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IF やがてニナ達は、1年間の真実を知ってしまう 俯瞰視点(6)

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「「「えっ!? 出版ができない!?」」」

 サンフェル邸での出来事から、およそ2時間後。スアフ邸内に、3人の大声が響き渡りました。

「…………は、ははは。ははははははは。ご、ゴスハル殿、タチの悪いジョークはやめていただきたい。心臓が永久に止まってしまうかと思いましたぞ」
「……いえ、これはジョークではありません。出版の可能性は、0。すでにすべてのラインは止まり、この件は白紙となっております」

 テーブルを挟んで向かいのチェアに座るマーリックは、淡々と首を左右に振ります。
 暴露本出版チームも、すでに解散。各スタッフはもう、それぞれが別の仕事を行っていました。

「な、なぜだ……!? 白紙だなんてっっ、理解ができない……!!」
「メリットしかない話なのに、どうして……!? まっ、まさか! 圧力を受けたんですのっ!? リュカからっ、ボヌール商会から、圧力を受けたんですのっ!?」
「今のアイツは、権力者だもん! ママ、パパっ、きっとそうだよ!!」
「いいえ、そうではありません。ご存じだとは思いますが――。『内容が全て事実であるのならば出版可能』、それがこの国のルールです。圧力による出版中止は過去にはなく、今回も違っております」

 この法は、『暴露されて困るような事はするな』という抑止力。仮にそういった行為があった場合は、王族貴族といった地位は関係なく、圧力をかけた側が罪に問われるのです。

「じゃっ、じゃあどうしてなんですか!? あたしが伝えたコトは事実で人形と直筆の紙があります! それこそ内容が全て事実なのにっ、どうして中止になるんですか!?」
「……白紙撤回の原因は、そこなのです。皆様からいただいたものは、出版の条件を満たしていなかった。全てが事実ではなかったため、こういった判断をせざるをえなかったのですよ」
「「「ぇ……? え……?」」」

 一瞬にして、3人は混乱に陥りました。
 ニナはその身で経験しているのに、違う。マーリックが言っている意味が、微塵も理解できませんでした。





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