私を利用するための婚約だと気付いたので、別れるまでチクチク攻撃することにしました

柚木ゆず

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第8話 二つの仕込みが、花となる エリック視点 (4)

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「おかしな点ばかりですわ。振り返ってみると、あの夜遅く帰ってきたのだって不自然。あんなにも唐突に異様なワガママを言い出すなんて、有り得ない。本当に、わたくしが本命ですの?」

 引き続き、俺への信頼がなくなってしまった目で……。リウはこちらを、鋭く睨みつける。

「あの女と関わっている間に愛が芽生えて、ずっと両方に都合のいい事を言っていた。何らかの切っ掛けで、一週間前からあの女に傾いてしまった。そうなんじゃないですの?」
「それは有り得ない! 何度も言っているように、今も昔も君以外は見えていないよ!」
「だったらなぜ、こんなにも高額なんですの? 合わせて300万ものものを、要望に応えて買っていますの?」
「だからっ! アイツが我が儘を言い出したんだよっ! あの時は――一週間前も予想外が続いて、本当にビックリしたんだっ! 何回も読みが外れて気が付いたら断れない状況になっていて、こうなってしまったんだよ!」

 操り人形の糸を手放したことが原因で、制御が出来なくなっていた。もう退くことはできなかったんだ。

「異様な我が儘を言い出す際は、必ず前兆があるとは限らない! 人間は十人十色で、色んな人がいるんだよっ!」
「……………………」
「君も、君の両親も、俺も、俺の両親もそうっ。全員好物や趣味が違っていて、みんな性格が違っている! これと同じなんだよっ! アイツは本当に、突然ああなってしまったんだよっっ‼」
「……………………」

 俺は、理路整然とした発言をしている。実際、何一つ嘘は言っていない。
 なのに、リウの表情は変わらない。本当のことを口にしているのに、信じてくれはしない……っ!

「っ。っっ! なぜ、なんだ……? なぜ、なんだよ……?」

 その思いが俺の足を無意識的に前へと動かし、気が付くと彼女の眼前で言葉を紡いでいた。

「リウ……。リウ……っっ。俺は、こんなにも君を愛しているのに……っ。どうして信じようとしてくれないんだっ!?」

 なぜなんだ!?
 俺の判断が余計に混乱させたのは分かっている! だけどそこには、君への配慮しかないんだ!!
 俺は今までずっとずっと、君に愛を持って接してきたんだよ!? それは記憶を振り返ってみれば分かるはずだっ!!
 なのになぜっ! なぜなんだ!? なぜそう決めつける!?

 愛する人の言葉は、無条件で信じられるものじゃないのか!?

 もしかしてっ! 君の方が俺を心から愛していなくって、何もかもが偽りに見えているんじゃないのか!? 濁って見えるのは、見ようとするその目が濁っているからじゃないのか!? そうなんだろう!?
 なあっ!! そうなんだろう!?

 おもわず感情が爆発してしまい、そんなことを思って。そして――。俺は無意識のうちに、その全て口に出してしまっていた。

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