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プロローグ
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「不本意だが、罪を犯したのだから仕方がない。……リーズ・ライヤル。君との婚約を破棄する」
王太子のフィルマン・オズナウ殿下と婚約してから、およそ二か月後。私は突然無実の罪を理由に婚約破棄をされ、その後投獄されることになった。
罪状は、同じく伯爵家の令嬢であるマリー・レーヴァに怪我を負わせた、というもの。
学舎で同級生の彼女は、学内で一二を争う美貌を持つと評判の淑女。以前からその美しさに嫉妬していた私が、マリーを階段から突き落として全治2か月の大怪我をさせたらしい。
「フィルマン様っ! 私は彼女に嫉妬などしていませんし、そもそも他者に暴力を振るう真似など致しませんっ。それは何かの間違いですっ」
「被害者本人がそう言われたと証言している上に、なによりその一部始終を5人の生徒が見ていた。……マリー・レーヴァの言葉だけなら信用できないが、彼女と接点がなかった生徒が5人も目撃している。言い訳は通用しないぞ」
「殿下っ、その5人は嘘を吐いてるんですっ。もう一度その人達とマリーさんを調べてみてくださいっ。そうすれば――」
「そうしても無駄よ、リーズ。だって法螺だという事は、フィルマン殿下もご存じなんですもの」
不意に王太子の私室に現れた、気品に満ちた金髪の少女が――マリー・レーヴァが、ツリ目の瞳をニンと細めた。
数時間に見掛けた時は、車椅子だったのに……。今は、自分の足で立っている。
「リーズ。このお話は、全部が捏造なんですのよ」
「え……? ぇ……?」
「殿下はあたしに心変わりをして、アンタの存在が邪魔になった。だから世間体などへの悪影響が出ない形で破棄をできるよう、罪人にして牢屋に押し込んでおくんですの」
こうして私との関係を解消し、事後のフォローという名目で二人は関係を作る。そうして暫く仲を深めたあと――仲を深めるフリをしたあと婚約を発表し、フィルマン殿下とマリーは結ばれる。
これが二人の作戦で、お父様とお母様が懸命に抗ってくれたものの、手回しはとっくに済んでいたため効果はなし。私は家族の目の前で連行され、薄暗くて汚い牢屋に入れられてしまった。
「…………なんで、こんな目に遭わないといけないんだろ……。あの時に、戻りたい……」
牢屋の奥で蹲っている私は、ポツリと呟く。
舞踏会で殿下に声をかけられたのが、全ての始まり。あの時とても落ち込んでいた私を優しく励ましてくれて、その後『俺には君しか見えないんだ』と熱心に求められたのが切っ掛け。
あのタイミングで、声をかけられなかったら……。
あの時、応じていなかったら……。
あの人の性格を、ちゃんと見抜けていたら……。
こんな事にはなっていないのに。
頭の中で後悔が渦巻いて、それが原因で独りでに涙が出てくる。
「こんなの、嫌……。嫌だよ……」
悲しくって、悔しくって。
涙が溢れて止まらない。
「お願い……。誰か、助けて……。ここから、出して……」
何を言っても叶わないのは、分かってる。返事をしてくれる人なんていないと、分かってる。
でも、言わずにはいられなくって……。私は何度も何度も繰り返して、
「ごめん、待たせてしまったね。僕が助けて、ここから出してあげるよ」
不意に――。優しく温かい声が、返ってきたのでした。
王太子のフィルマン・オズナウ殿下と婚約してから、およそ二か月後。私は突然無実の罪を理由に婚約破棄をされ、その後投獄されることになった。
罪状は、同じく伯爵家の令嬢であるマリー・レーヴァに怪我を負わせた、というもの。
学舎で同級生の彼女は、学内で一二を争う美貌を持つと評判の淑女。以前からその美しさに嫉妬していた私が、マリーを階段から突き落として全治2か月の大怪我をさせたらしい。
「フィルマン様っ! 私は彼女に嫉妬などしていませんし、そもそも他者に暴力を振るう真似など致しませんっ。それは何かの間違いですっ」
「被害者本人がそう言われたと証言している上に、なによりその一部始終を5人の生徒が見ていた。……マリー・レーヴァの言葉だけなら信用できないが、彼女と接点がなかった生徒が5人も目撃している。言い訳は通用しないぞ」
「殿下っ、その5人は嘘を吐いてるんですっ。もう一度その人達とマリーさんを調べてみてくださいっ。そうすれば――」
「そうしても無駄よ、リーズ。だって法螺だという事は、フィルマン殿下もご存じなんですもの」
不意に王太子の私室に現れた、気品に満ちた金髪の少女が――マリー・レーヴァが、ツリ目の瞳をニンと細めた。
数時間に見掛けた時は、車椅子だったのに……。今は、自分の足で立っている。
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「え……? ぇ……?」
「殿下はあたしに心変わりをして、アンタの存在が邪魔になった。だから世間体などへの悪影響が出ない形で破棄をできるよう、罪人にして牢屋に押し込んでおくんですの」
こうして私との関係を解消し、事後のフォローという名目で二人は関係を作る。そうして暫く仲を深めたあと――仲を深めるフリをしたあと婚約を発表し、フィルマン殿下とマリーは結ばれる。
これが二人の作戦で、お父様とお母様が懸命に抗ってくれたものの、手回しはとっくに済んでいたため効果はなし。私は家族の目の前で連行され、薄暗くて汚い牢屋に入れられてしまった。
「…………なんで、こんな目に遭わないといけないんだろ……。あの時に、戻りたい……」
牢屋の奥で蹲っている私は、ポツリと呟く。
舞踏会で殿下に声をかけられたのが、全ての始まり。あの時とても落ち込んでいた私を優しく励ましてくれて、その後『俺には君しか見えないんだ』と熱心に求められたのが切っ掛け。
あのタイミングで、声をかけられなかったら……。
あの時、応じていなかったら……。
あの人の性格を、ちゃんと見抜けていたら……。
こんな事にはなっていないのに。
頭の中で後悔が渦巻いて、それが原因で独りでに涙が出てくる。
「こんなの、嫌……。嫌だよ……」
悲しくって、悔しくって。
涙が溢れて止まらない。
「お願い……。誰か、助けて……。ここから、出して……」
何を言っても叶わないのは、分かってる。返事をしてくれる人なんていないと、分かってる。
でも、言わずにはいられなくって……。私は何度も何度も繰り返して、
「ごめん、待たせてしまったね。僕が助けて、ここから出してあげるよ」
不意に――。優しく温かい声が、返ってきたのでした。
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