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第6話 それは、罠 ガブリエル視点(1)
「頼んだわよ、ラッカーナ」
「お任せください」
太陽がまだ地平線より下にある、午前3時前。寝静まっている白百合棟の一室――ポルミ・ミジュールの部屋の中で、醜悪な計画が動き出した。
((さあ、始まりだ。楽しい楽しい墓穴堀りがな))
「お嬢様、行ってまいります」
ポルミ・ミジュールの侍女、ラッカーナ。彼女は音を立てず部屋を出て、同じく音を立てずに廊下と階段を進んでいく。
((正面には守衛がいる。どうやって抜けるつもりだ――ああ、そうやるのか))
1階にある共同使用のトイレに入り、奥にある窓を開ける。侍女ラッカーナはそこから器用に外へと出て、静寂が包む道を小走りで進む。
((そうそう。このラホライゾ学院は周囲を厳重に警備してる影響で、内側の警備は比較的緩いんだよな))
不審な存在は決して入り込めないが故の、まあ言ってしまえば慢心であり怠慢。令嬢令息が集まってるんだからもっと目を光らせろ――と俺としては思わずにはいられないが、どうも創立以来1度も事件は起きていないらしい。
郷に入っては郷に従え的なもので、この国ではそれで問題なく成立しているのだから、余計なことは言わないでおくか。
((――なんて言っているうちに、見えてきたな))
中庭の前で屹立している、縦幅1メートルほどで横幅は2メートルくらいある掲示板。くだんの第3掲示板の御登場だ。
「………………」
((クールなお顔をして進んでいるラッカーナさんは、知らないよなあ。このあと、何が待っているのか))
きっと、前回同様つつがなく進むと思っているんだろ?
ザンネン。そいつは大外れだ。
今夜お前を待っているのは、成功ではなくて――
「アナタ! そこで何をしているの!?」
――赤縁の眼鏡をかけた、身長165センチほどの長背の女性。
侍女ラッカーナが掲示板に紙を貼り付けていると、茂みの向こうからこの学院教師であるローナが現れたのだった。
「なっ!? なっ!?」
((こんな時間に人がいて、驚いてるよな? 彼女はここで、心霊現象の発生を待っていたんだよ))
教師ローナが読んでいたのは心霊現象に関する本で、一目でその手のものごとに興味津々なのだと分かった。そこで――
『あら? 手紙……? ええとなになに………………。え!? 怪しい光!?』
――オセアンに頼んで、『午前3時過ぎに怪しい光を見た』という情報を教師ローナに吹き込んだのだ。
((自慢できることじゃないが。一応長い時を生きてるから、本を読んでいた際の一挙手一投足で分かるんだよな))
彼女はそんな情報を得たら、自分の目で確かめたくて仕方がなくなる人間だと。
その読みは、もちろん的中で――怪しい光を見るために、ずっと身を潜めていたのだ。
「お任せください」
太陽がまだ地平線より下にある、午前3時前。寝静まっている白百合棟の一室――ポルミ・ミジュールの部屋の中で、醜悪な計画が動き出した。
((さあ、始まりだ。楽しい楽しい墓穴堀りがな))
「お嬢様、行ってまいります」
ポルミ・ミジュールの侍女、ラッカーナ。彼女は音を立てず部屋を出て、同じく音を立てずに廊下と階段を進んでいく。
((正面には守衛がいる。どうやって抜けるつもりだ――ああ、そうやるのか))
1階にある共同使用のトイレに入り、奥にある窓を開ける。侍女ラッカーナはそこから器用に外へと出て、静寂が包む道を小走りで進む。
((そうそう。このラホライゾ学院は周囲を厳重に警備してる影響で、内側の警備は比較的緩いんだよな))
不審な存在は決して入り込めないが故の、まあ言ってしまえば慢心であり怠慢。令嬢令息が集まってるんだからもっと目を光らせろ――と俺としては思わずにはいられないが、どうも創立以来1度も事件は起きていないらしい。
郷に入っては郷に従え的なもので、この国ではそれで問題なく成立しているのだから、余計なことは言わないでおくか。
((――なんて言っているうちに、見えてきたな))
中庭の前で屹立している、縦幅1メートルほどで横幅は2メートルくらいある掲示板。くだんの第3掲示板の御登場だ。
「………………」
((クールなお顔をして進んでいるラッカーナさんは、知らないよなあ。このあと、何が待っているのか))
きっと、前回同様つつがなく進むと思っているんだろ?
ザンネン。そいつは大外れだ。
今夜お前を待っているのは、成功ではなくて――
「アナタ! そこで何をしているの!?」
――赤縁の眼鏡をかけた、身長165センチほどの長背の女性。
侍女ラッカーナが掲示板に紙を貼り付けていると、茂みの向こうからこの学院教師であるローナが現れたのだった。
「なっ!? なっ!?」
((こんな時間に人がいて、驚いてるよな? 彼女はここで、心霊現象の発生を待っていたんだよ))
教師ローナが読んでいたのは心霊現象に関する本で、一目でその手のものごとに興味津々なのだと分かった。そこで――
『あら? 手紙……? ええとなになに………………。え!? 怪しい光!?』
――オセアンに頼んで、『午前3時過ぎに怪しい光を見た』という情報を教師ローナに吹き込んだのだ。
((自慢できることじゃないが。一応長い時を生きてるから、本を読んでいた際の一挙手一投足で分かるんだよな))
彼女はそんな情報を得たら、自分の目で確かめたくて仕方がなくなる人間だと。
その読みは、もちろん的中で――怪しい光を見るために、ずっと身を潜めていたのだ。
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