比べても、俺の見た目はおかしいものでは無いように見える。
冒険者風の人たちの中には15歳の見た目に変身している俺と年齢が変わらないような少年少女も見受けられた。
ちょうど俺の目の前に並んでいた3人がそうだ。いかにも前衛職っぽい剣を佩いた軽鎧の短髪の少年と弓を腰のあたりに携帯している軽装の少女、杖とローブの少女だ。
結構待ちそうなのでこの3人に話しかけてみることにする。
「ちょっといいか?」
「お、なんだ?」
少年が答えてくれる。
女子二人は若干警戒しているようだが、同い年くらいの見た目のおかげかそこまで露骨に態度にはでていない。
「村から出てきたばっかりで色々聞きたいんだが、もしかして3人は冒険者か?」
「そうだぜ、もしかしてお前も?」
「ああ、これからなろうと思ってるんだが、ちょうど俺と同じ年くらいの3人だったから声をかけてみたんだ」
「そうか、答えられることなら別にいいぜ。もう少し待ちそうだしな」
「助かる。
冒険者になるのって色々面倒だったりするのか?試験とかあったり・・・」
「いや、なるだけならギルドで登録するだけだから簡単だぜ。5,000シリンいるがそれだけだな」
「それは助かるな。あと先輩方に絡まれたりってやっぱあるのか?」
「ないと思うけど、俺たちは3人で登録に行ったからな。
でも、よっぽど態度が悪いならともかく、これから冒険者になろうって奴に絡むのは俺の感覚でもダサいって思うからな。ないんじゃねぇかな」
「そうか。
いや、異世界物のテンプレ情報が絶対いかつい先輩冒険者がご指導してくれるから気をつけろっていうから心配になってな」
「ああ、酔っぱらいの先輩とかで虫の居所が悪かったりするとそんなこともあるかもな。
でもそんなこと滅多にないと思うぞ」
滅多にないだと?
・・・たった今、フラグが立った気がする。
くっ、話しかけたのは失敗だったか?
とはいえ、情報無しで冒険者ギルドに突撃するのは無しだ。
「心配なら俺達が一緒に行ってやろうか?」
急に黙り込んだ俺が、ショックを受けていると思ったのかそんな提案をしてくれた。
たしかにすでに冒険者活動をしている新人くらいの奴らが連れてきたやつに絡むケースはそんなになかったきはする。
フラグを立てたんじゃないかと疑心暗鬼になっている俺はその提案にすがることにした。
「いいのか?」
俺は後ろの女子2人にも目を向けて確認をする。
「今日は無理よ、泊まりで依頼受けてきた帰りだからクタクタだもの」
弓の子が言い、杖の子もそれに頷く。
はっきりとした物言いだが今日じゃなければいいと解釈できる。優しい子じゃないか。
俺も今日は宿を探したり情報収集したりいろいろ準備があるからちょうど良いな。
女子の答えを受けて剣のやつが
「明日でもいいか?」
といってくれたので
「ああ、それで頼む。
そういえばまだ名乗ってなかったな。オレはシンだ」
「そうだったな。
オレはリックだ。こっちはフェイとセティ。
この3人でパーティを組んでる」
お互い名乗った後、ギルドの大体の場所を聞いたり集合時間を決めていると彼らの番になったので、彼らを見送った。
そういえば『異言語理解』のおかげか会話は問題なく行えたな。
見た目についても変な目で見られるようなこともなかったように思う。
ここまで来たのだから、もう堂々と自分の番を待つことにする。
前の3人が終わり俺の番が来た。
村からの出稼ぎであること、冒険者志望であることを伝えると、入市税として1万シリン取られたが、引き換えに板を1枚渡され、冒険者ギルドで冒険者になるときに渡せば入市税が返ってくることを伝えられた。
念の為、ここでも冒険者ギルドと宿がある場所を訪ねると、ここが南門であることと、街を東西南北に通る大通りで分けた4つのエリアがあることを教えてくれた。
冒険者ギルドも宿屋もどちらも南西エリアにあるらしい。
礼を言って街に入ろうとすると
「ようこそ、城塞都市『アインギス』へ」
と笑顔で言ってくれた。
街に入ると、馬車2台がすれ違える程の道幅の艶のある石畳が敷かれた大通りに、中世ヨーロッパは知らんが、旅行で行ったイタリアのローマやヴェネツィアの市街を思わせる街並みと、そこを行き交う多くの人々の様子が視界に入ってきた。
やはり冒険者風の見た目の人や商人のような見た目の人が多いか。
しかしその中には、獣耳が頭から生え、尻尾も見て取れる、おそらく獣人だろう人や、背の低いひげの豊かなドワーフと思われるファンタジーな見た目の人たちを見つけることができ、表には出さないが俺のテンションは上がりまくっていた。
あまりの感動に神に祈ろうとした瞬間、相手があの女神であることを思い出し、思いとどまったが、あの女神のおかげではあるので感謝はしておいた。
祈りはしなかったが。
あの女神を思い出して、すっとテンションが下がった、もとい落ち着くことができた俺は、まず今日泊まる宿を探すことにした。
