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第12話 その後・その1~ジャック&リュカside~ 俯瞰視点

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「……………………」
「……………………」

 有力侯爵家と商会のトップが突如変わった日から、一か月後。そんな出来事があった隣の国では、二人の男が力なく道を歩いていました。
 彼らの名前は、ジャックとリュカ。かつてその有力侯爵家の当主と次期当主であり、商会の会頭と次期会頭だった人間です。

 ――住居を失った二人は、あのあと新たな拠点を探し始めました――。

 しかしながら悪名が轟いてしまっていたため国内で居続けることは難しく、すぐ隣国への移動を決意します。とはいえ辻馬車を利用する余裕すらないため、移動は徒歩。なんと野宿をしながら25日かけて越境していたのです。
 そして2人は更に4日を費やし、日払いの仕事が多くあると評判の街――自分達が住みやすい街へと向かい、まずは残っていた手切れ金を使って賃貸型の住居を確保。その後あちこち動き回って職場を見つけ、今朝から親子で働くことになっているのです。

「………………侯爵様と会頭様が、肉体労働だなんて……。悪夢だ……」
「………………動かす側だったのに、動かされる側になるだなんて……。最悪だ……」

 一瞬にしてすべてを失った絶望と、今日まで休みなく動き続けたことによる疲労。その二つによって二人はボロボロになり、けれど働かないと、野垂れ死にしてしまいます。
 なのでジャックとリュカは屍のように見慣れない道を歩き、労働現場を目指します。

「…………悪夢だ……」
「…………最悪だ……」
「………………悪夢だ……」
「………………最悪だ……」
「……………………時間を、戻したい……」
「……………………これは、夢で……。途中で目が覚める、ことはないのか……?」

 いくら嘆いても状況は変わらずことはなく、ジャックとリュカは8分後に目的地に到着してしまいました。

「………………はぁ……」
「………………はあ……」

 ですので二人は弱弱しくため息を吐き、作業着に着替えるべく建物の扉を弱弱しく開け――ようとした、その時でした。そんなジャックとリュカの表情が、激変することになります。
 なぜならば――

「ジャック!?」
「それに、お前はリュカ!?」

 ――右方向から、かつての婚約者フロリアーヌとその父マイクが現れたのですから。

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