貴方様は本当に、あの日わたしを助けてくれた王子様なのですか?

柚木ゆず

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第5話 2人目の王子様 アリス視点(3)

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「アリス、待たせた。君はこれに、見覚えがあるよね?」
「こちらは…………は、はいっ、ございます! そちらは、当時わたしが身につけていたイヤリングです!」

 叔母様――侯爵様のお屋敷に伺っていたため、あの時のわたしはコスモスのイヤリングを身につけていました。ですが恐怖で走っていた際に落としてしまったらしく、片方をなくしてしまっていたのです。

「君を出入口へと案内して戻る際に、森の中で見つけたんだよ。これは会えないつらさを紛らわせるための、お守りのようなもの。あとで見せて、返そうと思って、持ってきておいたんだよ」
「そう、だったのですね。あのあと、拾ってくださっていたのですね」
「あの時は時間の都合で一緒に探せなかったけれど、その話を聞いて片割れを見てもいたからね。すぐに分かって、大事に保管していたのさ」

 アルチュール様は大事に両手で包み込み、そうしていると、

「まぁっ、それはあの時のっ。アリスよかったわねぇ……っ」

 二人目であるオーレリアン様がいらっしゃったことと、アルチュール様が急がれていたこと。それらによって入室されたお母様が、感嘆の声をあげました。

「わたくしも、もう二度と戻ってこないと思っていたわ。王子様に、感謝しないといけないわねっ」
「はい、お母様。……アルチュール様、ありがとうございました」

 お母様に続いて言葉と動作で謝意を示し、ですが――。心の中では、再び眉を寄せていました。

((こちらをお持ちだったということは、アルチュール様が王子様だったということになります))

 ですがそうなると、オーレリアン様が偽物となります。どこにも不自然や違和感がなかったこの方が、嘘を吐いていることになります。

((わたしには、そうは思えません。ですが……))

 こちらを落としたのは、紛れもない事実。そちらを拾っていただいているのですから、アルチュール様が本物になります。

((……やはり、アルチュール様? けれど……。でも……))

 否定して、また否定をして。そんなことが頭の中で起き、脳内がグルグルと回転を始めた――そんな時でした。その回転を止める言葉が、応接室内に響いたのでした。

「失礼を承知で申し上げます。ファズエルス様がお持ちになられていた、そのイヤリング。そちらは本当に、あの日森で拾ったものなのでしょうか?」
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