大通りから2,3区画ほど入ったあたりの宿がそこそこで値段も手頃らしい。
それ以上奥に行くと質が下がっていき、比例して治安も悪くなると門番さんが教えてくれたのだ。
さて、いい宿があると良いが。
――――
作者のモチベーションになりますのでいいね、お気に入り登録、感想など、よろしくお願いします。
いいねだけ、いいねだけでいいからっ。
そういえば異世界の分身体での行動について、昨日のレベルアップのタイミングで、分身と「同期した」と表現したが「記憶を認識した」の方が正しいかもしれない。
便宜上「分身体」とも言っているが、全てが「本体」というのが正しい感覚だ。
昨日一日、異世界で過ごしたし、現代でも仕事もしている。
一日という時間の中で、3体分の行動をしており、どれも独立した俺の一日の行動として記憶に存在している。
だがそれぞれの体験が混ざったり時系列がおかしくなったりはしておらず混乱もない。
これも並列思考のおかげだろうか。
まあ、問題なさそうだし気にしないことにする。
そんなわけで同期した異世界の俺の一日目はこんなカンジだった。
───
もう一人の俺が現代の自宅に転移したあと、俺は街に向かうことにした。
最初に、おっさんの俺は、変幻自在で見た目は20代前半にしておこうとしたが、『健康』スキルのおかげかすでにそんな感じの見た目になっている。
こっちの世界の成人ってどれくらいなんだろうな。
もし成人が15歳とかなら20代で出稼ぎとか、怪しまれるだろうか。
大抵の異世界ものは15歳くらいで成人の場合が多いよな。
物によっては12歳とかも。
よし、15歳の俺で行こう。若いほうが侮ってもらえるだろう。
髪と目の色は変えておくか。
黒髪が珍しい世界の場合もあるし。大抵、過去の転移者がやらかしてて、特徴が黒髪黒目の日本人だったりするんだよな。
無難に茶髪にしておくか。変えた髪色のほうが珍しいなんてことになったら、嫌だからな。
目も茶色でいいか。
って具合に、街道に出る前に『変幻自在』で容姿を変更していった。
森を抜け、森から続く小道を歩いて街道に突き当たると、左折した先に壁というかおそらく防壁が見える。
あれが街なのだろう。
防壁に囲われているということはあまり治安が良くないのか。
その場合、敵は人間か或いは魔物か。どちらが脅威なんだろうな。
とにかく、現代日本の治安の良さは、忘れたほうが良さそうだ。
外務省に渡航制限された紛争地域にでも来たと思っておこう。
距離はおそらく歩いて30分以上かかる気はするが、間に何もなく防壁の規模感もイメージがつかないため、街まで1時間(4、5km)程度なのか、もっと遠くにあるのか、都会っ子の俺には摑めなかった。
実際歩いてみると、体感で1時間前後というところで街に到着した。
入口と思われる門に、10人程度が並んでいたのでその最後尾についた。
こっそり並んでいる人々を伺うと、剣や盾を装備した冒険者風の見た目の人たちが半数で、残りは行商や住人といったところか。
髪色、目の色含め、彼らの見た目と比べても、俺の見た目はおかしいものでは無いように見える。
冒険者風の人たちの中には15歳の見た目に変身している俺と年齢が変わらないような少年少女も見受けられた。
ちょうど俺の目の前に並んでいた3人がそうだ。いかにも前衛職っぽい剣を佩いた軽鎧の短髪の少年と弓を腰のあたりに携帯している軽装の少女、杖とローブの少女だ。
結構待ちそうなのでこの3人に話しかけてみることにする。
「ちょっといいか?」
「お、なんだ?」
少年が答えてくれる。
女子二人は若干警戒しているようだが、同い年くらいの見た目のおかげかそこまで露骨に態度にはでていない。
「村から出てきたばっかりで色々聞きたいんだが、もしかして3人は冒険者か?」
「そうだぜ、もしかしてお前も?」
「ああ、これからなろうと思ってるんだが、ちょうど俺と同じ年くらいの3人だったから声をかけてみたんだ」
「そうか、答えられることなら別にいいぜ。もう少し待ちそうだしな」
「助かる。
冒険者になるのって色々面倒だったりするのか?試験とかあったり・・・」
「いや、なるだけならギルドで登録するだけだから簡単だぜ。5,000シリンいるがそれだけだな」
「それは助かるな。あと先輩方に絡まれたりってやっぱあるのか?」
「ないと思うけど、俺たちは3人で登録に行ったからな。
でも、よっぽど態度が悪いならともかく、これから冒険者になろうって奴に絡むのは俺の感覚でもダサいって思うからな。ないんじゃねぇかな」
「そうか。
いや、異世界物のテンプレ情報が絶対いかつい先輩冒険者がご指導してくれるから気をつけろっていうから心配になってな」
「ああ、酔っぱらいの先輩とかで虫の居所が悪かったりするとそんなこともあるかもな。
でもそんなこと滅多にないと思うぞ」
滅多にないだと?
