復縁して欲しい? 嫌です

柚木ゆず

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第6話 侯爵家の敵じゃない! ヒューゴ視点

「貴様の顔を視界に置き続けるなど、一種の拷問だ。したがって単刀直入に命令・・するぞ。シャルル・デレアス。すぐさまアニエスとの縁を切り、金輪際接触しないと誓え」

 忌々しい、低級低俗貴族の住処。その中にある貧乏くさい応接室に足を踏み入れた俺は、ヤツが現れるや正面から睨みつけた。
 ここにいる男は選ばれし高貴な男、次期侯爵様だからな。無駄に爽やかな顔――。激しい苛立ちを覚えるそれを殴りつけたくなる衝動を抑え、はっきりと命じた。

「お前如きがアニエスと関係を持つ、それはあってはならないことだ! 彼女に相応しいのは、この世でこの俺だけだ!!」
「…………」
「デレアスよ。もしも服従しないのであれば、『家』もろとも徹底的に叩き潰す。いいな? 分かったな?」
「申し訳ございません。そちらのご命令に従うことは、できません」

 ……。この男は、即座に拒否しやがった。

「ヒューゴ・ノズエルズ様。貴方様はかつてアニエス様を裏切り、非を認められないまま去られました。そんな方に従うことなどできるはずがありません。それに」
「それに? なんだ?」
「アニエス様は有難いことに、僕を想ってくださっています。アニエス様が仰られたのであれば仕方がありませんが、あの方がこの男を選んでくださっている限りは、何があっても離れはしませんよ」

 僕を想って。この男を選んでくださって。
 それらがあっという間に怒りの臨界点を超えさせ、俺は無意識的に、目の前にあるテーブルに拳を落としていた。

「…………貴様。さっき放った俺の言葉が、聞こえなかったのか?」
「いえ。『縁を切れ』『金輪際接触しないと誓え』『服従しなければ徹底的に叩き潰す』。すべて、聞こえております」
「……なら、当然理解できるな? 拒否した貴様は――貴様らは、潰す。……デレアス。俺は口だけの男じゃない。動くと言ったら、実際に動く男だ」
「はい、そちらも存じ上げております。貴方様は、どこまでも自分勝手、自分第一な御方でありますからね。思い通りにならなければ、どんな手でも使おうとなさいますよね」
「っっ!! ははっ、はははっ! 言うじゃないか。…………喜べデレアス。貴様の態度で、遠慮する気はなくなった」

 俺は思いやりのある優しい男。実力行使には、多少の罪悪感を抱いていた。
 だが、コイツはコレだ。手心なんて必要ない。

「大人しく従わないどころか、ナイトを気取って生意気な口を叩く。今に見ていろ……! 貴様の顔は近々絶望に染まり、その口からは命乞いのみ出るようになるのだからな!!」

 その『宣告』と共に俺は立ち上がり、足早に忌々しきデレアス邸をあとにした。
 さぁて。屋敷に帰ったら、父上と母上に相談だ。侯爵家の全てを以て、貴様を――貴様が関わるもの全てを、闇に葬ってやる……!!

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