普通のおっさんが女神様にスキルを貰ってスローライフ!?〜異世界と現代を往復してバレずにいい暮らしをするお話〜

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第55話 おっさん、往路でやっちゃう

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トゥーヴァと商会の人たちの話が終わり、商隊の準備が整うと、俺達はアインギスの南門から出発した。

配置としてはシールズが先頭の馬車の上に陣取り、哨戒を担当。
小さいがちゃんとそれ用の席や手すりが付いてるようだ。

俺とエライザが馬車の右側、リックとフェイ(弓)が馬車の左側、トゥーヴァとセティ(杖)が後方だ。

ネツァリは、遊撃で固定の場所はないが、基本的には前方に陣取り、ちょくちょく左右の俺たちにこの先の要警戒場所なんかを伝えに来る。
森が右に見えてるときなんかはこっちにいたりしたな。

商会の護衛は馬車内の護衛と待機だ。
万が一用ということらしいが万が一ってのは俺らの誰かが死んじゃった時かな。
まあ怪我での戦闘不能もあるか。

街から出てしばらくはほぼほぼ危険もないらしく、穏やかな雰囲気の中、警戒はしっかりしながらも、俺はエライザと話をしていた。

主に出発前にしていた話の続きだ。

「はぁ、さっきはああ言ったけど、聞いてよかったのと聞かなきゃよかったのと半々ぐらい」

「ああ、でもちゃんと言ったぞ、つらい思いをするかもしれないって。
現在進行形で烈焔のエ―「やめて」」

さっきより反応いいじゃん。

「わるい。
でもまあ、なわけだからな。
そんな理由で脱退なんか出来ないだろ?

いいパーティ名だと思うぞ?」

「うん、脱退はしないけど。
あとその言葉、もう素直に受け取れない」

でしょうね。

「でも俺の価値観がおかしいだけだからな?
みんな普通にかっこいいと思ってるぞ、『烈焔』。
俺だってかっこいいと思ってるんだが、さっきの価値観が邪魔しちゃうってだけで」

この価値観をファンタジーに持ってきた俺が全面的に悪い。
魔法とか使えなくなっちゃうもんな。

と思って気づいた。エライザは魔法職っぽいよな。大丈夫だろうか。

「なあ、かっこいい詠唱とかあるの?」

「・・・・・・ない」

あるな。

「まって!もう!営業妨害!」

「落ち着け、仕事中だぞ」

「うっ・・・」

「例えば、基本の攻撃魔法だとどんななんだ?」

「・・・ファイアアロー」

ぼそっと教えてくれる。

「詠唱は?」

「『その熱で穿うがて』」

「別にいいじゃん。
でもそうかー、穿うがっちゃうのかー」

「やめてほんとに。
しょうがないでしょ、教本に書いてあるんだから。
ダメもう撃てない。廃業しなきゃ」

「わるい、でも教本通りならマジで気にしないでいいと思うぞ。
自分で考えた詠唱をかっこいいと思って得意げに使うのがイタいだけで。
教本ならマジでノーカン」

「ほんと?」

「ほんとに。
だってしょうがないじゃん。
変えられるわけじゃないだろ?
ん?詠唱って自分で考えるとかもできるのか?」

「そういう人もいるけど、私はめんどくさくて」

「よかったな。
自作だったら今頃悶え転がってたんじゃないか?」

「笑えない」

「じゃあ、自作してみるか?かっこいいやつを」

「え?」

「こっちが愉しむスタンスというか、面白がってやる分にはいいんだよ」

「・・・例えば?」

「ん~、ファイアアローだろ?
『我が血潮よ、熱き刃となりて敵を貫かん!』とか?」

目をキラキラさせるエライザ。

「え、なにそれ、かっこいい」

「ちがうぞエライザ。
そこは半笑いか笑いをこらえながら「かっこいいじゃん」って言うんだ」

「そっか。
でも何でそんなすぐ思いつくの」

「俺もその「かっこいい」を追い求めた時期があるからな」

しかもアニメ大国の黎明期を知ってるおっさんだ。
日本人はオタク民族だ。なめるなよ。

「えー、でも使ってみたいかも、強そう」

「おう、機会があったら使ってくれ。
『我が血潮』のあたりが魔力集めるイメージで『熱き刃』が鋭いやじりのイメージだな。貫くような鋭いやつで頼む。
強かったら使用料くれよ」

「考えとく」

マジか。
エライザは俺が作った詠唱をぶつぶつ繰り返している。

その時、

「右の木!3本連なってるやつ。
なんか動いたかも!」

シールズが声を上げ、隊列に緊張が走る。

進行は止めずに対象の木を警戒していると木の上から続けて2体の影が降りてきた。

ゴブリンだ。

シールズに合図を送る。
俺たち、なんなら俺だけでいけそうなので、各自持ち場で警戒だ。遊撃のネツァリは来るかもな。

そこで馬車の進行が止まる。

まだ距離はあるな。一応前衛なので俺がエライザより前に出る。

俺は適当な石を拾って狙いをつける。

「エライザ、撃ってみるか?」

「さっきの?」

「ああ、アレなら俺1人でも対応できるからな。
試し打ちにはちょうどよくないか?
射程は?」

「もう入ってる」

言いながらエライザは杖を構え、さっきのを詠唱する。

「我が血潮よ、熱き刃となりて敵を貫かん。ファイアアロー!」

その瞬間、俺の横を一条の光が凄い勢いで過ぎ、ゴブリンに向かっていった。

そして真っ直ぐにゴブリンの胸をあっさりと貫通した。

貫通した矢は地面に突き刺さりその場の土と草を燃やした。

「え?」

そして遅れてゴブリンの胸からボッと火が上がりそのまま倒れて動かなくなった。

俺はとりあえず、もう一体のゴブリンに投石し、怯んだところを剣で一撃。

まあ、常設依頼でやってることと変わらないな。
危なげなくゴブリンを倒し、シールズに視線をやる。

「大丈夫!他に影はないよ!一応警戒で待機!」

俺の視線の意味を理解して、シールズが回答をくれる。

一旦進行を止めたしついでに小休止かもな。

俺はエライザが仕留めたゴブリンに近づく。
一応剣で首にトドメを刺しておく。

そしてファイアアローの傷を確認する。
エライザも駆け寄ってくる。
ローブで分かりづらいけどやっぱり揺れるなぁ。

それはそうと傷口。
手刀を貫通させたくらいの穴が空いていて、その傷口は焼かれている。
恐ろしい。
だが、これがCランク冒険者エライザの普通なのかも。

「いっつもこんなもん?」

エライザを見ながら聞くと首を振っている。

「確かにゴブリンくらいなら場所によっては一撃だけど、貫通なんてしないし傷跡ももっと小さい」

「つまり?」

「倍ぐらい強くなったかも」

まじか。

あ、こういう時に使える言葉があったはず。

確か・・・

あれ、俺やっちゃいました?













――――
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