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第3話 光と影 ソリーヌ視点(1)
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『アリアンっ。お外に行きましょうっ』
『はいソリーヌっ。今日は、何をしましょうか?』
『そうですわねぇ。押し花を作りましょう』
『押し花、いいですね。そうしましょうっ』
『アリアン、一緒に寝ましょうよ。今日は二人で眠りたいって思ってますの』
『賛成です。ソリ―ヌのベッドにお邪魔しますね』
わたくしにとって『アリアン』は血の繋がらない家族のような存在で、大切な存在だった。
――ずっと一緒にいたい――。
かつてのわたくしは確かに、そんな感情を抱いていた。
けれどソレはやがて消えてしまい、代わりにこんな感情が芽生えたのだった。
――憎たらしい――。
『アリアンお姉ちゃん、ソリーヌお姉ちゃん。お勉強教えて欲しいな』
『ねえアリアン、ソリーヌ。これってどうやればいいんだっけ?』
『わぁ~できたっ、ありがとう! アリアンお姉ちゃんとソリ―ヌお姉ちゃんのおかげだよ!』
『アリアン、ソリーヌ。ちょっと来てくれるかい?』
『手伝ってくれてありがとうね。アリアンもソリーヌも、本当に助かったよ』
『まぁ、アリアンちゃんソリーヌちゃん。また来てくれたのねっ』
『アリアンちゃんやソリーヌちゃんたちが遊びに来てくれるから、ここのみんなは元気でいられるんだよ』
孤児も。孤児院のスタッフからも。ボランティア先の老人ホームや病院の人間も。みんなそう。
どんな時でも、『アリアン』『ソリーヌ』の順。わたくしの名前が先に挙がることは稀で、圧倒的に少ない。
『アリアンお姉ちゃんの教え方、すっごく分かりやすいよ~』
『だよね。先生みたい~!』
『ソリーヌお姉ちゃんも、とっても分かりやすいよ~!』
『新しいリーダーは、アリアンにやってもらおうと思うの。お願いできるかしら?』
『アリアンがまとめてくれるおかげで、空いた時間に違うことができるようになったのよ。ありがとうね』
『ソリーヌも、とても助かっているわ。これからも頼りにさせてもらうわね?』
『あ、君がアリアンちゃんだね? 落ち込んでいた父を励ましてくれて、ありがとうございます。おかげで父は元気を取り戻せました』
『ふふ。ジョンさんったら、あれから毎日アリアンちゃんアリアンちゃんって言ってるんですよ』
『ソリーヌちゃん、この間はありがとうねぇ。押し花、大切にさせてもらっているよ』
孤児たちからの評判、評価。孤児院のスタッフからの評判、評価。ボランティア先の老人ホームや病院での評判、評価。
いつもどこでもわたくしよりもアリアンの方が好かれるし、慕われるし、褒められる。同じことをしていても――ううん。アリアンより孤児たちに親切にしてあげても、アリアンよりも掃除などをしてあげても、アリアンより世話をしてあげても、どれもがアリアン以下になってしまう。
そのせいでわたくしはいつでもどこでも、影に隠れた存在になってしまう。
――アリアンがいるせいで、自分は常に『2番目』になってしまっているんだ――。
そう気付いた時からアリアンは忌々しい敵となって、『どんな手を使ってでもアリアンより上になってやる』『空気を読まずにわたくしを悲しませ続ける罰として、アリアンも悲しませてやりたい』と思うようになった。引き続き仲の良いフリをして、復讐をする機会を探っていたのだった。
でも……。
しっかり目を光らせていても使えそうなものは全然見つからなくて、そのチャンスは一向にやってこなかった。だからもう、諦めかけていたのだけど――。ひょんなことから、絶好の機会が訪れるのだった。
『はいソリーヌっ。今日は、何をしましょうか?』
『そうですわねぇ。押し花を作りましょう』
『押し花、いいですね。そうしましょうっ』
『アリアン、一緒に寝ましょうよ。今日は二人で眠りたいって思ってますの』
『賛成です。ソリ―ヌのベッドにお邪魔しますね』
わたくしにとって『アリアン』は血の繋がらない家族のような存在で、大切な存在だった。
――ずっと一緒にいたい――。
かつてのわたくしは確かに、そんな感情を抱いていた。
けれどソレはやがて消えてしまい、代わりにこんな感情が芽生えたのだった。
――憎たらしい――。
『アリアンお姉ちゃん、ソリーヌお姉ちゃん。お勉強教えて欲しいな』
『ねえアリアン、ソリーヌ。これってどうやればいいんだっけ?』
『わぁ~できたっ、ありがとう! アリアンお姉ちゃんとソリ―ヌお姉ちゃんのおかげだよ!』
『アリアン、ソリーヌ。ちょっと来てくれるかい?』
『手伝ってくれてありがとうね。アリアンもソリーヌも、本当に助かったよ』
『まぁ、アリアンちゃんソリーヌちゃん。また来てくれたのねっ』
『アリアンちゃんやソリーヌちゃんたちが遊びに来てくれるから、ここのみんなは元気でいられるんだよ』
孤児も。孤児院のスタッフからも。ボランティア先の老人ホームや病院の人間も。みんなそう。
どんな時でも、『アリアン』『ソリーヌ』の順。わたくしの名前が先に挙がることは稀で、圧倒的に少ない。
『アリアンお姉ちゃんの教え方、すっごく分かりやすいよ~』
『だよね。先生みたい~!』
『ソリーヌお姉ちゃんも、とっても分かりやすいよ~!』
『新しいリーダーは、アリアンにやってもらおうと思うの。お願いできるかしら?』
『アリアンがまとめてくれるおかげで、空いた時間に違うことができるようになったのよ。ありがとうね』
『ソリーヌも、とても助かっているわ。これからも頼りにさせてもらうわね?』
『あ、君がアリアンちゃんだね? 落ち込んでいた父を励ましてくれて、ありがとうございます。おかげで父は元気を取り戻せました』
『ふふ。ジョンさんったら、あれから毎日アリアンちゃんアリアンちゃんって言ってるんですよ』
『ソリーヌちゃん、この間はありがとうねぇ。押し花、大切にさせてもらっているよ』
孤児たちからの評判、評価。孤児院のスタッフからの評判、評価。ボランティア先の老人ホームや病院での評判、評価。
いつもどこでもわたくしよりもアリアンの方が好かれるし、慕われるし、褒められる。同じことをしていても――ううん。アリアンより孤児たちに親切にしてあげても、アリアンよりも掃除などをしてあげても、アリアンより世話をしてあげても、どれもがアリアン以下になってしまう。
そのせいでわたくしはいつでもどこでも、影に隠れた存在になってしまう。
――アリアンがいるせいで、自分は常に『2番目』になってしまっているんだ――。
そう気付いた時からアリアンは忌々しい敵となって、『どんな手を使ってでもアリアンより上になってやる』『空気を読まずにわたくしを悲しませ続ける罰として、アリアンも悲しませてやりたい』と思うようになった。引き続き仲の良いフリをして、復讐をする機会を探っていたのだった。
でも……。
しっかり目を光らせていても使えそうなものは全然見つからなくて、そのチャンスは一向にやってこなかった。だからもう、諦めかけていたのだけど――。ひょんなことから、絶好の機会が訪れるのだった。
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