前世では伝説の魔法使いと呼ばれていた子爵令嬢です。今度こそのんびり恋に生きようと思っていたら、魔王が復活して世界が混沌に包まれてしまいました

柚木ゆず

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第9話 魔王への扉 クリスチアーヌ視点(1)

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「…………この先に、魔王ダーズンが居るのですね……」
「サミュエル様。大丈夫ですか?」

 チラッと見ると、手が小刻みに震えていた。

「…………平気です。今は繭でも、中には魔王がいる――。そう思うと恐怖がやって来ましたが、追い出しました。問題ありません」

 常日頃から体術剣術を磨いているサミュエル様は、『恐怖は身体と心を鈍らせてしまう』ことをよく理解されている。
 言わずもがな365日24時間恐怖心がないのはバーサーカーで困りものなのだけれど、こういった場面では足かせにしかならない。いくらわたしが隣にいるとはいえ、普通の人間でここまでできるのは、立派だと思うわ。

「こちらの準備はできております。クリスチアーヌ様がよろしいタイミングで、いきましょう」
「……………………では。開けますね」

 気になったことがあるので地面に3回右手で触れてから、扉を押す。そうするとギィッという音を立てて左右に開き、目の前には真っ黒な空間が現れた。

「物騒な見た目をしていますが、これは次元と次元を繋ぐワープ穴です。ここを潜っても死ぬことはなく、『黒の繭』のある空間に出るだけなのでご安心を」
「ご説明、ありがとうございます。……クリスチアーヌ様」
「はい、サミュエル様。まいりましょう」

 万が一の場合に備えて、手を繋いだ状態で真っ黒な空間へと飛び込む。そうするや目の前が真っ暗になって全身を浮遊感が襲い、そんな浮遊感がなくなると同時に視界も回復し、いつの間にかわたし達は不思議な空間に立っていた。

「…………僕はてっきり、いきなり『黒い繭』の前に出るのだと思っていました。違うのですね」

 右も左も後ろも壁で道は前に続いていて、50メートルくらい先かしら。そんな道は突き当りで左右に分かれていて、見える範囲に繭らしき物体はなかった。

「そうですね。『黒い繭』に出会うのは、もう少し先のようです」
「……万が一眷族が敗れた時のことを考えての、時間稼ぎか……? もしそうだとしたら、迷路のように入り組んでいそうですね……」

 そんなサミュエル様の予想は、大正解。とりあえず突き当りまで歩いて右方向を見てみると、また50メートルほど先で二手に道が分かれていたのだった。

「迷路、となっているようですね……」
「おまけに通路の長さから推測するに、相当に規模の大きい迷路が広がっているみたいですね」

 前世で5歳の頃に、庭園などを利用して使った『巨大迷路』が人気になっているとお父様が――当時のお父様が言っていた。きっとその何倍、何十倍の大きさなんでしょうね。

「しかも、ご覧ください。その先は十字路になっていて、かなり複雑になっているものと思われます」
「……迷路のゴールに『黒い繭』があるとして……。そこにたどり着くには、相当な時間がかかってしまいますね……」

 それは、ちゃんとゴールが設定されていると仮定した話。そうなっている保証はどこにもなく、むしろゴールはない――『黒い繭』がある場所にはたどり着けないように設計されている可能性の方が、高いでしょうね。

「……クリスチアーヌ様……。迷路の出口が分かる魔法は、ありません、よね?」
「巨大迷路に挑戦する機会はなかったですし、醍醐味をわざわざ自ら手放すような趣味はありませんでした。ですので持ち合わせてはおりませんが、そうであっても、この迷宮モドキ? を突破できる方法はありますよ」

 どんな方法かというと――


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