理不尽な婚約破棄をされた私を助けてくれた兄様は、隣国の王太子でした

柚木ゆず

文字の大きさ
14 / 37

4話(3)

しおりを挟む
「おや? 全員バラバラで、倒れている姿勢すらも違っていますね。……ギュータス殿、フィルマン殿。貴方がたはどのような理屈で、この証言から罪の断定へと至ったのでしょうか?」
「「…………………」」

 兄様の鋭い目線を受けても、フィルマン達は何も答えられない。どちらも口をモゴモゴさせて、あたふたあたふた。顔中に玉の汗を浮かべ、必死に言い訳を探そうとしている。

「こ、これは、ですな……。う、うーむ……。これは……。その……」
「でぃっ、ディオン殿の――他国の王太子の御前故に心身が強張り、彼女達の記憶が混乱しているようですっ。先程お見せした報告書では、五人の証言は仔細一致していましたから!」
「……フィルマン殿の、仰る通りです。あそこには確かに、そうありましたね」
「でっ、でしょうっ? したがって最後の質問は――」
「とはいえ。あそこに体勢などの事細かな証言はありませんでしたし、そもそもですよ。委縮していたとしても、目視している景色をここまで間違えるとは思いません」

 兄様の言う通り。こんなにも差異があるのはおかしい。

「よって自分は、彼女達に疑念を持っています。……そこでこの『疑』を突き詰めるために、これからマリー・レーヴァ――被害者となっている彼女のもとに向かい、直接お話を伺いたいと思います」
「い、いや、それは……っ。それは、ちょっと……」
「ギュータス国王。何か不都合がおありですか?」
「そ、その……。もう、夜が更けております……。ディオン殿のお身体にも障りますし――」
「貴国への移動の際に、睡眠は摂っております。ご心配痛み入ります」

 国王の提案(妨害)は、あっさり棄却される。

「でぃっ、ディオン殿っ。マリー・レーヴァは現在、心的外傷後ストレスと呼ばれる症状で苦しんでおります! 彼女の心身の為にも、どうか時間を置いて――」
「貴方が先述された報告書の中に診断書がありましたが、そこにそんな情報はありませんでした。それは勘違いでしょう」

 フィルマンの提案(妨害)も、あっさり棄却される。
 その隙に何かしようと企んでるんだろうけど、兄様はお見通し。手を打ち鳴らして控えていた従者ノンルさんを呼び出し、出立の準備を整え始めた。

「フィルマン殿。他国の王族のみで押しかけてしまうと、それこそ委縮してしまうでしょう。ご面倒と重々承知ですが、ご同行をお願いできますでしょうか?」
「お、俺ですか? …………………」
「フィルマン殿? ご用事でもありましたか?」
「いっ、いやっ。その通りですね! 案内も兼ねてお供致しましょう……っ」

 こうして私達はマリーの邸宅に赴くことになり、兄様と私は敢えて。ノンルさんと共に、一足先に部屋を出たのでした。


   〇〇〇


「貴様らのせいで、状況が悪化したじゃないか……っ。この落とし前は、あとできっちりつけてもらうからな……!!」

 ディオン達が部屋を出た直後。フィルマンの理不尽な怒りが爆発し、五人の少女は震え上がりました。

「そんな……っ。殿下っ、お許しを……っ」
「わっ、わたくし達は、指示された事はちゃんとやりましたわっ」
「こんなの、予想外ですっ。打ち合わせしてない事はできませんっ」
「……殿下や陛下だって、戸惑われていたじゃないですか……」
「お願いします……っ。あたし達を――」
「うるさい黙れ!! 父さん……っ」
「分かっている。最悪の事態に備え、手を打っておく。『この者達の狂言に振り回されてしまった』と、シラを切れるようにな」

 涙目になっている少女達の目の前で更に恐怖心が生まれる会話が行われ、やがて5人は衛兵によって拘束されてしまいました。

 ――彼女達がそうなってしまったのは、悪事に加担してしまったから――。

 5人は衛兵によって別室に連行されながら、自分の過ちを後悔し続けたのでした。

しおりを挟む
感想 129

あなたにおすすめの小説

「地味な婚約者を捨てて令嬢と結婚します」と言った騎士様が、3ヶ月で離婚されて路頭に迷っている

歩人
ファンタジー
薬師のナターリアは婚約者の騎士ルドガーに「地味なお前より伯爵令嬢が ふさわしい」と捨てられた。泣きはしなかった。ただ、明日から届ける薬が 一人分減るな、と思っただけ。 ルドガーは華やかな伯爵令嬢イレーネと結婚し、騎士団で出世する——はずだった。 しかしイレーネの実家は見栄だけの火の車。持参金は消え、借金取りが押し寄せ、 イレーネ本人にも「稼ぎが少ない」と三行半を突きつけられた。 3ヶ月で全てを失ったルドガーが街角で見たのは、王宮薬師に抜擢された ナターリアが、騎士団長と笑い合う姿だった。 「なあ、ナターリア……俺が間違っていた」 「ええ、知ってます。でも、もう関係のない話ですね」

政略結婚だからと諦めていましたが、離縁を決めさせていただきました

あおくん
恋愛
父が決めた結婚。 顔を会わせたこともない相手との結婚を言い渡された私は、反論することもせず政略結婚を受け入れた。 これから私の家となるディオダ侯爵で働く使用人たちとの関係も良好で、旦那様となる義両親ともいい関係を築けた私は今後上手くいくことを悟った。 だが婚姻後、初めての初夜で旦那様から言い渡されたのは「白い結婚」だった。 政略結婚だから最悪愛を求めることは考えてはいなかったけれど、旦那様がそのつもりなら私にも考えがあります。 どうか最後まで、その強気な態度を変えることがないことを、祈っておりますわ。 ※いつものゆるふわ設定です。拙い文章がちりばめられています。 最後はハッピーエンドで終えます。

お好きになさって下さい、私は一切気にしませんわ

Kouei
恋愛
婚約者のクレマンド様は、いつも私との約束を破ってばかり。 理由は決まって『従妹ライラ様との用事』 誕生日会にすら来なかった彼に、私はついに告げた。 「どうぞ、私以外のご令嬢をエスコートするなり、お出かけするなり、関係を持つなり、お好きになさって下さい。私は一切気にしませんわ」 二人の想いは、重なり合えるのだろうか …… ※他のサイトにも公開しています。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

悪役断罪?そもそも何かしましたか?

SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。 男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。 あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。 えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。 勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。

訳あり侯爵様に嫁いで白い結婚をした虐げられ姫が逃亡を目指した、その結果

柴野
恋愛
国王の側妃の娘として生まれた故に虐げられ続けていた王女アグネス・エル・シェブーリエ。 彼女は父に命じられ、半ば厄介払いのような形で訳あり侯爵様に嫁がされることになる。 しかしそこでも不要とされているようで、「きみを愛することはない」と言われてしまったアグネスは、ニヤリと口角を吊り上げた。 「どうせいてもいなくてもいいような存在なんですもの、さっさと逃げてしまいましょう!」 逃亡して自由の身になる――それが彼女の長年の夢だったのだ。 あらゆる手段を使って脱走を実行しようとするアグネス。だがなぜか毎度毎度侯爵様にめざとく見つかってしまい、その度失敗してしまう。 しかも日に日に彼の態度は温かみを帯びたものになっていった。 気づけば一日中彼と同じ部屋で過ごすという軟禁状態になり、溺愛という名の雁字搦めにされていて……? 虐げられ姫と女性不信な侯爵によるラブストーリー。 ※小説家になろうに重複投稿しています。

処理中です...