お姉様。ずっと隠していたことをお伝えしますね ~私は不幸ではなく幸せですよ~

柚木ゆず

文字の大きさ
1 / 29

プロローグ 今日は最高の日 俯瞰視点(1)

しおりを挟む
「うふふ。見て、虹が出てる。空も、ティナの門出を祝福してくれているわ」

 春と夏、両方の気配を感じる、5月8日の正午前。ハーオット子爵邸の玄関口では、大人の色香を漂わせる女性が――この家の次女ティナの一つ上19歳の姉マルグリットが、両親と共に腹黒い笑みを浮かべていました。

「昨日素敵な・・・式が終わり、今日から貴方は完全にラファオール伯爵家の一員となるのよね。おめでとう。お優しくって、美しくて、しかも大きな商会の次期会頭。あんなにも素晴らしい方と夫婦になれるだなんて、わたし羨ましいわぁ」

 昨昼から昨夕にかけて開かれた、嫡男クロードとティナの結婚式。その主役の一人であるクロードの姿を思い浮かべながら、表情が冴えない妹をニマニマと見つめます。
 前日式を挙げて、長所の固まりな人間と夫婦になった。にもかかわらず、ティナが冴えない表情となっている理由。それは――

 この結婚は、マルグリットと両親が悪意を持って計画したものだったからです。

『ティナがいるせいで、学院でも社交界でもわたしは全然目立たない……! お父様お母様っ、もう我慢の限界よ! あの子の人生を最悪なものにしてっ!!』

 ハーオット家の次女ティナは、容姿端麗成績優秀。おまけに人望もあるため多くの支持を得て、子爵令嬢でありながら生徒会副会長に抜擢。社交界でも多くの同性異性に囲まれ、どこにいても人気者となっていました。
 それによって姉マルグリットは『埋もれて』しまい、このように怒り狂っていたのでした。自身のレベルが全てにおいて中の中程度であり、目立てない自分に一番の責任があるにもかかわらず――。

『実の妹だからこれまで辛抱していてあげたけど、もう許してあげない! なにかあの子がとてつもなく困る状況を作って!!』
『ええ、分かったわ。あなた』
『うむ。お前の望みを叶えてあげよう』

 父レオンス、母クリスタにとって姉妹は、どちらも血の繋がった実子でした。しかしながら二人は自分達にできた初めての子第一子という点で、マルグリットを贔屓していたのです。
 そうしてティナに『最悪』を与えるアイディアが練られ始め、そうしてひねり出されたのが――クロード・ラファオールとの結婚。以前から話題が出るたびティナが表情を曇らせていた、彼女が最も苦手としている同級生かつ生徒会長との結婚だったのです。

『よろこべマルグリット、売り込みは成功だ! 伯爵様は優秀なティナを気に入られて、ティナをラファオール家に送り込めるようになったぞ!』
『あの子は大嫌いな人間と一生涯過ごさないといけなくなって、わたくし達は大商会持ちと繋がりが出来た。最高ねっ!』
『ええお母様っ! ありがとうお父様っ! やった、やったわっ! ついにギャフンと言わせられるわ!!』

 そうしてマルグリットは飛び跳ねて悦び、もちろん、この話は当主命令により白紙にはできません。そのためとんとん拍子で話は進み、昨日――二人が学院を卒業した日に挙式をあげさせ、今日の家をお屋敷を去るようになっていたのです。


 ――なにもかもが、ティナとクロードの思惑通りに動いていたのです――。

しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

【完結】姉の婚約者を奪った私は悪女と呼ばれています

春野オカリナ
恋愛
 エミリー・ブラウンは、姉の婚約者だった。アルフレッド・スタンレー伯爵子息と結婚した。  社交界では、彼女は「姉の婚約者を奪った悪女」と呼ばれていた。

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

王太子様には優秀な妹の方がお似合いですから、いつまでも私にこだわる必要なんてありませんよ?

木山楽斗
恋愛
公爵令嬢であるラルリアは、優秀な妹に比べて平凡な人間であった。 これといって秀でた点がない彼女は、いつも妹と比較されて、時には罵倒されていたのである。 しかしそんなラルリアはある時、王太子の婚約者に選ばれた。 それに誰よりも驚いたのは、彼女自身である。仮に公爵家と王家の婚約がなされるとしても、その対象となるのは妹だと思っていたからだ。 事実として、社交界ではその婚約は非難されていた。 妹の方を王家に嫁がせる方が有益であると、有力者達は考えていたのだ。 故にラルリアも、婚約者である王太子アドルヴに婚約を変更するように進言した。しかし彼は、頑なにラルリアとの婚約を望んでいた。どうやらこの婚約自体、彼が提案したものであるようなのだ。

虐げられた令嬢は、耐える必要がなくなりました

天宮有
恋愛
伯爵令嬢の私アニカは、妹と違い婚約者がいなかった。 妹レモノは侯爵令息との婚約が決まり、私を見下すようになる。 その後……私はレモノの嘘によって、家族から虐げられていた。 家族の命令で外に出ることとなり、私は公爵令息のジェイドと偶然出会う。 ジェイドは私を心配して、守るから耐える必要はないと言ってくれる。 耐える必要がなくなった私は、家族に反撃します。

醜い私は妹の恋人に騙され恥をかかされたので、好きな人と旅立つことにしました

つばめ
恋愛
幼い頃に妹により火傷をおわされた私はとても醜い。だから両親は妹ばかりをかわいがってきた。伯爵家の長女だけれど、こんな私に婿は来てくれないと思い、領地運営を手伝っている。 けれど婚約者を見つけるデェビュタントに参加できるのは今年が最後。どうしようか迷っていると、公爵家の次男の男性と出会い、火傷痕なんて気にしないで参加しようと誘われる。思い切って参加すると、その男性はなんと妹をエスコートしてきて……どうやら妹の恋人だったらしく、周りからお前ごときが略奪できると思ったのかと責められる。 会場から逃げ出し失意のどん底の私は、当てもなく王都をさ迷った。ぼろぼろになり路地裏にうずくまっていると、小さい頃に虐げられていたのをかばってくれた、商家の男性が現れて……

完結 裏切られて可哀そう?いいえ、違いますよ。

音爽(ネソウ)
恋愛
プロポーズを受けて有頂天だったが 恋人の裏切りを知る、「アイツとは別れるよ」と聞こえて来たのは彼の声だった

小石だと思っていた妻が、実は宝石だった。〜ある伯爵夫の自滅

みこと。
恋愛
アーノルド・ロッキムは裕福な伯爵家の当主だ。我が世の春を楽しみ、憂いなく遊び暮らしていたところ、引退中の親から子爵家の娘を嫁にと勧められる。 美人だと伝え聞く子爵の娘を娶ってみれば、田舎臭い冴えない女。 アーノルドは妻を離れに押し込み、顧みることなく、大切な約束も無視してしまった。 この縁談に秘められた、真の意味にも気づかずに──。 ※全7話で完結。「小説家になろう」様でも掲載しています。

とある令嬢の優雅な別れ方 〜婚約破棄されたので、笑顔で地獄へお送りいたします〜

入多麗夜
恋愛
【完結まで執筆済!】 社交界を賑わせた婚約披露の茶会。 令嬢セリーヌ・リュミエールは、婚約者から突きつけられる。 「真実の愛を見つけたんだ」 それは、信じた誠実も、築いてきた未来も踏みにじる裏切りだった。だが、彼女は微笑んだ。 愛よりも冷たく、そして美しく。 笑顔で地獄へお送りいたします――

処理中です...