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第4話 違和感 レイオン視点(3)
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「??? レイオン? なぜなにも喋らない? どうしたのだ?」
「??? レイオン? 急にどうしてしまったの?」
「……父上。父上はオルネラの前で、うっかり話してしまったそうですね? そちらの詳細、教えてもらえますよね?」
僕がニッコリと微笑むと、ふたりの顔は一瞬にして引きつった。
父上も母上もようやく、自分達の失言に気付いたようだ。
「…………な、なんのことかな……? レイオン、お前はなにを言っているんだ……?」
「この人は一度も、そんなことを口にはしていないわよ? き、聞き間違えよ……」
「そ、そうだとも。よかったなどと一度も言ってはおらんよ――」
「『よかった?』、ですか? 僕が口にしたのは、オルネラの前でうっかり話をしてしまったそうですね? だけですよ。言ったことがないと仰っているのに、なぜそのあとにあった台詞を口にできるのでしょう?」
「……………………」「……………………」
語るに落ちる、だね。ふたりは言い訳をしたせいで、自らの首を絞めてしまった。
「オルネラに話した、初耳です。いつどんな形でなにを話したのですか? 教えてください」
「……………………」「……………………」
「口を紡ぐようでしたら、こちらも考えがあります。ショックなことがあった数日後に家族に隠し事をされていたと知り、精神に深い傷を負ってしまいました。演奏会への出席などは全てキャンセルし、メンタルが回復するまで無期限でピアノから離れます」
父上と母上が今もっとも恐れているのは、僕がピアノを弾かなくなること。ふたりの一番の弱点をつけば――
「わ、分かった!! 話す!! 話すから!! それだけはやめてくれ!!」
――簡単に、白旗を上げる。
ふたりは顔を真っ青にしながら白状を始め、僕は僕だけが知らなかったことを理解したのだった。
「そうだったのですね。すべては、オルネラが原因だったのですね……」
大人しく他人想いの優しい女の子。初めて会った時から見せていたあれは、偽りの性格。
良い人生を送れるように作り上げたもので、本性はその真逆。自分の目的を果すためなら何でも出来てしまえる、自己中心的の極みといえる人間で……。
9か月前に、僕に異性として興味を持つようになって――。
そんな時、父上達との約束を知って――。
アリア様がいると交際できないと知り、邪魔なアリア様を排除するべく脅迫した――。
これが、顛末。
アリア様が仰っていた話は全て嘘で、オルネラに従わされていただけだったのだ。
「??? レイオン? 急にどうしてしまったの?」
「……父上。父上はオルネラの前で、うっかり話してしまったそうですね? そちらの詳細、教えてもらえますよね?」
僕がニッコリと微笑むと、ふたりの顔は一瞬にして引きつった。
父上も母上もようやく、自分達の失言に気付いたようだ。
「…………な、なんのことかな……? レイオン、お前はなにを言っているんだ……?」
「この人は一度も、そんなことを口にはしていないわよ? き、聞き間違えよ……」
「そ、そうだとも。よかったなどと一度も言ってはおらんよ――」
「『よかった?』、ですか? 僕が口にしたのは、オルネラの前でうっかり話をしてしまったそうですね? だけですよ。言ったことがないと仰っているのに、なぜそのあとにあった台詞を口にできるのでしょう?」
「……………………」「……………………」
語るに落ちる、だね。ふたりは言い訳をしたせいで、自らの首を絞めてしまった。
「オルネラに話した、初耳です。いつどんな形でなにを話したのですか? 教えてください」
「……………………」「……………………」
「口を紡ぐようでしたら、こちらも考えがあります。ショックなことがあった数日後に家族に隠し事をされていたと知り、精神に深い傷を負ってしまいました。演奏会への出席などは全てキャンセルし、メンタルが回復するまで無期限でピアノから離れます」
父上と母上が今もっとも恐れているのは、僕がピアノを弾かなくなること。ふたりの一番の弱点をつけば――
「わ、分かった!! 話す!! 話すから!! それだけはやめてくれ!!」
――簡単に、白旗を上げる。
ふたりは顔を真っ青にしながら白状を始め、僕は僕だけが知らなかったことを理解したのだった。
「そうだったのですね。すべては、オルネラが原因だったのですね……」
大人しく他人想いの優しい女の子。初めて会った時から見せていたあれは、偽りの性格。
良い人生を送れるように作り上げたもので、本性はその真逆。自分の目的を果すためなら何でも出来てしまえる、自己中心的の極みといえる人間で……。
9か月前に、僕に異性として興味を持つようになって――。
そんな時、父上達との約束を知って――。
アリア様がいると交際できないと知り、邪魔なアリア様を排除するべく脅迫した――。
これが、顛末。
アリア様が仰っていた話は全て嘘で、オルネラに従わされていただけだったのだ。
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