運命の人と出逢ったから婚約を白紙にしたい? 構いませんがその人は、貴方が前世で憎んでいた人ですよ

柚木ゆず

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第8話 悲願の日 アルチュール視点(1)

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「ヴィルジニー。今日は一日、よろしくお願いします」
「はいっ、アルチュール様。今日一日、よろしくお願いします」

 翌日、午前7時過ぎ。ザストール邸。
 ザストール家所有の馬車に乗り込んだ俺達は、隣に向けて微笑み合った。

 ――今日は俺が提案した『ローヴェラスのラベンダー畑』と呼ばれる貴族に人気のスポットに行き、楽しい時間を過ごす――。

 そうなっているのだが、表向きそうなっているだけ。実態は『途中で行った休憩中に馬が暴走してヴィルジニーが轢かれてしまう』という、死の旅が始まろうとしているのだ。

「アルチュール様が大好きな場所。運命の人が好む場所を目に出来る。お誘いいただいた時からずっと、この日を心待ちにしておりました……!」
「それは俺も同じで、好きな景色を運命の人に見てもらいたかった。こちらもずっと、この日を心待ちにしていたよ」

 真実を知らないヴィルジニーは呑気に頬を緩ませ、ソレに返事をしているとゆっくり馬車が動き出した。
 ヴィルジニー、ミレーユ。
 人生最期の旅を、楽しんでおくれ。

「……あ、あの……。アルチュール様」
「ん? なんだい?」
「実は今日のために、マドレーヌを焼いてみたんです。お菓子を作るのは慣れていなくて、美味しくないとは思うのですが……。召し上がっていただけますか……?」
「もちろんさ。では、ひとつ………………お! 上手い! プロみたいだよ!」
「っっ。ありがとうございますっ」

「せっかくサプライズをもらったんだ。こっちも先に、少しだけ教えちゃおうかな」
「え? なんですか……?」
「この旅から帰ったら、君に渡したいものがあるんだ。楽しみにしておいてね」
「は、はいっ。な、なんなのでしょうか……?」
「なんだろうねぇ? ヴィルジニーなら、大喜びしてくれるものなはずだなぁ」
「気になります……! まさか、終わった後まで楽しみにがあるなんて……! アルチュール様、わたくしは幸せ者です……!」

 持ち上げて落とす方が、絶望が増すというもの。こんな風にあの手この手で下衆女を興奮させていき――


 ついに、目的地に着いた。


((さあ始めようか、ヴィルジニー。ミレーユ。粛清をなぁ……!!))


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