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第21話 解決、そして アリス視点(2)
しおりを挟む「実を言うと、約束の日に持って来ていたんだよ。だけどあんなトラブルが起きて延期になって、今日こそは――と思っていたんだ」
両方の手を差し出された、オーレリアン様。そんなオーレリアン様の口元が、穏やかに緩まりました。
「僕にとっても、アリスとの出逢いは特別な思い出。あの日君から色々な感情をもらって、十年後が待ち遠しかった。あの日から十年間ずっと、早く時間が進んで欲しいと願い続けてきたんだよ」
「オーレリアン様……っ。そう、だったのですね。そんなにも、想ってくださっていたのですね」
「人間嫌いだった僕の認識を、変えてくれたからね。どうしようもなく恋しかったんだ」
あの次期精霊王殿がねぇ。ふ~ん。と、何十回もハピオにニヤニヤされてしまったよ。と、微苦笑を浮かべながら西の方角を――エプリスヒの森を一瞥され、再びわたしの両目へと視線が戻ります。
「……アリス。あの時はできなかったけれど、今度はもうその手を離さない。君が望んでくれる限り、その手を握り続け幸せへと導いてゆくよ」
「……でしたら、オーレリアン様。いつまでも、手を握っていてくださるのですね?」
「そう、なるね。共に地へと還るその時までずっと、リードさせていただくよ」
精霊王は200年と寿命が決まっていて、けれどパートナーが誕生した場合は、パートナーの寿命に合わせてその『生』に幕を下ろすのだと教わりました。
そして――。寿命が半分以下に縮まってしまうことなのに、その際には、
『今の僕は、長さではなく濃さが大事なのだと分かっている。どうやって過ごすのかが重要なのだと、分かっているんだよ』
『だからね。一緒が嬉しいんだ』
と、笑みを浮かべてくださっていて。わたしは改めて、幸せ者だと感じました。
「ですので、お姫様。どうかわたくしめに、貴方の夫となる栄誉をお与えください」
「っ。それは、あの日お伝えした言葉のっ」
「一つ前にある、王子様の台詞だね。別れ際にタイトルを教えてもらっていたから、先代に頼んで手に入れていたんだよ」
『わたしを貴方のお嫁さんにしてください』
あの日わたしが口にしたもの。あれは本来お願いをするためのものではなく、返事として使用されたもの。オーレリアン様が仰られた王子様の言葉に対する、お返事なのです。
「あの言葉で申し込まれたから、僕もその言葉を交えようと思っていたんだ。……では、改めて――。お姫様。どうかわたくしめに、貴方の夫となる栄誉をお与えください」
優しい微笑みの中に、真面目さ、真摯さが含まれるようになり、今一度左右の手が差し出されます。
……十年間ずっとお会いしたくて、一度も忘れたことのなかった方。王子様がそう仰って、こうしてくださっているのですから。
答えは、決まっています。
「はいっ。わたしを貴方のお嫁さんにしてください。ずっと愛させてくださいっ。愛してくださいっ」
物語の言葉を口にしながらエンゲージリングに触れ、オリジナルの言葉を口にしながら左手に触れさせていただきました。
オーレリアン様、わたしの王子様。
あの頃から今日まで、今日からも、いつまでも。大好きです……!
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