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第11話 パパへの、必死のお願い ローズ視点&俯瞰視点
しおりを挟む「修道院に入る!?」
この家の1階にある、清潔感のただよう書斎。そこに駆け込んで唯一の『有効策』を口にしたら、パパは座っていたイスから転げ落ちそうになった。
「しゅ、修道院って……。ローズ……。あの、修道院か?」
「うん、そうなの。あの、修道院なの」
この国の西部にある、『ヴィナロ修道院』。あそこは男子禁制で、性別が男である以上は絶対に立ち入れない。あたしはそんな『聖域』に入るため、修道院行きを希望した。
「ろ、ローズ。修道院にゆく。その意味が、分かっているのか……?」
「ちゃんと、分かってる。生涯修道女にならなくちゃいけなくって、入院した日に貴族籍を失うんだよね? 理解してるよ」
そこに入る際に、貴族としての身分を捨てることになる。
本来その代償は、あたしにとって大きな苦痛になるもの。でも、あの男に延々と付き纏われるよりは何倍もマシ。そんなもの、喜んで捨てる。
「り、理由はなんだ? どうして急に、そんな事を言い出すんだ?」
「これまでの人生を、改めて反省したからなの。あたしは小さな頃からずっと我が儘を言い続けていたから、清らかな環境に身を置いて一からやり直そうと思ったの」
ホントの理由は、内緒。
だって、あたしだけが大変な思いをするなんて不公平だもん。もう一人の愛する人が居なくなったら物足りなくなって、フェリックスはぜ~ったいに浮気をする。だ・か・ら。姉さんは知らずに交際を続けて結婚して、事態に直面して、あたしよりももっと大変な目に遭ってもらいま~す。
「生涯修道院住みになっちゃうけど、志願での入院の場合はいつでも外に出られて外泊もできる。自分がある程度納得できるようになったら――何年か経ったら、ココにも顔を出すから。パパ、あたしを送り出してください」
「…………………………。しかし、だな……」
「パパ、お願い。あんなにも醜い心を持ったままだと、落ち着かないの。一生をかけて浄化したいの。お願い、します」
「………………………………分かった。頑張ってきなさい、ローズ」
「うんっ。ありがとうっ!」
これであたしの安全は保障されて、姉さんは最悪の夫婦生活になるって確定した。
サーラ姉さん。何年かしたら、様子を見に行くからね。その時はあたしに、やつれ切った顔を見せて頂戴ね~っ。
〇〇〇
そうして意気揚々と、修道院へと発ったローズ。
この時の彼女はまだ、知りません。その全てが勘違いで、2年後――姉の様子を見に来た際に、自分自身が絶叫する羽目になると――。
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