わたしから婚約者を奪った幼馴染が、顔を真っ赤にして怒鳴り込んで来た

柚木ゆず

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第7話 元最愛の人の返事は 俯瞰視点(3)

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「不安なことだとは思うけど、お願いだレベッカ。僕を信じてみてください」

 穏やかな微笑と共に、右の手を前へと伸ばしたロバン。彼は今一度レベッカの顔を真っすぐ見つめ、戸惑う瞳に真摯な視線を注ぎました。

「信じたその先には、必ず僕の言う未来が待っている。再び僕に対する興味や好意が蘇って、あの頃のように二人で笑い合える、幸せに満ちた日々が戻ってくるんだよ」
「……で、ですから……。それは不可能だと、わたくしが誰よりも分かっていて――」
「遮ってごめんよレベッカ。……そうだね、自分のことは自分が一番分かるもの。でも今は、そうじゃないんだ。さっき僕が言ったように、今の君はアエラの言葉によって思い込まされてしまっているのだからね」

 そう言いながら、ロバンは斜め後方を一瞥。アエラが暮らすニーゾイス伯爵邸へと目線を動かし、再度レベッカへと真摯な視線を送ります。

「異なる認識の固定はとても厄介で、以降の思考回路を滅茶苦茶にしてしまうんだ。酷く誤ったものがスタート地点がとなってしまうのだから、正しいゴールにたどり着けるはずがないんだよ」
「…………………………」
「なので、僕を信じてみてください。僕と様々な時間を過ごしてみて、僕の言葉が正解か不正解なのかを、君自身でしっかりと確かめてみてください」
「……………………分かり、ましたわ。ロバン様のお言葉を信じさせていただき、確かめてみますわ」

 本音を言うと、そんなもの意味がないと分かり切っていました。思い込みなどではないと確信を持っていました。
 ですがロバンは思い込んでいると思い込んでいて、言葉だけでは納得しないと感じていました。そこであえて好きなように愛を贈らせて・・・・・から『やっぱり駄目だった』と返し、きっぱり諦めさせるようにしたのです。

((面倒だけど、仕方がありませんわね。しばらく我慢ですわ))


 〇〇


 仕方ないからしばらく我慢をして自由にさせて、そのあときっぱりと縁を切ろう。そんなことをレベッカが考えていた、その時のことでした。
 そんな彼女の対面で、安堵と感謝を笑みを浮かべていたロバン。彼もまた、心の中では考えていることがあって――


((くそっ、まさかレベッカにそんな一面があっただなんて……!! だが、手放しはしないぞ。お前は手元に置いておく、絶対にな……!!))


 ――このような内容が、心の声で紡がれていたのでした。





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