お姉様。ずっと隠していたことをお伝えしますね ~私は不幸ではなく幸せですよ~

柚木ゆず

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プロローグ 今日は最高の日 俯瞰視点(1)

「うふふ。見て、虹が出てる。空も、ティナの門出を祝福してくれているわ」

 春と夏、両方の気配を感じる、5月8日の正午前。ハーオット子爵邸の玄関口では、大人の色香を漂わせる女性が――この家の次女ティナの一つ上19歳の姉マルグリットが、両親と共に腹黒い笑みを浮かべていました。

「昨日素敵な・・・式が終わり、今日から貴方は完全にラファオール伯爵家の一員となるのよね。おめでとう。お優しくって、美しくて、しかも大きな商会の次期会頭。あんなにも素晴らしい方と夫婦になれるだなんて、わたし羨ましいわぁ」

 昨昼から昨夕にかけて開かれた、嫡男クロードとティナの結婚式。その主役の一人であるクロードの姿を思い浮かべながら、表情が冴えない妹をニマニマと見つめます。
 前日式を挙げて、長所の固まりな人間と夫婦になった。にもかかわらず、ティナが冴えない表情となっている理由。それは――

 この結婚は、マルグリットと両親が悪意を持って計画したものだったからです。

『ティナがいるせいで、学院でも社交界でもわたしは全然目立たない……! お父様お母様っ、もう我慢の限界よ! あの子の人生を最悪なものにしてっ!!』

 ハーオット家の次女ティナは、容姿端麗成績優秀。おまけに人望もあるため多くの支持を得て、子爵令嬢でありながら生徒会副会長に抜擢。社交界でも多くの同性異性に囲まれ、どこにいても人気者となっていました。
 それによって姉マルグリットは『埋もれて』しまい、このように怒り狂っていたのでした。自身のレベルが全てにおいて中の中程度であり、目立てない自分に一番の責任があるにもかかわらず――。

『実の妹だからこれまで辛抱していてあげたけど、もう許してあげない! なにかあの子がとてつもなく困る状況を作って!!』
『ええ、分かったわ。あなた』
『うむ。お前の望みを叶えてあげよう』

 父レオンス、母クリスタにとって姉妹は、どちらも血の繋がった実子でした。しかしながら二人は自分達にできた初めての子第一子という点で、マルグリットを贔屓していたのです。
 そうしてティナに『最悪』を与えるアイディアが練られ始め、そうしてひねり出されたのが――クロード・ラファオールとの結婚。以前から話題が出るたびティナが表情を曇らせていた、彼女が最も苦手としている同級生かつ生徒会長との結婚だったのです。

『よろこべマルグリット、売り込みは成功だ! 伯爵様は優秀なティナを気に入られて、ティナをラファオール家に送り込めるようになったぞ!』
『あの子は大嫌いな人間と一生涯過ごさないといけなくなって、わたくし達は大商会持ちと繋がりが出来た。最高ねっ!』
『ええお母様っ! ありがとうお父様っ! やった、やったわっ! ついにギャフンと言わせられるわ!!』

 そうしてマルグリットは飛び跳ねて悦び、もちろん、この話は当主命令により白紙にはできません。そのためとんとん拍子で話は進み、昨日――二人が学院を卒業した日に挙式をあげさせ、今日の家をお屋敷を去るようになっていたのです。


 ――なにもかもが、ティナとクロードの思惑通りに動いていたのです――。

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