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第7話(2)
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「わたしの娘――この国の王女エーナが、そなたをいたく気に入っているのだよ。イリス・マーフェルではなく、我が娘を選ぶ気はないかな?」
陛下は衝撃的な内容をあっさりと仰り、更に平然と続けます。
「君はこの世で唯一、エローの姓を持つ者。世界の英雄だ。そんな『高みへと登った』者には、もっと相応しい相手が必要だと思うのだよ。そうは思わないかな?」
「まったく思いませんね。陛下。俺に誰が相応しいかは、他者が決めることではありませんよ」
ですが――。陛下のペースでのおしゃべりは、あっという間に終わりを告げます。マティアス君は即座に首を左右に振り、跳ね返してくれました。
「……そなたが彼女を愛しているのは、しかと分かった。しかしだな、よく考えてみて欲しいのだ――」
「熟考する必要はありませんよ。何度考えても、結論は一つですからね」
「まっ、マティアス殿っ! エーナと結婚すればそなたは次期国王となるのだよっっ! 英雄であり国のトップになってみたくはない――」
「俺は彼女、イリスを救える力さえあればよかった。そういうものに興味はありませんよ」
「そっ、そうは言うがなっ! 国王になれば更に世界が変わるのだぞっ!? ここだけの話、世論を上手くコントロールしておけば好きな振る舞いをできて――」
「陛下。それらは、『王』が口にしていい台詞ではありませんよ。国王は、その下に居る存在を想い動かなければなりません。職権乱用は言語道断。そもそも、俺のように帝王学などの心得がなく政治に精通してもいない者がなるべきではありませんよ」
「ま、待て待てマティアス殿! もっとクレバーになるべきだっ! 折角のチャンスを活かし、人生を存分に楽しむべきだと――」
「俺は今、人生を存分に楽しんでいますよ。人の価値観は、それぞれ違います。押し付けは止めていただきたい」
陛下は必死に口を動かしますが、全てを遮られて拒否されてしまいます。
……以前から、いくつか悪い噂は耳にしていましたが……。この方は想像以上に、地位に胡坐をかいていたようです。
「…………あらゆる王族貴族からの結婚にまつわる話は、帰国したその日に全てお断りした。そちらは陛下も当然ご存じであり諦めたと思っておりましたが、やはり、今回の目的はそのお話だったのですね」
マティアス君は「はぁ」と呆れの息を吐き、私の手を取りながら立ち上がりました。
「でしたら永遠に回答が変わることはなく、これ以上のやり取りは時間の無駄です。このあとの予定もありますし、帰らせていただきます」
「まっ、待ってくれマティアス殿っ! もうすぐエーナが来るのだよっ! あの子は体調不良で数日間部屋から出ていなかったっ、そなたは一度も姿を見ていないだろうっ!? あの子の顔を見ればその気は変わるっ! せめて一度見てから帰ってくれ!」
「お断り致します。姿を見ても、この心は微塵も揺れませんよ。……失礼致します」
「へ、陛下。失礼致します」
私も急いで頭を下げ、マティアス君に手を握られて出入り口へと向かいます。陛下は引き続き何かを仰っていますが、「あれは無視していいよ」と言われたのでそのまま進みました。
そしてここは王の間ですので扉を開ける前に改めて一礼を行い、そのまま退室を――
「マティアス様っ!? どこにいかれますのっ!?」
――退室をしようとしていたら、ドレス姿の女性と鉢合わせになりました。
美しいブロンドを背中の辺りまで伸ばした、気品あふれる美少女。
この方は陛下の実子、この国の王女・エーナ様です。
陛下は衝撃的な内容をあっさりと仰り、更に平然と続けます。
「君はこの世で唯一、エローの姓を持つ者。世界の英雄だ。そんな『高みへと登った』者には、もっと相応しい相手が必要だと思うのだよ。そうは思わないかな?」
「まったく思いませんね。陛下。俺に誰が相応しいかは、他者が決めることではありませんよ」
ですが――。陛下のペースでのおしゃべりは、あっという間に終わりを告げます。マティアス君は即座に首を左右に振り、跳ね返してくれました。
「……そなたが彼女を愛しているのは、しかと分かった。しかしだな、よく考えてみて欲しいのだ――」
「熟考する必要はありませんよ。何度考えても、結論は一つですからね」
「まっ、マティアス殿っ! エーナと結婚すればそなたは次期国王となるのだよっっ! 英雄であり国のトップになってみたくはない――」
「俺は彼女、イリスを救える力さえあればよかった。そういうものに興味はありませんよ」
「そっ、そうは言うがなっ! 国王になれば更に世界が変わるのだぞっ!? ここだけの話、世論を上手くコントロールしておけば好きな振る舞いをできて――」
「陛下。それらは、『王』が口にしていい台詞ではありませんよ。国王は、その下に居る存在を想い動かなければなりません。職権乱用は言語道断。そもそも、俺のように帝王学などの心得がなく政治に精通してもいない者がなるべきではありませんよ」
「ま、待て待てマティアス殿! もっとクレバーになるべきだっ! 折角のチャンスを活かし、人生を存分に楽しむべきだと――」
「俺は今、人生を存分に楽しんでいますよ。人の価値観は、それぞれ違います。押し付けは止めていただきたい」
陛下は必死に口を動かしますが、全てを遮られて拒否されてしまいます。
……以前から、いくつか悪い噂は耳にしていましたが……。この方は想像以上に、地位に胡坐をかいていたようです。
「…………あらゆる王族貴族からの結婚にまつわる話は、帰国したその日に全てお断りした。そちらは陛下も当然ご存じであり諦めたと思っておりましたが、やはり、今回の目的はそのお話だったのですね」
マティアス君は「はぁ」と呆れの息を吐き、私の手を取りながら立ち上がりました。
「でしたら永遠に回答が変わることはなく、これ以上のやり取りは時間の無駄です。このあとの予定もありますし、帰らせていただきます」
「まっ、待ってくれマティアス殿っ! もうすぐエーナが来るのだよっ! あの子は体調不良で数日間部屋から出ていなかったっ、そなたは一度も姿を見ていないだろうっ!? あの子の顔を見ればその気は変わるっ! せめて一度見てから帰ってくれ!」
「お断り致します。姿を見ても、この心は微塵も揺れませんよ。……失礼致します」
「へ、陛下。失礼致します」
私も急いで頭を下げ、マティアス君に手を握られて出入り口へと向かいます。陛下は引き続き何かを仰っていますが、「あれは無視していいよ」と言われたのでそのまま進みました。
そしてここは王の間ですので扉を開ける前に改めて一礼を行い、そのまま退室を――
「マティアス様っ!? どこにいかれますのっ!?」
――退室をしようとしていたら、ドレス姿の女性と鉢合わせになりました。
美しいブロンドを背中の辺りまで伸ばした、気品あふれる美少女。
この方は陛下の実子、この国の王女・エーナ様です。
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