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第4話 一週間後~何も知らない令嬢は~ フロリアーヌ視点(1)

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((あっちも好きだけど――。これはこれで悪くないわね))

 ネズザルク侯爵家所有の建物で開かれている、商会関係者が集うパーティー。わたしは広くて豪華な会場を眺め回し、密かに口元を緩めていた。

『フロリアーヌ様、ごきげんよう。今日もお綺麗ですわねぇ』

『フロリアーヌ様がいらっしゃる場所は、一目で分かりますわ。なぜならば、その場所が華やぐんですもの』

 リヴァザード伯爵令嬢アリア様。アンファレア侯爵令嬢ニコル様。今まではご機嫌を取っていた相手がご機嫌を取ってくるんだもの。
 こういうことは何度経験しても楽しくて、自然と顔がほころんでしまう。

((羨ましがったり悔しがったりする姿を見るのも愉快だけど、こっちもいいわね。あぁ楽しい))

 だからわたしは会場を歩き回ってペコペコさせ、それを20分くらい味わったら一旦会場の前方へと引き返す。
 詳しいことはよく分からないんだけど、ジャック様が『午後7時になったらこの場所で待機していてもらいたい』と仰っていた。なので指定された場所へと移動し、ジャック様の姿をキョロキョロ探す。

((そういえば少し前に会場を出てから、全然戻ってこないわね。どうされたのかしら?))

 あの方はこういう時、最初から最後までずっと会場にいる。こんなことは初めてで、だから首を傾げていると――あ、お戻りになられた。

((こういうものは、ひとりで考えても答えなんて出ないわ。あとで伺いましょ))

 本当はすぐ確認してみたいけど、今はそれよりも気になることがあるから我慢。『待機をお願いした理由はなに?』を知るため、扉を潜ったジャック様が近づいてくるのを待って――

「え!?」」

 ――待っていると、おもわず大きな声が出てしまう。
 なぜなら……。ジャック様に続いて、1人…………じゃない。ぞろぞろと、合計16人もの・・・・・・女が会場に現れたのだから。

((ミレーユ様や、ブリジット様がいる……!? どうして……あの人達が、ここにいるの……!?))

 このパーティーに参加できるのは、商会に深く関わっている力のある人だけ。あの人達は地位もコネクションもない大したことのない人間で、全員が場違なのに……。なぜこの場にいるの……!?
 そもそもどうして、ジャック様が招き入れているの……!?

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