9年ぶりに再会した幼馴染に「幸せに暮らしています」と伝えたら、突然怒り出しました

柚木ゆず

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プロローグ アリアン・ファザーナ視点

「痛み入ります」
「心より感謝申し上げます」
「アリアンさんとゾーズさん、お二人のお役に立てて何よりです。できればこのあとも御一緒させていただきたかったのですが、僕はこの辺りで失礼させていただきます」

 月を連想させる美しいブロンドと品のある中性的なお顔が相まって、月の女神アルテミスを思い浮かべる男性。ティトゥアン様は微苦笑を浮かべながら、先ほどまで乗せていただいていた馬車へと乗り込まれました。
 ティトゥアン様は3時間後の午後2時過ぎから、とある場所で人と会う約束をされていた。お忙しいにもかかかわらずウチが諸事情で午前中は馬車の用意ができないと知ると、わざわざわたしとお父さんを目的地まで運んでくださったんです。

「アリアンさんと沢山お話しできたおかげで、このあとも元気で動けそうです。素敵な時間をありがとうございました」
「わたしも、とても良い時間を過ごせました。ありがとうございました」
「次にお会いできるのは、明後日ですね。その時を楽しみにしています。ではまた」

 窓からお手を振ってくださるティトゥアン様に手を振り、馬車に向けてもう一度一礼したあと。お父さんと共に、目的地である街『ロズファーダル』へと入りました。

「お父さん、まずはどこを目指しますか?」
「うーん、そうだな……。今日は先に、肥料を受け取りに行こう」

 ウチは『ファザーナ農園』という200年以上の歴史がある農園を持っていて、この街にはお世話になっている方々がお店を構えています。
 肥料、農薬、シャベル。今日はこの3つを目的にロズファーダルを訪れていて、まずは肥料を取り扱っているザバードさんを訪ねました。

「いらっしゃいゾーズ。注文のものは、そこにある荷車に用意してあるよ。おまけも取っておいてくれ」
「いつも助かる」「いつも助かります」
「ファザーナ農園とは、長い付き合いだからね。昔からのお得意様にはサービスさせてもらうよ」

 こちらのお店が扱う肥料は質が非常によく、お父さんの前の前の前の代から取り引きをさせていただいているんです。ですので1袋多めにくださり、わたしはお金を支払いお礼を告げたあと、お店を出て次のお店へと移動を始めました。

「アリアン、荷車は私が引いていこう。代わっておくれ」
「駄目です。先月、腰を痛めたのを忘れたのですか?」
「もちろん、覚えているともさ。だがそれこそ、すでに治っているのを忘れたのか?」
「治ったのは2週間前で、まだ完全ではありませんよね? まだまだ無理はしてはいけません」
「しかしだなぁ。親が呑気に歩いて、子だけに引かせるのはなぁ」
「適材適所、ですよ。お父さんが完全に元気になったら力仕事は任せますから、今日は我慢してください」

 わたしは基本的に研究施設にいますが、土日は農園の作業を手伝っています。それなりに体力にも自信があるため腕まくりをして応え、そのまま残りの二軒を回りました。

「お疲れ様。そろそろ馬車が着くころだし、戻ろうか」
「あっという間に1時になっていたんですね。はい、戻りましょう」

 さっきわたし達が降りた場所にウチの馬車が来るのが、午後1時。ちょうどピッタリの時間になっていたので集合場所を目指し、

「園長、アリアンお嬢ちゃん、お疲れ様っス!」
「後ろがちゃんと直りましたんで、ドンドン乗せられますよ。積み込みは任せてください」
「助かるよ。どれ、空になることだし……」
「それも駄目です。荷車はわたしが戻しますからね?」

 こういったことでも、再発してしまうかもしれません。人差し指を使ってお父さんに×印を出したあと、わたしはザバードさんのお店へと向かい――


「あら!? もしかして貴方、アリアン!?」


 ――その途中で、9年ぶりに友達と再会することになるのでした。



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