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第2話 記憶が蘇って リュシエンヌ視点(1)
「………………そっか。転生、だっけ? 友人が読んでいた本と、同じことになっていたのね」
意識を取り戻したあたしはゆっくりと上体を起こし、自分の身体を見回す。
別の世界で別人としてまったく別の人生を過ごしていて、ある日ひょんなことから記憶が蘇る。こんなこと、本当にあるのね。
「……やっぱりあたし、助からなかったんだ。悪いことしちゃったな」
あの時咄嗟に助けた、おばあさん。庇った人が死んだら後味が悪いよね。
滝川蓮司、あたしの恋人で婚約者。一緒に頑張ろうと言っていて……結婚の約束をしていたのに先に死んでしまって、悲しんでるよね。
「お父さんもお母さんも、おじいちゃんもおばあちゃんも。みんな、悲しんだよね。……元気にやってるのかな……?」
残されてしまった人たちのことを考えると、申し訳なくなってくる。
なんであの時自分も避けられなかったの――!? せっかく柔道剣道合気道を習ってたのに、なんであの場面で発揮できなかったの――!?
それと同時に、自分への怒りが激しく湧いてくる。……けど、いくら怒ってももうどうしようもない。あたしは大きくかぶりを振って、悲しみや怒りを身体から追い出した。
「つぅっ。なんで頭を振ったら痛む――って、それはそうよね。あたし、後ろに倒れて後頭部を打ってるんだもん」
前世の記憶が蘇った驚きで、すっかり忘れてしまっていた。
身長153センチの人間が立った状態でそのまま後ろに倒れて、受け身もとらずそのまま激突する。痛むに決まってるわ。
「……コブになって腫れてきてるから、まあ大丈夫でしょう。大変なことにはならないと思うから――。アレについて考えましょうか」
アレ。その内容はもちろん、あの3人。
『ねえマチルド様、ヴァランティーヌ様。この子、良い声で鳴いてくれそうじゃない?』
『確かに。良い反応がありそうですわ』
『ちょうど、学院生活に退屈していたことですしね。この子で遊びましょうか』
ふざけたことを吐き、
『あら、ごめんなさいね。最初はね、そのネックレスを壊す真似をするつもりだったの。でも慌てふためく姿を見ていたら、もっとイジメたくなっちゃったの』
『その判断は正解ですわ。おかげで良いものが見られましたもの』
『ええ、本当に。正解を超えて大正解ですわ』
ふざけたことを繰り返すバカ令嬢への、対応について考えないといけない。
「……こんなにも腹が立つ人間に、久しぶりに会ったわ。こういうヤツらって、特に大嫌いなのよね」
突き飛ばしたりノートを破ったり残飯を食べさせたりする、もちろん最悪。人の宝物――形見を笑いながら壊す、これも最悪。
でもそれ以上に最悪なのが、攻撃対象に『男爵令嬢リュシエンヌ』を選んだということ。抵抗できない相手を選んで嬉々として攻撃する人間が、特に嫌い。
「それと、あたしってね。理不尽なことをやられたら、やり返さないと気が済まない性格なのよね」
だから――
絶対に許さないと、あたしの中で怒りの炎が燃え上がっている。
「パトリシア。マチルド。ヴァランティーヌ。これまでの『わたし』への行い、すべてお返しするわ」
そうするには、計画を練らないといけない。そのためあたしは、急いで宿舎にある自室に戻って――
意識を取り戻したあたしはゆっくりと上体を起こし、自分の身体を見回す。
別の世界で別人としてまったく別の人生を過ごしていて、ある日ひょんなことから記憶が蘇る。こんなこと、本当にあるのね。
「……やっぱりあたし、助からなかったんだ。悪いことしちゃったな」
あの時咄嗟に助けた、おばあさん。庇った人が死んだら後味が悪いよね。
滝川蓮司、あたしの恋人で婚約者。一緒に頑張ろうと言っていて……結婚の約束をしていたのに先に死んでしまって、悲しんでるよね。
「お父さんもお母さんも、おじいちゃんもおばあちゃんも。みんな、悲しんだよね。……元気にやってるのかな……?」
残されてしまった人たちのことを考えると、申し訳なくなってくる。
なんであの時自分も避けられなかったの――!? せっかく柔道剣道合気道を習ってたのに、なんであの場面で発揮できなかったの――!?
それと同時に、自分への怒りが激しく湧いてくる。……けど、いくら怒ってももうどうしようもない。あたしは大きくかぶりを振って、悲しみや怒りを身体から追い出した。
「つぅっ。なんで頭を振ったら痛む――って、それはそうよね。あたし、後ろに倒れて後頭部を打ってるんだもん」
前世の記憶が蘇った驚きで、すっかり忘れてしまっていた。
身長153センチの人間が立った状態でそのまま後ろに倒れて、受け身もとらずそのまま激突する。痛むに決まってるわ。
「……コブになって腫れてきてるから、まあ大丈夫でしょう。大変なことにはならないと思うから――。アレについて考えましょうか」
アレ。その内容はもちろん、あの3人。
『ねえマチルド様、ヴァランティーヌ様。この子、良い声で鳴いてくれそうじゃない?』
『確かに。良い反応がありそうですわ』
『ちょうど、学院生活に退屈していたことですしね。この子で遊びましょうか』
ふざけたことを吐き、
『あら、ごめんなさいね。最初はね、そのネックレスを壊す真似をするつもりだったの。でも慌てふためく姿を見ていたら、もっとイジメたくなっちゃったの』
『その判断は正解ですわ。おかげで良いものが見られましたもの』
『ええ、本当に。正解を超えて大正解ですわ』
ふざけたことを繰り返すバカ令嬢への、対応について考えないといけない。
「……こんなにも腹が立つ人間に、久しぶりに会ったわ。こういうヤツらって、特に大嫌いなのよね」
突き飛ばしたりノートを破ったり残飯を食べさせたりする、もちろん最悪。人の宝物――形見を笑いながら壊す、これも最悪。
でもそれ以上に最悪なのが、攻撃対象に『男爵令嬢リュシエンヌ』を選んだということ。抵抗できない相手を選んで嬉々として攻撃する人間が、特に嫌い。
「それと、あたしってね。理不尽なことをやられたら、やり返さないと気が済まない性格なのよね」
だから――
絶対に許さないと、あたしの中で怒りの炎が燃え上がっている。
「パトリシア。マチルド。ヴァランティーヌ。これまでの『わたし』への行い、すべてお返しするわ」
そうするには、計画を練らないといけない。そのためあたしは、急いで宿舎にある自室に戻って――
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