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プロローグ 姉・ルロア視点
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「お姉ちゃん。今日からシュヴァリエ様は、わたしのものよ」
今日は1週間ぶりに、大好きな方とお会いできる日。婚約者であるレアンドル様とお庭でアフタヌーンティーを楽しんでいて、おかわりの紅茶を用意しに戻っていた時でした。キッチンスペースに、白ウサギのようなタレ目の子が――いつも慕ってくれている妹のソフィーがやって来て、普段とはまるで違う、どす黒い笑みを浮かべました。
「レアンドル様が、ソフィーのもの……? どういう、こと……?」
「今日は願いが叶った記念日。最高の日で気分が良いから、全部教えてあげるわ。実はわたし、お姉ちゃんの婚約者を好きになってたの」
シュヴァリエ侯爵家の、レアンドル様。私達はとある舞踏会でダンスをご一緒したことが縁となって、半年前に――およそ10か月の交際を経て、婚約者となっていたのです。
そして婚約者となってからは更にお会いする時間が増えて、私達は同じお屋敷に住んでいますので、ソフィーがレアンドル様を目にする機会が増えていました。その影響でこの子は、レアンドル様を好きになっていたそうです……。
「そんな……。全然、知らなかった……」
「実はね――わたしは気に入ったものは手に入れないと気が済まなくって、シュヴァリエ様がどうしても欲しかったの。でも『姉の婚約者を手に入れようとしている』とバレたら、お父様に怒られて家を追い出されちゃうでしょう? だからこのコトは、わたしとお母様だけの秘密だったのよ」
マチューお父様は曲がったことや間違ったことが大嫌いな、厳しく真っすぐな人。対してセリニアお母様は自分によく似ているという理由で、妹ばかり可愛がっていました。
ですので……。ずっとお父様の目を欺き、同時に、楽に生きていけるように、『姉想いの良い子』を演じていて……。
本性は、平然と悪事を働いてしまえる子で……。だから、お母様に相談をして……。
自分の婚約者とする計画が、水面下で動いていたそうです……。
「厄介なことにシュヴァリエ様はお姉ちゃんを誰よりも愛していて、心変わりはさせられない。わたしの方が何もかも上なのに、想いをこっちに向けられなかった」
「………………」
「だから別の方法を探して、見つけていたのよ。『魅了』というものをね」
魅了したい者の毛髪を採取して自分の毛髪と絡め、秘薬と共に魔法陣の上に載せて呪文を唱える。そうすることで、その人に強い好意を抱かせることができるようです……。
「う、うそ……。そんなものが――」
「実在したのよ、2つ先にある国でね。お母様が何かないかコッソリ調べてくださっていて、ふふふふっ。この世の中も、わたしを応援してくれているんでしょうね。一昨日運よく見つかって、ついさっき毛髪を入手できたから、実行したの」
ソフィーは容姿をイメージした可愛らしい性格を作っていた、本性は真逆な子。それを理解した上で見ても、ゾッとしてしまうくらいに腹黒く口元を緩め……。壁を――外を、指さしました。
「庭で帰りを待っている、シュヴァリエ様。今のシュヴァリエ様はもう、お姉ちゃんの知っているシュヴァリエ様じゃないのよ。何でもわたしの言うことを聞きたくなる、わたししか愛さない、わたしにしか優しくしない人になってるのよ」
「………………」
「ああそうそう、お父様に助けを求めても無駄よ? だってシュヴァリエ様は、ご自分の意思でお姉ちゃんに興味を失くして、わたしを愛してくれるようになったんですものね。……ごめんなさ~いお姉様っ。わたしの性格のお話も魅了のお話も、作り話なの~。シュヴァリエ様もそう仰るはずだから、確かめてみてくださ~い」
「っっ。……レアンドル様……っ」
私は大急ぎでキッチンスペースを飛び出し、レアンドル様のもとへと走ります。スカートを掴んで必死に脚を動かして、あの方のもとへと戻って……っ。急激な運動と不安による汗でびっしょりになりながら、レアンドル様のお顔を覗き込んで――
「ん? ルロア、そんなに慌ててどうしたんだい? とりあえず、その汗を拭いておこうか」
――そうしたらレアンドル様は優しく微笑まれて、ハンカチで丁寧に額や頬を拭ってくださったのでした。
……あ、あれ……?
