公爵様が教えてくれたこと~もうメソメソしません~

柚木ゆず

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第18話 ナルテン様からの、お話 ニナ視点

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「ナルテン様……? どう、されましたか……?」
「……………………再三戸惑わせてしまい、申し訳ありません。ニナ様。お話があります」

 7~8秒くらい沈黙されていたナルテン様は、立ち上がっている私の傍までいらっしゃった。
 えっ? えっ!? お話っ⁉

「予想外の連続でして、俺自身も酷く戸惑っていました。ですが、決めましたので。お聞きください」
「は、はい。聞かせていただきます」

 真摯な目線を真正面から向けられ、おもわず心臓がビクンと大きく跳ねる。
 お会いしてまだ十分程度で、全然予想ができない。なにを仰られるの……?

「早々に貴方を戸惑わせてしまった、突然の沈黙。あれは、ニナ様の表情に見惚れてしまっていたのですよ」
「ぇっ」
「あんなにも喜びと幸せに満ちている笑顔は、これまで目にしたことがなかった。水面に映る満月のように綺麗で、自然の神秘のように美しく眩しい。一瞬にして目を奪われ、あの笑い顔は今でも、しっかりと焼き付いています」

 そ、そうだったのですね……。あの沈黙は、私が理由……。

「そして二つ目の不自然、『参ったな』。あれは、貴方の心に惹かれたことによって、自然と出てきた言葉なのです」

 私が口にさせてもらった、否定と勇気の言葉達。そちらが、理由だそう……。

「ここを訪れて、まだ十分程度。出会ったばかりで、いきなりこんなことを伝えるのは失礼であり迷惑だと理解しています。ですが、それらを抑え込めませんでした」

 ナルテン様は微苦笑を作り、ご自身の胸元に左手を添える。

「それはずっと、演劇や物語の世界でのみ発生するものだと思っていました。ですが、この世界にも存在していたのですね。一目惚れは」
「…………………………」

 今後は、私が沈黙する番でした。
 ひ、一目惚れ。この言葉に、複数の意味はありません。貴族特有の比喩に使用されることも、ありません。
 なので、言葉をストレートに受けとっても、よくって……。
 つまり……っ。つまり……っっ。ナルテン様は――

「笑顔と心、外側と内側、貴方の全てに恋をしました。もしよければ――。結婚を前提にして、お付き合いをしていただけませんか?」

 ――ナルテン様は片膝をつかれて、右の手がすぅっと私へと差し出された。

((…………………………うそ……。…………………………ゆめ、みたい……))

 これは、私が何よりも欲しかったお言葉。諦めていたお言葉。
 だから……っ。
 私は……っ。

「はぃ……っ。実は私も、ナルテン様に恋をしておりました……っ。どうか、私を妻にしてください……っ」

 私は、久しぶりに涙を零して――嬉し涙を流しながら、その手を取ったのでした。
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