復縁して欲しい? 嫌です

柚木ゆず

文字の大きさ
7 / 33

第4話 お茶の相手 アニエス&俯瞰視点(2)

「アニエス様? どうかされましたか?」

 とある事情があって、自室とこの部屋以外では外しているエンゲージリング宝物。それを指にはめていると、シャルル様の眉根が少しだけ寄った。

「疲労感……それも肉体的ではなく、精神的な疲れがあるように見えます。よろしけば、相談に乗らせてはいただけないでしょうか?」
「シャルル様、ありがとうございます。実は、ヒューゴ・ノズエルズ様が復縁を求めていらしたのですよ」

 この方は鋭い観察眼をお持ちな、私の心身の健康を最優先で考えてくださる方。そのため正直に説明を行った。

「まだ諦めてはいないようなのですが、父と母が厳しく対応してくださいます。ですので不安が理由のものではなく、滅茶苦茶な言動に呆れての疲れなのですよ」
「そうだったのですね。……そうですか……。あの男が再び…………」(彼は一つに気持ちが向き始めたら、とことん向く性質を持っていた。そんな状態で、確信し気合を入れて用意した物が全て無駄になったのなら…………)
「シャルル様? すみません、なんと仰られたのでしょうか?」

 中盤以降のボリュームが小さくて、聞き取ることができなかった。さっきは、何を口にされていたのかしら……?

「アニエス様、こちらこそすみません。今のは他愛もない独り言です、お気になさらないでください」

 シャルル様は小さく微笑まれて首を振られ、それが済むと私は部屋の中央にあるテーブルへと案内される。そして、

「今日はそんな疲れを癒していただくために、僕が紅茶を淹れてまいります。少々お待ちください」
「いっ、いえ……っ。シャルル様に、そんなことをしていただくなんて――」
「貴方のためになるものでしたら、どんなことでも実行したくなってしまうのですよ。アニエス様、今回は僕の我が儘にお付き合いください」

 お断りをしようとしていたら微苦笑と一緒に王子様然とした一礼をいただいて、やがてシャルル様はベルガモットとフィナンシェと共に戻られた。

「お待たせ致しました。それではアニエス様」
「はい。今日も、お話ししたいことがいくつもあるんです。シャルル様の出来事を、聞かせてください。私の出来事を、聞いてください……っ」

 そうして紅茶と焼き菓子がテーブルに並んだら、お喋りの時間の始まり。
 私達はいつものように交互に話題を出し合い、お部屋には笑顔と明るい声がたくさん咲いたのでした――。


 〇〇


 そうして邸内では幸せな時間が流れ、同時刻。外では――

感想 140

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。

織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。 父であるアーヴェント大公に疎まれている―― 噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。

「通訳など辞書で足りる」と追放された令嬢——三国会談で、婚約者は一言も話せなくなった

歩人
ファンタジー
宮廷通訳官エレノーラは五つの言語を操り、婚約者クラウスの外交を陰で支えてきた。 だがクラウスは言った。「通訳など辞書で足りる。お前は要らない」 追放されたエレノーラは隣国で新たな道を歩み始める。 一方、クラウスは三国会談の場で辞書片手に立ち往生。 誤訳が外交問題に発展し、窮地に陥ったその場に、隣国の通訳官として現れたのは——。 「その言葉は、もう翻訳できません」

姉の方を所望していたと言った婚約者に、突然連れ帰られて気づいたら溺愛されています

もちもちほっぺ
恋愛
侯爵家の地下室に住み、姉の食べかけで飢えをしのぎ、婚約者には初対面で「老婆のようだ、姉の方がよかった」と言われた令嬢リリアーナ。 ある日その婚約者に問答無用で公爵邸に連れ帰られた。 庭の恵みを口にするたびに肌が輝き、髪が艶めき、体に力が満ちていく。首に巻いたお守りの秘密、十数年続く国の不作の真実、虐げられ続けた令嬢の出生の謎。 全てが明かされる時、地下室令嬢の逆転劇が始まる。 なお婚約者は今日も庭でグルメリポートを最後まで聞いている。

悪役断罪?そもそも何かしましたか?

SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。 男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。 あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。 えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。 勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました

悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。 クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。 婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。 そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。 そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯ 王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。 シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