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第20話 夢? 母エルナ視点
しおりを挟む「おはようございます。やはり貴方の人生の崩壊は、自分自身のせいだったようですね」
景色がガラスのように、砕け散ったあと。気が付くとわたくしはエントランスで座り込んでいて、目の前にはマナリスド様のお顔があった。
「え? 顔は、怪我していない……? え……っ? 病院でも、ない……? なにが起きているの……!?」
「叫び興奮した影響なのでしょうね。貴方は突然倒れ、今まで――10分ほど、眠っていたのですよ」
眠っていた!? 10分も!?
「じゃあ、あれは夢!? 痛みも感覚もあったのに……。幻だったというの!?」
「そうでしょうね。なのでたっぷりと寝言を口にされていて、貴方の行動を全員でしっかり聞かせていただきました」
夢の中で起きた出来事を、わたくしは全部喋っていた……。だからアリスも夫も、倒れて駆けつけてきた使用人達も……。白い目を、向けていた……。
「怒りと願望が、アルチュールが介入しない人生を、失敗しないと豪語した人生を作り出したのでしょうね。けれど貴方は、同じように失敗してしまった」
「あ、あれは違う! あくまで夢のっ、仮定の出来事よ!! 現実でそうなるとは限らないわっ!! 大やけどをするとは限らないわ!!」
「そこに関しては、仰る通りなのかもしれませんね。ですがいずれ違う形で、悲劇を迎えていたと思いますよ。だってあのような、傍若無人な振る舞いをしていたのですからね」
恨みを買うに決まっていますよ――。大きく呆れの息を吐き、マナリスド様は自分の胸元に右手を添える。
「貴方は先ほど『なんで正体不明の子に助けられて約束をしたの』『なんで最初に正体を明かさないと』と叫び、それが現状の理由だと仰った。ですが僕が正体を明かしたら、今度は別の方向に暴走を始めた。……これは、貴方の判断。貴方の意思でそう動いたのですから、現実でも夢でも関係はない。貴方は結局、自分のせいで崩壊するのですよ」
「………………っ、なにを偉そうに!! 不愉快なのよその顔!! 気持ち悪い!!」
「エルナ様、上質な捨て台詞をありがとうございます。ここまでの立派なものを、創作物以外で耳に出来るとは思ってもいませんでしたよ」
!!!!!!
この……っ。この……っっ。
「さて。こうして言いがかりだとハッキリしましたし、ちょうど治安局の方々が到着されたようですしね。さようならの時間ですよ」
「まっ、待て!! 待ちなさいっ!! まだ終わっていない――」
「滅茶苦茶云々に関するお話はもう終わっていて、僕は――僕達はもう、貴方に用はないのですよ。この続きは牢屋の中で、おひとりで行ってください」
「っっ! だからその余裕ぶった顔が気に食わないのよ!! 元凶はっ、お前とアリスなのよぉぉぉぉぉ!! 罪をっ、つぐなぇぇぇぇ!! 責任をとれぇぇぇぇぇぇぇ――離せ! はなせぇぇぇ!!」
言い足りないのに!! 後ろ手に拘束されて、引きずられていく……。
抵抗しても、ビクともしなくて……。そのまま乱暴に、鉄格子のついた馬車に放り込まれて…………。
そんな……。そんなぁ…………。
わたくしは、被害者なのに……。言い分が認められることはなくて…………。すべての身分を、失って…………。狭くて暗くて汚いところで、生きていく羽目になってしまった…………。
「違うのぉぉ!! わたくしは、悪くないのぉぉぉ!! 話を聞いてっ! お願いよぉっっつ!! わたくしの話をきいてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
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