レアンドル様は、そのまま、です……?
今日は1週間ぶりに、大好きな方とお会いできる日。婚約者であるレアンドル様とお庭でアフタヌーンティーを楽しんでいて、おかわりの紅茶を用意しに戻っていた時でした。キッチンスペースに、白ウサギのようなタレ目の子が――いつも慕ってくれている妹のソフィーがやって来て、普段とはまるで違う、どす黒い笑みを浮かべました。
「レアンドル様が、ソフィーのもの……? どういう、こと……?」
「今日は願いが叶った記念日。最高の日で気分が良いから、全部教えてあげるわ。実はわたし、お姉ちゃんの婚約者を好きになってたの」
シュヴァリエ侯爵家の、レアンドル様。私達はとある舞踏会でダンスをご一緒したことが縁となって、半年前に――およそ10か月の交際を経て、婚約者となっていたのです。
そして婚約者となってからは更にお会いする時間が増えて、私達は同じお屋敷に住んでいますので、ソフィーがレアンドル様を目にする機会が増えていました。その影響でこの子は、レアンドル様を好きになっていたそうです……。
「そんな……。全然、知らなかった……」
「実はね――わたしは気に入ったものは手に入れないと気が済まなくって、シュヴァリエ様がどうしても欲しかったの。でも『姉の婚約者を手に入れようとしている』とバレたら、お父様に怒られて家を追い出されちゃうでしょう? だからこのコトは、わたしとお母様だけの秘密だったのよ」
マチューお父様は曲がったことや間違ったことが大嫌いな、厳しく真っすぐな人。対してセリニアお母様は自分によく似ているという理由で、妹ばかり可愛がっていました。
ですので……。ずっとお父様の目を欺き、同時に、楽に生きていけるように、『姉想いの良い子』を演じていて……。
本性は、平然と悪事を働いてしまえる子で……。だから、お母様に相談をして……。
自分の婚約者とする計画が、水面下で動いていたそうです……。
「厄介なことにシュヴァリエ様はお姉ちゃんを誰よりも愛していて、心変わりはさせられない。わたしの方が何もかも上なのに、想いをこっちに向けられなかった」
「………………」
「だから別の方法を探して、見つけていたのよ。『魅了』というものをね」
魅了したい者の毛髪を採取して自分の毛髪と絡め、秘薬と共に魔法陣の上に載せて呪文を唱える。そうすることで、その人に強い好意を抱かせることができるようです……。
「う、うそ……。そんなものが――」
「実在したのよ、2つ先にある国でね。お母様が何かないかコッソリ調べてくださっていて、ふふふふっ。この世の中も、わたしを応援してくれているんでしょうね。一昨日運よく見つかって、ついさっき毛髪を入手できたから、実行したの」
ソフィーは容姿をイメージした可愛らしい性格を作っていた、本性は真逆な子。それを理解した上で見ても、ゾッとしてしまうくらいに腹黒く口元を緩め……。壁を――外を、指さしました。
「庭で帰りを待っている、シュヴァリエ様。今のシュヴァリエ様はもう、お姉ちゃんの知っているシュヴァリエ様じゃないのよ。何でもわたしの言うことを聞きたくなる、わたししか愛さない、わたしにしか優しくしない人になってるのよ」
「………………」
「ああそうそう、お父様に助けを求めても無駄よ? だってシュヴァリエ様は、ご自分の意思でお姉ちゃんに興味を失くして、わたしを愛してくれるようになったんですものね。……ごめんなさ~いお姉様っ。わたしの性格のお話も魅了のお話も、作り話なの~。シュヴァリエ様もそう仰るはずだから、確かめてみてくださ~い」
「っっ。……レアンドル様……っ」
私は大急ぎでキッチンスペースを飛び出し、レアンドル様のもとへと走ります。スカートを掴んで必死に脚を動かして、あの方のもとへと戻って……っ。急激な運動と不安による汗でびっしょりになりながら、レアンドル様のお顔を覗き込んで――
「ん? ルロア、そんなに慌ててどうしたんだい? とりあえず、その汗を拭いておこうか」
――そうしたらレアンドル様は優しく微笑まれて、ハンカチで丁寧に額や頬を拭ってくださったのでした。
……あ、あれ……?
レアンドル様は、そのまま、です……?
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