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第24話 大変なこと 俯瞰視点(2)
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「その声は……ローレン!? どうして貴様がここに……!? 誰が許可したんだ!?」
「許可をしなければならない状況だったのだよ。まあ、その話はいい。どうする? 要求を呑むのか呑まないのか、どちらだ?」
「…………要求とはなんなんだ……? なにが目的だ……?」
「求めるものは3つ。1つめは、『現在交わしているアニエス・ローレラルとの婚約を、アリズランド伯爵家の都合と公表した上で解消する』。2つめは、『エミリアン・シルスアルズおよびアニエス・ローレラルに金輪際手を出さないと誓う』だ」
強引に解消させていたと周囲に明かし、それを詫びた上で、今の関係をなかったことにすること。逆恨みの復讐をしないこと。二度と関わらないこと。
提示の『その1』と『その2』は、エミリアンからの要望でした。
「ふざけるな!! 散々邪魔された上にこんな目に遭わされたんだぞ!! それにエリスを手放すなんてでき――」
「クリストフ、すまん。今は黙っていておくれ。……もう片方の要求は、なんだ……?」
「『3回回ってワンと鳴く』。これを私の目の前でお前が行うのなら、貴様を救ってやろう。こいつを使ってな」
ローレンがパチンと指を鳴らすと、隣にいた護衛の男が厳かに小瓶を差し出しました。
「「「???」」」
「こいつは――ああしまった、視界が塞がっていたんだったな。私はエミリアン君よりソレを溶かせる液体を譲り受けているのだよ。これをお前達の顔にかければ、あっという間に悩みの種は消え去ってしまうというわけだ」
困惑するクリストフ達に説明をしたローレンは、ニヤリとしました。
「ここだけの話、私は彼と繋がっているのだよ。ほれ、これがその証拠だ」
「証拠……!? おいっ! ヤツはなにをやっているんだ!?」
「……ご自身の手にあのネバネバをくっつけ、そちらを溶いて見せました……。間違いありません。その効果は本物です」
「と、いうわけだ。さあどうする? 呑む呑まない、どっちだ……?」
「ふざけるなと言っただろうが!! のむはずが――」
「クリストフ、頼むから押さえてくれ! ……それらを呑めば、本当に助けてくれるのだな? 3人全員、助けてくれるのだな?」
父ジルとしては、息子の意思を通してあげたい。ですがその選択はあまりにデメリットが多いため、苦虫をかみつぶしたような表情を浮かべました。
「さっき口にした通りだ。……そうそう、私は忙しいのだよ。よって制限時間は10秒だ。早く決めたまえ」
「じゅうびょう!? 待ってくれ――」
「じゅう。きゅう。はち。なな。ろく。ごー。よん。さん。にー。いち――」
「――分かった!! やる!! 従う!!」
従わなければ、3人共に一生このまま。どんなにクリストフが拒んでも、そう言わざるを得ませんでした。
「まさかあのジル殿が、忌み嫌う者に服従するとはなぁ。面白い、いやぁ実に面白い。今日という日は記念日に制定せねばならんなぁ」
「…………っ。っっ!」
「それでは早速だが、やってもらおうじゃないか。さあ頼むぞ、犬」
「………………分か、りました……。………………ワンっ。ワンワン!」
四つん這いになって、その場で3回回り、鳴く。
ジルは心の中で血の涙を流しながら行い、歯ぎしりをしながら立ち上がりました。
「やった! ちゃんとやったぞ! 約束を守ってくれ」
「そうだな。では――」
満足げに目尻を下げていたローレンは、液体の入った瓶を従者・ランズに投げ渡しました。
瓶を受け取ったランズが、クリストフ達に液体をかけてネバネバを溶かす。そんな様子を見届けたローレンは、
((ふふ))
密かに含み笑い、パンパンと強く手を2回叩きました。そうすると、彼の背後で物音がし始めて――
「許可をしなければならない状況だったのだよ。まあ、その話はいい。どうする? 要求を呑むのか呑まないのか、どちらだ?」
「…………要求とはなんなんだ……? なにが目的だ……?」
「求めるものは3つ。1つめは、『現在交わしているアニエス・ローレラルとの婚約を、アリズランド伯爵家の都合と公表した上で解消する』。2つめは、『エミリアン・シルスアルズおよびアニエス・ローレラルに金輪際手を出さないと誓う』だ」
強引に解消させていたと周囲に明かし、それを詫びた上で、今の関係をなかったことにすること。逆恨みの復讐をしないこと。二度と関わらないこと。
提示の『その1』と『その2』は、エミリアンからの要望でした。
「ふざけるな!! 散々邪魔された上にこんな目に遭わされたんだぞ!! それにエリスを手放すなんてでき――」
「クリストフ、すまん。今は黙っていておくれ。……もう片方の要求は、なんだ……?」
「『3回回ってワンと鳴く』。これを私の目の前でお前が行うのなら、貴様を救ってやろう。こいつを使ってな」
ローレンがパチンと指を鳴らすと、隣にいた護衛の男が厳かに小瓶を差し出しました。
「「「???」」」
「こいつは――ああしまった、視界が塞がっていたんだったな。私はエミリアン君よりソレを溶かせる液体を譲り受けているのだよ。これをお前達の顔にかければ、あっという間に悩みの種は消え去ってしまうというわけだ」
困惑するクリストフ達に説明をしたローレンは、ニヤリとしました。
「ここだけの話、私は彼と繋がっているのだよ。ほれ、これがその証拠だ」
「証拠……!? おいっ! ヤツはなにをやっているんだ!?」
「……ご自身の手にあのネバネバをくっつけ、そちらを溶いて見せました……。間違いありません。その効果は本物です」
「と、いうわけだ。さあどうする? 呑む呑まない、どっちだ……?」
「ふざけるなと言っただろうが!! のむはずが――」
「クリストフ、頼むから押さえてくれ! ……それらを呑めば、本当に助けてくれるのだな? 3人全員、助けてくれるのだな?」
父ジルとしては、息子の意思を通してあげたい。ですがその選択はあまりにデメリットが多いため、苦虫をかみつぶしたような表情を浮かべました。
「さっき口にした通りだ。……そうそう、私は忙しいのだよ。よって制限時間は10秒だ。早く決めたまえ」
「じゅうびょう!? 待ってくれ――」
「じゅう。きゅう。はち。なな。ろく。ごー。よん。さん。にー。いち――」
「――分かった!! やる!! 従う!!」
従わなければ、3人共に一生このまま。どんなにクリストフが拒んでも、そう言わざるを得ませんでした。
「まさかあのジル殿が、忌み嫌う者に服従するとはなぁ。面白い、いやぁ実に面白い。今日という日は記念日に制定せねばならんなぁ」
「…………っ。っっ!」
「それでは早速だが、やってもらおうじゃないか。さあ頼むぞ、犬」
「………………分か、りました……。………………ワンっ。ワンワン!」
四つん這いになって、その場で3回回り、鳴く。
ジルは心の中で血の涙を流しながら行い、歯ぎしりをしながら立ち上がりました。
「やった! ちゃんとやったぞ! 約束を守ってくれ」
「そうだな。では――」
満足げに目尻を下げていたローレンは、液体の入った瓶を従者・ランズに投げ渡しました。
瓶を受け取ったランズが、クリストフ達に液体をかけてネバネバを溶かす。そんな様子を見届けたローレンは、
((ふふ))
密かに含み笑い、パンパンと強く手を2回叩きました。そうすると、彼の背後で物音がし始めて――
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