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第11話 知らない間に起きていたこと 俯瞰視点(2)
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もしもレイオンが早く目覚めて後遺症がなかった場合は、連絡をして――。昔からリベイル伯爵邸に出入りしていた――仲の良い使用人がいたオルネラは、念のためにそう告げていました。
その結果目覚めたその日のうちにオルネラに報告が入り、最悪の事態が幕を開けます。
((3年分の記憶がないなら、欠けた部分を教えて埋めればいいだけ。だったら、後遺症はないも同然よね))
それなら、レイオンが欲しい。あっという間にレイオンへの興味を取り戻したオルネラは、すぐに父親の元へと走ります。
「お父様、レイオンが目覚めたそうですの。わたし、やっぱりレイオンと婚約したいですわ」
「なんだって……!? それは無理だろう……」
事故で昏睡状態になった途端に、縁を切ると言い出す。それによってバーダとルーナは激怒し、疎遠になっています。
しかもレイオンは、オルネラの脅迫を知っている。オルネラの願いは叶えてやりたいが不可能だと、オルネラの父マーダックは渋面を作りました。
「いいえ、無理ではありませんよ。レイオンもバーダおじ様もルーナおば様も、わたくしを拒みませんわ」
レイオンは記憶を失っている上に、医者の指示で抜け落ちた記憶を教わっていない――アリア・ニーラックへの脅迫の件を知らない。
バーダとルーナは元々、子爵家の娘との交際に難色を示していた。同格の令嬢である自分との交際を歓迎していた。
それらを活かせば修復できると説明し、すぐにバーダとルーナに接触します。
「わたくしとレイオンが婚約をすれば、より多くのものが得られますわ。いかがでしょうか?」
「お詫びとして、お前が欲しがっていたものを一つやろう。どうだ? いい取引だとは思わないか、バーダよ」
「………………そうだな、いい取り引きだ。仲直りをしようじゃないか!」
諸事情で演奏会は延期――という説明には限界があり、レイオンの一件は国内に広まっていました。
金賞受賞者は魅力的なものの、身体に今後何かしら別の問題が出てくるかもしれない。
そういった理由で当初のような良い婚約が望めないと考えていて、バーダとルーナは『現状でもっとも好条件の婚約』に飛びつきます。
――アリアへの感謝や交際の約束は、その瞬間にあっさりと消滅――。
反故にするどころかオルネラとの交際を円滑に進めるため、
「実はお前は、アリア・ニーラックと交際をしていたのだがな……。アリアはお前が事故を起こした途端、手のひらを返して去ってしまったのだ」
「とても、ひどい……。アリア・ニーラックは、とんでもない女だったわ……」
「それに引き換え、オルネラ君は素晴らしい女性だよ。お前の回復と快復を願い、30日間も祈り続けてくれたのだからな」
「困った時に親身になってくれる人こそ、真に大切にすべき人。あの子こそ、理想の相手だと思うわ」
そういった偽りの情報を吹き込み、『アリア=敵』『オルネラ=味方』という構図がレイオンの中に出来上がってしまっていたのでした。
その結果目覚めたその日のうちにオルネラに報告が入り、最悪の事態が幕を開けます。
((3年分の記憶がないなら、欠けた部分を教えて埋めればいいだけ。だったら、後遺症はないも同然よね))
それなら、レイオンが欲しい。あっという間にレイオンへの興味を取り戻したオルネラは、すぐに父親の元へと走ります。
「お父様、レイオンが目覚めたそうですの。わたし、やっぱりレイオンと婚約したいですわ」
「なんだって……!? それは無理だろう……」
事故で昏睡状態になった途端に、縁を切ると言い出す。それによってバーダとルーナは激怒し、疎遠になっています。
しかもレイオンは、オルネラの脅迫を知っている。オルネラの願いは叶えてやりたいが不可能だと、オルネラの父マーダックは渋面を作りました。
「いいえ、無理ではありませんよ。レイオンもバーダおじ様もルーナおば様も、わたくしを拒みませんわ」
レイオンは記憶を失っている上に、医者の指示で抜け落ちた記憶を教わっていない――アリア・ニーラックへの脅迫の件を知らない。
バーダとルーナは元々、子爵家の娘との交際に難色を示していた。同格の令嬢である自分との交際を歓迎していた。
それらを活かせば修復できると説明し、すぐにバーダとルーナに接触します。
「わたくしとレイオンが婚約をすれば、より多くのものが得られますわ。いかがでしょうか?」
「お詫びとして、お前が欲しがっていたものを一つやろう。どうだ? いい取引だとは思わないか、バーダよ」
「………………そうだな、いい取り引きだ。仲直りをしようじゃないか!」
諸事情で演奏会は延期――という説明には限界があり、レイオンの一件は国内に広まっていました。
金賞受賞者は魅力的なものの、身体に今後何かしら別の問題が出てくるかもしれない。
そういった理由で当初のような良い婚約が望めないと考えていて、バーダとルーナは『現状でもっとも好条件の婚約』に飛びつきます。
――アリアへの感謝や交際の約束は、その瞬間にあっさりと消滅――。
反故にするどころかオルネラとの交際を円滑に進めるため、
「実はお前は、アリア・ニーラックと交際をしていたのだがな……。アリアはお前が事故を起こした途端、手のひらを返して去ってしまったのだ」
「とても、ひどい……。アリア・ニーラックは、とんでもない女だったわ……」
「それに引き換え、オルネラ君は素晴らしい女性だよ。お前の回復と快復を願い、30日間も祈り続けてくれたのだからな」
「困った時に親身になってくれる人こそ、真に大切にすべき人。あの子こそ、理想の相手だと思うわ」
そういった偽りの情報を吹き込み、『アリア=敵』『オルネラ=味方』という構図がレイオンの中に出来上がってしまっていたのでした。
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