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エピローグ その後のアリアン アリアン視点(1)
「アリアンさん、次の休みはどこかに出かけませんか?」
ラテア研究所の敷地内にある、スタッフ用に設けられたリストランテ。そちらでティトゥアン様と一緒に昼食後のコーヒーを飲んでいたら、対面で優しい微笑みが浮かびました。
「今週に入ってからお互い忙しく、週末にリフレッシュした方がいいと思いまして。いかがでしょうか?」
「素敵です。是非、お願いします」((ティトゥアン様。お気遣い感謝します))
周りにご迷惑をかけてしまいますので、『ロズファーダル』で起きた出来事は考えないようにしようとしました。
ですが……。血の繋がらない家族との間であんなことがあったから、そうしようとしても独りでにあれこれ浮かんで来てしまって……。ティトゥアン様はそんなわたしを、さり気なく元気づけてくれようとしてくださっています。
声に出してしまうと逆に失礼になってしまいますので、今回は心の中でお礼をさせていただきました。
「我が儘を受け入れてくださり、ありがとうございます。アリアンさんは今、行ってみたい場所はありますか?」
「そうですね……。昨日所長さんがチラッと仰っていた、『ザーロルックの噴水』が気になっていました」
去年の初めに落雷により破損してしまい、一年かけて行われた修理が先日ようやく終わりを迎えました。会議で出張した際に訪れたらしく、素晴らしい出来だと感嘆していたんです。
「僕も同じく、所長のお話を聞いて気になっていました。決まり、ですね」
ティトゥアン様は嬉しそうに頷かれ、手帳を取り出して予定を書き込みました。
「あの辺りには他にも観光スポットはありますし、父の知人が経営する美味しいリストランテもあります。その日は慌ただしくなりそうですね」
「はい。慌ただしくなりそうです」
本当に、ありがとうございます。
いつも、心まで護っていただける。わたしは幸せ者です。
「出発時刻などは、あとですり合わせましょう。ああ、そうだ。他にもしたいこと、行きたい場所が見つかりましたら、遠慮なく仰ってくださいね」
「承知いたしました。ティトゥアン様も、ぜひ――あら? 所長さん……?」
噂をすれば、なのでしょうか。お話に出ていた方がリストランテにいらっしゃって、「アリアンくんはいるかね?」とキョロキョロし始めました。
「は、はい、こちらにおります!」
「おおよかった。先ほどお父上がいらっしゃっていたようでね、こちらを託されているのだよ」
所長さんが手に持っているのは、清潔な印象を受ける薄いブルーの封筒――お手紙。研究所は家族であっても建物内には入れないため、受け付けに頼んだのですね。
「洗浄などは済ませてある。この場で開封してもらっても構わないよ」
「こちらまでいらっしゃるだなんて、一秒でも早く読んで欲しいみたいですね?」
「そう、みたいですね。なんなのでしょうか――ぁ!」
お父さんが急いだ――急いでくれた理由が、分かりました。
「? アリシアさん?」
「…………この手紙は……。ソリ―ヌからの手紙です……!!」
ラテア研究所の敷地内にある、スタッフ用に設けられたリストランテ。そちらでティトゥアン様と一緒に昼食後のコーヒーを飲んでいたら、対面で優しい微笑みが浮かびました。
「今週に入ってからお互い忙しく、週末にリフレッシュした方がいいと思いまして。いかがでしょうか?」
「素敵です。是非、お願いします」((ティトゥアン様。お気遣い感謝します))
周りにご迷惑をかけてしまいますので、『ロズファーダル』で起きた出来事は考えないようにしようとしました。
ですが……。血の繋がらない家族との間であんなことがあったから、そうしようとしても独りでにあれこれ浮かんで来てしまって……。ティトゥアン様はそんなわたしを、さり気なく元気づけてくれようとしてくださっています。
声に出してしまうと逆に失礼になってしまいますので、今回は心の中でお礼をさせていただきました。
「我が儘を受け入れてくださり、ありがとうございます。アリアンさんは今、行ってみたい場所はありますか?」
「そうですね……。昨日所長さんがチラッと仰っていた、『ザーロルックの噴水』が気になっていました」
去年の初めに落雷により破損してしまい、一年かけて行われた修理が先日ようやく終わりを迎えました。会議で出張した際に訪れたらしく、素晴らしい出来だと感嘆していたんです。
「僕も同じく、所長のお話を聞いて気になっていました。決まり、ですね」
ティトゥアン様は嬉しそうに頷かれ、手帳を取り出して予定を書き込みました。
「あの辺りには他にも観光スポットはありますし、父の知人が経営する美味しいリストランテもあります。その日は慌ただしくなりそうですね」
「はい。慌ただしくなりそうです」
本当に、ありがとうございます。
いつも、心まで護っていただける。わたしは幸せ者です。
「出発時刻などは、あとですり合わせましょう。ああ、そうだ。他にもしたいこと、行きたい場所が見つかりましたら、遠慮なく仰ってくださいね」
「承知いたしました。ティトゥアン様も、ぜひ――あら? 所長さん……?」
噂をすれば、なのでしょうか。お話に出ていた方がリストランテにいらっしゃって、「アリアンくんはいるかね?」とキョロキョロし始めました。
「は、はい、こちらにおります!」
「おおよかった。先ほどお父上がいらっしゃっていたようでね、こちらを託されているのだよ」
所長さんが手に持っているのは、清潔な印象を受ける薄いブルーの封筒――お手紙。研究所は家族であっても建物内には入れないため、受け付けに頼んだのですね。
「洗浄などは済ませてある。この場で開封してもらっても構わないよ」
「こちらまでいらっしゃるだなんて、一秒でも早く読んで欲しいみたいですね?」
「そう、みたいですね。なんなのでしょうか――ぁ!」
お父さんが急いだ――急いでくれた理由が、分かりました。
「? アリシアさん?」
「…………この手紙は……。ソリ―ヌからの手紙です……!!」
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