黒鍵令嬢と陰陽師執事~救済と断罪~

柚木ゆず

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第0話 とある古びた書物

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 怨。それはこの世で最も、厄介な感情である。
 怨みは時として、善良なものを悪行へと走らせるから? 否。そうではない。そのどす黒く粘着性のある感情は、時に化け物を生み出してしまうからなのだ。

 人は、全ての生き物は。怨みを抱くと、体内に『負』が蓄積してしまう。

 そしてそれが一定量蓄積してしまうと、本人の意思に関係なく、化け物が誕生。やがてその存在――『負霊(ふれい)』は、目的を果たすべく動くき出す。

 その目的とは――。自身の、誕生の原因もととなった者の殺害。

 出現した負霊は即座に相手のもとへと向かい、殺める。
 負霊は、霊。誰にも――生んだ本人さえも気付かないまま動き出し、人知れず元凶に接近。そのまま、いとも容易く呪いによる殺害が行われてしまうのである。

 元凶の死亡。それは、自業自得。
 そうされるだけのことを、やってしまったのだ。その者に罰が返ってくるのは仕方のないこと。

 しかしながら――。この世には、『因果(いんが)』というものが存在している。

 全ての行動は、いつか必ず、その身に返ってきてしまう。それは負霊とて例外ではなく、負霊の行動はオリジナル本人の罪として残ってしまうのだ。

 怨みを抱かせた元凶に罪が返ってくるのは因果の応報は、残念ながら負霊の誕生の数年後に発生してしまう――負霊の怒りが自然と収まることはない。即ち負霊が誕生する程に嘆き悲しみ怨まされ・・、その挙句殺人の罪を背負う羽目になってしまうである。
 それは実に、理不尽な状況。そんなもの見過ごせるはずがない。

 幸いにも――。我が一族宝城家には、負霊を救い元凶に罰を与えられる力がある。
 幸いにも――。我が一族には、頼れるパートナー安倍家がいる。

 だから我々は日々奔走し、これからも走り続けてゆくだろう。
 生ある限り多くの負霊を救い、全ての元凶に相応の罪を返して・・・ゆくだろう。

 だが――。残念ながら――。

 人の寿命は、たかが知れている。現在着々と『策』は進行しているものの、わたし達が生きている間に負霊の誕生が0となることはないだろう。

 故に――。子、孫、ひ孫、玄孫たち、我々の子孫に託す――。

 どうか、彼ら彼女らを救って欲しい。
 そしていつかは、こういった怨が発生しない世の中を作って欲しい。


 頼んだぞ――。




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