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第13話 香澄が知らないその後の蓮司 佐々木香澄視点
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「……俺さ、あのあと誰とも結婚しなかったんだよ。86歳で死ぬまで他の誰かと交際することもなかったんだ」
5分くらい、たっぷりとお互いを感じ合った後。お互いが口にしていた『沢山話したいこと』を話し始めて、15分くらいが経った頃だと思う。
あたしは不意に、ポカンと大口を開ける羽目になったのでした。
結婚も交際も、しなかった……!?
「ど、どうして……?」
「どうしてってお前、香澄と結婚するって約束しただろ? その約束が残ってるんだから、他の誰かとするはずないだろ」
「それは、そうだけど……。あたしは死んでしまって……」
「事故でこの世を去ってしまったけど、解消はされてないだろ? こんな別れ方をしたら神様も特別サービスをしてくれる――来世で上手い具合に結婚させてくれるはずだって、信じてた。だからそれまで『変わらない自分』でいようと決めたんだよ、葬式で香澄を見送った日に」
「…………蓮司……」
そう、だったんだ。
「……ありがとうね」
そんな風に想ってくれて。ずっと想っていてくれて、ありがとう。
「俺にとって香澄は特別な人なんだから、当たり前だよ。そういう香澄だって、逆だったら同じことをしてくれてただろ?」
「うん。そうだね。そうしてる」
「だから苦痛なんて一切なかったし、後悔したことも一度もなかった。目標も達成したし、大切な人と結婚できなかった点以外は、最高の人生だったよ」
蓮司はあのあと悲しみと戦いながらも自分の道を進み続け、ジュエリー界で知らない人はいない原型師になっていたそう。
あたしが知らないところでずっと、頑張ってたんだね。
「だから結婚する目標『一人前の原型師』は達成していて――。香澄も、『一人前の警察官』を達成してる」
「え……? ど、どういうこと……?」
あたしは途中で死んでるのに……? 一人前になってる……?
「アレは、死ぬ間際のことだった。覚えてないのは当然だよな」
「???」
「香澄が助けたおばあさんが教えてくれたんだよ。自分は血まみれになってて死にかけているのにさ。『あたしが好きでやったことなんで、気にしないでください』『あたしの分まで笑顔で生きて』って、最後の力を振り絞って言ってくれたってね」
「……そう、だったんだ。ちゃんと、言えてたんだ」
前世の記憶が戻った時、それが心残りの一つだった。あたしはちゃんと、おばあさんの心を守れていたんだ。
「それを聞いて香澄のじいちゃんや家族、所長たちみんなが、『警察官の鏡』『立派な、一人前の警察官』だと涙を流した。じいちゃん――香澄にとっての師匠が太鼓判を押したんだから、間違いない。お前はとっくに、一人前なんだよ」
「……そっか」
おじいちゃんがそう言ってくれたのなら、そうだね。そう思ってもいいと、思える。
「というわけで俺達は、結婚の条件を満たした上で再会している。しかも伯爵家と男爵家でも問題なく結婚できる状況、だよな?」
「そうだね。なにも問題ない」
本来伯爵家――それも伯爵家の中でも上位に位置する家の嫡男と、男爵家の中でも最底辺に位置する家の人間が結婚するなんて、ありえない話。だけど偶然の産物のおかげで、できてしまえるのよね。
「だったら、止まる理由がない。……香澄」
「うん。蓮司」
あたし達はそっと手を手を繋いで。お互いの温もりを感じながら、久しぶりに揃って一歩を踏み出して――
5分くらい、たっぷりとお互いを感じ合った後。お互いが口にしていた『沢山話したいこと』を話し始めて、15分くらいが経った頃だと思う。
あたしは不意に、ポカンと大口を開ける羽目になったのでした。
結婚も交際も、しなかった……!?
「ど、どうして……?」
「どうしてってお前、香澄と結婚するって約束しただろ? その約束が残ってるんだから、他の誰かとするはずないだろ」
「それは、そうだけど……。あたしは死んでしまって……」
「事故でこの世を去ってしまったけど、解消はされてないだろ? こんな別れ方をしたら神様も特別サービスをしてくれる――来世で上手い具合に結婚させてくれるはずだって、信じてた。だからそれまで『変わらない自分』でいようと決めたんだよ、葬式で香澄を見送った日に」
「…………蓮司……」
そう、だったんだ。
「……ありがとうね」
そんな風に想ってくれて。ずっと想っていてくれて、ありがとう。
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「うん。そうだね。そうしてる」
「だから苦痛なんて一切なかったし、後悔したことも一度もなかった。目標も達成したし、大切な人と結婚できなかった点以外は、最高の人生だったよ」
蓮司はあのあと悲しみと戦いながらも自分の道を進み続け、ジュエリー界で知らない人はいない原型師になっていたそう。
あたしが知らないところでずっと、頑張ってたんだね。
「だから結婚する目標『一人前の原型師』は達成していて――。香澄も、『一人前の警察官』を達成してる」
「え……? ど、どういうこと……?」
あたしは途中で死んでるのに……? 一人前になってる……?
「アレは、死ぬ間際のことだった。覚えてないのは当然だよな」
「???」
「香澄が助けたおばあさんが教えてくれたんだよ。自分は血まみれになってて死にかけているのにさ。『あたしが好きでやったことなんで、気にしないでください』『あたしの分まで笑顔で生きて』って、最後の力を振り絞って言ってくれたってね」
「……そう、だったんだ。ちゃんと、言えてたんだ」
前世の記憶が戻った時、それが心残りの一つだった。あたしはちゃんと、おばあさんの心を守れていたんだ。
「それを聞いて香澄のじいちゃんや家族、所長たちみんなが、『警察官の鏡』『立派な、一人前の警察官』だと涙を流した。じいちゃん――香澄にとっての師匠が太鼓判を押したんだから、間違いない。お前はとっくに、一人前なんだよ」
「……そっか」
おじいちゃんがそう言ってくれたのなら、そうだね。そう思ってもいいと、思える。
「というわけで俺達は、結婚の条件を満たした上で再会している。しかも伯爵家と男爵家でも問題なく結婚できる状況、だよな?」
「そうだね。なにも問題ない」
本来伯爵家――それも伯爵家の中でも上位に位置する家の嫡男と、男爵家の中でも最底辺に位置する家の人間が結婚するなんて、ありえない話。だけど偶然の産物のおかげで、できてしまえるのよね。
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