その愛は本当にわたしに向けられているのですか?

柚木ゆず

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第15話 とある交渉 エミリアン視点(1)

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「ふむ、貴様は私と交渉をしたいそうだな。……子爵家風情が伯爵様に交渉、か。面白いことを言う者がいたものだ」

 ヴァルソリク伯爵邸内にある、応接室。そこに現れた、キツネ目の男性――この屋敷の主であるヴァルソリク卿は、俺を見るや失笑を浮かべた。
 この男は、格下の人間には何を言ってもいいと思っている。元々第一声はこんなものになるだろうと予想していて、腹が立つことはなかった。

「こうしてわざわざ時間を割いてやったのだ。当然、私を満足させられるものを持っているのだろうな?」
「もちろんでございます。必ずやご満足いただけると、交渉の席についていただけるという自負がございます」
「ほぉ、では聞いてやろうじゃないか。貴様は私に何のメリットを与え、なにを見返りとする?」

 くだらなかったら覚悟しろ――。そんな感情を孕んだ視線が突き刺さる中、俺は懐から正方形の箱を取り出した。

「ん、そいつは…………指輪、か。もしやそいつは、私が探し求めていた――そんなはずはない。私が総力を以てしても発見に至っていないものだ。財もコネクションも劣る子爵家の人間に見つけられるはずがない」
「仰る通りでございます。こちらはそういった類のものではなく、わたくしが作成したユニークなアイテムでございます」
「なんだと? 貴様が? ユニーク? どういうことだ……?」
「これより、詳細をご説明させていただきます。まずはこちらをご覧くださいませ」

 前傾姿勢になった――無事興味を示した卿の目の前で、箱から取り出した指輪をいじる・・・。そうして実際に見せながらリングについての詳説を行い、20分ほど費やした『プロモーション』が終わると――

「エミリアンと言ったな? 前言は撤回しよう。お前・・はなかなかに面白い男だ」

 ――ヴァルソリク卿の期限が良くなり、軽快にパンパンと手を叩いた。

「まさか、こんなことを考える者がいるとはな。ああそうだとも。その通りだ。我々の世界に置いて――特に私レベルの貴族ともなれば、『今日の友は明日の敵』は日常茶飯事。私はともかくアレらはまだまだ幼い故、不安があるにはあったのだ」
「はい。残念ながら……卿のような優秀な方が保険をかけたとしても、状況が状況ですので阻止できない場合がございます」
「だがその指輪があれば、少なくとも最悪の事態は防げるというわけだ。…………喜びたまえ、合格だ。次の話に進もうじゃないか」

 次の話。それは、『見返りはなんだ?』。
 俺がヴァルソリク卿に――伯爵家当主に求めるもの。それは――



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