・・・たった今、フラグが立った気がする。
くっ、話しかけたのは失敗だったか?
とはいえ、情報無しで冒険者ギルドに突撃するのは無しだ。
「心配なら俺達が一緒に行ってやろうか?」
急に黙り込んだ俺が、ショックを受けていると思ったのかそんな提案をしてくれた。
たしかにすでに冒険者活動をしている新人くらいの奴らが連れてきたやつに絡むケースはそんなになかったきはする。
フラグを立てたんじゃないかと疑心暗鬼になっている俺はその提案にすがることにした。
「いいのか?」
俺は後ろの女子2人にも目を向けて確認をする。
「今日は無理よ、泊まりで依頼受けてきた帰りだからクタクタだもの」
弓の子が言い、杖の子もそれに頷く。
はっきりとした物言いだが今日じゃなければいいと解釈できる。優しい子じゃないか。
俺も今日は宿を探したり情報収集したりいろいろ準備があるからちょうど良いな。
女子の答えを受けて剣のやつが
「明日でもいいか?」
といってくれたので
「ああ、それで頼む。
そういえばまだ名乗ってなかったな。オレはシンだ」
「そうだったな。
オレはリックだ。こっちはフェイとセティ。
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そういえば『異言語理解』のおかげか会話は問題なく行えたな。
見た目についても変な目で見られるようなこともなかったように思う。
ここまで来たのだから、もう堂々と自分の番を待つことにする。
前の3人が終わり俺の番が来た。
村からの出稼ぎであること、冒険者志望であることを伝えると、入市税として1万シリン取られたが、引き換えに板を1枚渡され、冒険者ギルドで冒険者になるときに渡せば入市税が返ってくることを伝えられた。
念の為、ここでも冒険者ギルドと宿がある場所を訪ねると、ここが南門であることと、街を東西南北に通る大通りで分けた4つのエリアがあることを教えてくれた。
冒険者ギルドも宿屋もどちらも南西エリアにあるらしい。
礼を言って街に入ろうとすると
「ようこそ、城塞都市『アインギス』へ」
と笑顔で言ってくれた。
街に入ると、馬車2台がすれ違える程の道幅の艶のある石畳が敷かれた大通りに、中世ヨーロッパは知らんが、旅行で行ったイタリアのローマやヴェネツィアの市街を思わせる街並みと、そこを行き交う多くの人々の様子が視界に入ってきた。
やはり冒険者風の見た目の人や商人のような見た目の人が多いか。
しかしその中には、獣耳が頭から生え、尻尾も見て取れる、おそらく獣人だろう人や、背の低いひげの豊かなドワーフと思われるファンタジーな見た目の人たちを見つけることができ、表には出さないが俺のテンションは上がりまくっていた。
あまりの感動に神に祈ろうとした瞬間、相手があの女神であることを思い出し、思いとどまったが、あの女神のおかげではあるので感謝はしておいた。
祈りはしなかったが。
あの女神を思い出して、すっとテンションが下がった、もとい落ち着くことができた俺は、まず今日泊まる宿を探すことにした。
大通りから2,3区画ほど入ったあたりの宿がそこそこで値段も手頃らしい。
それ以上奥に行くと質が下がっていき、比例して治安も悪くなると門番さんが教えてくれたのだ。
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