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第3話 告白 ミシュリーヌ視点
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「人質になった侍女への想い。もしも自分たちが逃げ出した場合への考え方。祭壇を囲んでいた者達への態度、罪悪感に苛まれる者達への言葉。……恐ろしい『死』を実感しても、微塵も変わらなかった言動。そんな君の心に惹かれてしまったんだ」
信じれないことを仰られたあと。竜神様はわたしの瞳を真っすぐ見つめ、柔らかに口元を緩められました。
「普段そういったことを口にする者は、これまでにも居た。だが自身の死が目前に迫っている状況で、実際に貫き通した者は居なかった。……そんな人と出会ってしまったのだ。この感情が芽生えるのは当然だった」
「そ、そうなのですね。こ、光栄でございます」
「だから俺は可能ならばミシュリーヌと共に人生を歩んでいきたいと考えていて、君が喜ぶことは何でもしたいと思っている。とはいえだ――」
そう仰りながら、竜神様は微苦笑を浮かべられた。
「俺達はさっき出会ったばかり、会って間もない者に好意を向けられても迷惑だろう。故に、返事は不要だ。『目の前にいる男は自分に好意を抱いている』、そう認識してもらえるだけで充分だ」
「竜神、さま……?」
「転移した直後に、更に戸惑わせてすまなかった。……これから君は、この城で大事な客人として暮らしてゆくことになる。この城の主である俺とは、毎日顔を合わせることになる。そんな相手が本心を隠しながら接するのは無礼の極みだと思ったのでな、こうして打ち明けさせてもらったのだ」
……そうなんですね……。
竜神様はわたしのために、言及をしてくださっていました。
「言わずもがな、気を遣う必要はない。良い答えをもらえないからと言って、待遇を買えるつもりはないので安心してくれ」
無理やり縛るつもりはなく、今後良い相手が見つかったら応援もする――。俺がこちらの世界を離れられる時は、必ず侍女のもとへ連れて行く――。
更にはそういった部分にまで、わざわざ触れてくださりました。
「今君に伝えたいことは、以上だな。ではこのお話はここで区切り、今日から君の自室となる場所へと案内しよう。着いてきてくれるか?」
「も、もちろんでございます。で、ですがその前に、おひとつ伺ってもよろしいでしょうか?」
「ああ、構わない。なんだ?」
「その……。竜神様は、どうしてそこまでしてくださるのですか……?」
わたしに対すること、だけではありません。
異世界の国の平和を考え動いてくださっていて、そのために必要な生贄なのに、自由を奪ってしまったと何度も謝罪のお言葉をくださる。そのお詫びにと、出来る限り快適な毎日を提供するとまで仰ってくださっています。
なぜわざわざ、そんなにも親切にしてくださるのでしょうか……?
「もしかして……。わたし達の国とこちらの世界は、一蓮托生なのでしょうか……?」
「いいや、あちらの国とこの世界は完全に独立している。そちらの国がどうなろうとも、この世界に影響は一切ない」
「でしたら……。なぜ……?」
「目の前で困っている者がいたら、手を差し伸べるのは当たり前だろう? 窮地に陥っている場所があると知り、救える手段を持っているから、救おうとしているのだ。歴代の竜神も俺もな」
本当に、サラッと。当たり前のように仰られました。
「そしてその行動は、こちらが勝手にやっていること。その結果こうして君の人生を変えてしまった――今回は偶々ある程度よい方向に転がったが、大抵の場合は悪い方向に転がってしまうのでな。新たな幸せを得る手伝いをさせてもらいたいと思っているだけだ」
「……だけ……。なの、ですね」
「ああ、そうだ。ミシュリーヌ、他に聞きたいことは?」
「い、いえ。ございません」
「そうか。では、案内を始めよう」
引き続き、『自己満足感』などはまったくありません。わたしが呼吸をするかのように振る舞われる竜神様に導かれ、わたしは歩いてゆき――
信じれないことを仰られたあと。竜神様はわたしの瞳を真っすぐ見つめ、柔らかに口元を緩められました。
「普段そういったことを口にする者は、これまでにも居た。だが自身の死が目前に迫っている状況で、実際に貫き通した者は居なかった。……そんな人と出会ってしまったのだ。この感情が芽生えるのは当然だった」
「そ、そうなのですね。こ、光栄でございます」
「だから俺は可能ならばミシュリーヌと共に人生を歩んでいきたいと考えていて、君が喜ぶことは何でもしたいと思っている。とはいえだ――」
そう仰りながら、竜神様は微苦笑を浮かべられた。
「俺達はさっき出会ったばかり、会って間もない者に好意を向けられても迷惑だろう。故に、返事は不要だ。『目の前にいる男は自分に好意を抱いている』、そう認識してもらえるだけで充分だ」
「竜神、さま……?」
「転移した直後に、更に戸惑わせてすまなかった。……これから君は、この城で大事な客人として暮らしてゆくことになる。この城の主である俺とは、毎日顔を合わせることになる。そんな相手が本心を隠しながら接するのは無礼の極みだと思ったのでな、こうして打ち明けさせてもらったのだ」
……そうなんですね……。
竜神様はわたしのために、言及をしてくださっていました。
「言わずもがな、気を遣う必要はない。良い答えをもらえないからと言って、待遇を買えるつもりはないので安心してくれ」
無理やり縛るつもりはなく、今後良い相手が見つかったら応援もする――。俺がこちらの世界を離れられる時は、必ず侍女のもとへ連れて行く――。
更にはそういった部分にまで、わざわざ触れてくださりました。
「今君に伝えたいことは、以上だな。ではこのお話はここで区切り、今日から君の自室となる場所へと案内しよう。着いてきてくれるか?」
「も、もちろんでございます。で、ですがその前に、おひとつ伺ってもよろしいでしょうか?」
「ああ、構わない。なんだ?」
「その……。竜神様は、どうしてそこまでしてくださるのですか……?」
わたしに対すること、だけではありません。
異世界の国の平和を考え動いてくださっていて、そのために必要な生贄なのに、自由を奪ってしまったと何度も謝罪のお言葉をくださる。そのお詫びにと、出来る限り快適な毎日を提供するとまで仰ってくださっています。
なぜわざわざ、そんなにも親切にしてくださるのでしょうか……?
「もしかして……。わたし達の国とこちらの世界は、一蓮托生なのでしょうか……?」
「いいや、あちらの国とこの世界は完全に独立している。そちらの国がどうなろうとも、この世界に影響は一切ない」
「でしたら……。なぜ……?」
「目の前で困っている者がいたら、手を差し伸べるのは当たり前だろう? 窮地に陥っている場所があると知り、救える手段を持っているから、救おうとしているのだ。歴代の竜神も俺もな」
本当に、サラッと。当たり前のように仰られました。
「そしてその行動は、こちらが勝手にやっていること。その結果こうして君の人生を変えてしまった――今回は偶々ある程度よい方向に転がったが、大抵の場合は悪い方向に転がってしまうのでな。新たな幸せを得る手伝いをさせてもらいたいと思っているだけだ」
「……だけ……。なの、ですね」
「ああ、そうだ。ミシュリーヌ、他に聞きたいことは?」
「い、いえ。ございません」
「そうか。では、案内を始めよう」
引き続き、『自己満足感』などはまったくありません。わたしが呼吸をするかのように振る舞われる竜神様に導かれ、わたしは歩いてゆき――
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