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第8話 本当の再会 アリス視点(1)

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「アリスさま――アリス、改めて名乗らせてもらうね。僕があの日、君と約束した男の子だよ」

 オーレリアン様はわたしの目の前へと立ち位置を変え、丁寧に一礼。優しくそっと、両手を握ってくださりました――初めて会った時と、同じ行動を取ってくださいました。

「ようやく会えるようになって、迎えに行ったら自称王子様が居た。ビックリしてしまったよ」
「アルチュール様が本物だと思い込んでおり、わたしもビックリしてしまいました。……あの方は、どこで約束を知ったのでしょう……?」

 お父様とお母様にした伝えていなくて、今は森を出られない――何かしらのご迷惑がかからないように、お二人には口外を控えてもらっています。
 ですので噂がアルチュール様の耳に入るはずがありませんし、そもそも、我が家は公爵様とご縁がありませんでした。直接お会いする機会もないはずなのに、どこで把握されたのでしょうか……?

「それに、小屋。あの方が用意したとされる建物は、どこにいってしまったのでしょうか……?」

 あの動揺と必死さから推測するに、そちらは事実。あの方は『嘘』を『本当』にするために、用意していたはずなのです。
 そちらは、どうなったのでしょうか?

「う~ん。前者は不明で、後者は演技が達者だったのだと思うよ」(その2つは、二人きりの時に説明する。少し待っていて)

 ゆっくりと左右に首が振られた後、わたしだけにしか聞こえない声が聞こえてきました。
 ですので――そちらに戸惑いましたが、目配せを使ってお返事を行います。今はこれ以上触れない方がよいみたいですので、お話を戻すことにしました。

「……オーレリアン様。申し訳ございませんでした」
「うん? 謝られる覚えはないよ? それは、何に対してなのかな?」
「すぐに本物だと、気付けなかったことへの謝罪です」

 この方はわたしの王子様で、大好きな人。ですので一目見た時に、気付かないといけなかったのです。

「ああ、そういうことか。だったら、謝ってくれる必要はないよ。……さっき――アルチュールの手を握った時、違和感を覚えていたよね?」
「は、はい。覚えていました」

 形容しがたい感覚がありました。ですのでつい、『あれ?』と口にしてしまいました。

「そんな君なら、僕がこうすれば――あの時のように手を握れば、本能的に本物だと気付くことができた。それを最初から分かっていたのだけれど、『本能』は根拠にならないと偽者は認めず食い下がる。当主夫妻だって、明確なものがなければ不安を覚えられる。そこでそういったものを用意できるまで、君に触れないようにしていたんだよ」
「……そう、だったのですね。…………仰る通りです」

 アルチュール様も同じように手を握ってくださいましたが、温かさがまるで違います。オーレリアン様はこの差が生まれると、分かっていらっしゃったのですね。
 わたしを、そんなにも信じて、理解してくださっていたのですね。

「だから謝るのはむしろ僕の方で、実はそのお詫びを用意しているんだ。それに一昨日はできなかった昔話や、僕達の今後の話もしないといけないからね。この先にある僕の生家に招待したいのだけれど、来てくれるかな?」
「はい……っ。もちろんです……!」

 そちらは、断るはずのないものですので。わたしは迷わず顎を引き、お父様達と共に、オーレリアン様に導かれ歩き出したのでした。
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