もしかすると私は、最愛の婚約者に騙されているのかもしれない

柚木ゆず

文字の大きさ
32 / 47

第7話 再会3日後~何も知らない男~ レオン視点(1)

しおりを挟む
「ルシィには、これとこれが似合うと思う。着てみてくれるかな?」

 レコードによるクラシックが流れる、この辺りでも一二を争う洒落た店。彼女の提案によって訪れた店内をじっくりと動き回ったあと、僕のお眼鏡に叶った服を2着渡した。
 当然重視されているのは、露出度。1着目は胸を強調させるもの、2着目は丈が短いものを選んでいる。

「レオン様、こ、これですか……? 胸元がかなり開いていますし、下もかなり短めなのですが……」
「こういった所謂高級店でも取り扱われているように、最近は平民要素を取り入れたファッションが貴族界にも浸透しつつある。そしてなにより、君はこういった服の方が映える。きらきらと輝くと思うんだよ」

 彼女の服は、いつもガードが固い――露出がかなり少なく、折角の『魅力』を台無しにしてしまっている。大きな胸は服の上から眺める事しかできないし、ヒップだってスカート越しに見る事しかできない。
 それじゃあ、勿体ない。僕が、つまらないんだ。

「普段の君もいいのだけれど、違う雰囲気を纏った君も見てみたい。絶対に似合うと、僕が保証するからさ。騙されたと思って、とりあえず着て欲しい」
「………………分かり、ました。着てみますね、レオン様」
「うん、ありがとうルシィ。試着室は…………ああ、あそこにあるね」

 店の内部を見回して、11時の方向で発見。僕の先導で店内を足早に横断し、フィッテングスペースへと移動して――

「ぁっ、これ素敵です。レオン様に似合いそう」

 ――移動している最中にルシィが止まり、傍にあったマネキンをマジマジと眺めはじめた。
 この人形が身につけているのは、サマーニットと黒いスキニー、ロングコート。普段の僕は決して採用しないものであり組み合わせなのだけれど、確かにそうだな。この僕なら着こなせるだろう。

「私がフィッテングをする間、レオン様はお暇ですよね? こちら、着てみてくださいませんか?」
「うーん。いや、遠慮しておくよ。今日は君が主役の日、君のための日だからね」
「レオン様、そう仰らないでください……っ。今日はお洋服をプレゼントしてくださるので、私も何かプレゼントをしたかったんです。お願いします……っ」
「…………そこまで言われてたら、断れないな。分かったよ」

 僕はオーダーメイドしか着たくはないのだが、この様子だと拒否しても食い下がる。そうなるとなかなか着替えた姿を楽しめなくなるので、店員を呼んで一式を用意させた。

「じゃあルシィ、試着してみようか。またあとでね」
「はい。私も、楽しみです……っ」

 そうしてそれぞれフィッテングルームに入り、鼻歌交じりで着替えを行う。
 ここを出たら、露出度を高めたルシィを見られるんだ。楽しみで仕方がない。

((くくく……っ。身体を触れないなら目で楽しむ。我ながら名案だ))

 秘薬を調達できるまで、あと4日。それまではああいう格好をさせて、視覚で味わう。
 実に無駄のない流れだ。

((あの大きさと形なら、良い谷間が見えそうだ……! エリオット。お前が見るべきだった光景は、僕が満喫させてもらうぞ……!!))

 そうして嬉々としながら着替えを終え、一足先にカーテンを開けて外へと出る。
 女は着替えの時間が長く、まだ済んではいないだろう。彼女が使っているフィッテングルームの前まで行って、前で待つようにしよう。

((ふふふ。ふふふふふ……!))

 待っている間に楽しむ音は、クラシックではなく衣擦れのソレ。
 そいつを聞いてアレコレ想像しながら登場を待って、いよいよその時が訪れた。魅惑的な音(ね)がなくなると緑色のカーテンが静かに開き、中からは――

「ザンネン。出てくるのはルシィじゃなくて、俺なんだよなぁ」

 ――中から出てきたのは、犬のような印象を受ける赤色の髪の少年。エリオット・ファムルだった……。

しおりを挟む
感想 131

あなたにおすすめの小説

「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します

スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」 眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。 隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。 エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。 しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。 彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。 「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」 裏切りへのカウントダウンが今、始まる。 スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!

「『お前に書く手紙などない』と言った婚約者へ、私は7年間手紙を書き続けた——ただし、届け先は別の人でした」

歩人
ファンタジー
辺境伯令嬢リゼットは、婚約者に7年間手紙を書き続けた。返事は一度もなかった。 「お前に書く手紙などない。顔も覚えていない」——婚約破棄。しかしリゼットは 泣かなかった。手紙の本当の届け先は、最初から別にあったから。前世の情報分析 能力で辺境の異変を読み解き、暗号として織り込んだ7年分の手紙。それを受け取り 続けていたのは第一王子。リゼットは誰にも知られず、王国を守っていた。 婚約破棄の翌朝、王子からの手紙が届く。「7年間、ありがとう。迎えに行く」

公爵家の家政を10年回した私が出ていったら、3ヶ月で領地が破綻しました

歩人
ファンタジー
エレナは公爵家に嫁いで10年、夫は愛人に入れ込み、義母には「家政婦代わり」と 罵られた。だが領地の財務も、商会との交渉も、使用人の管理も、全部エレナが やっていた。ある日、義母から「あなたの代わりなんていくらでもいる」と言われ、 エレナは静かに離縁届を出した。「では、代わりの方にお任せください」 辺境の町で小さな商会を開いたエレナ。10年間の実務経験は伊達ではなかった。 商会はたちまち繁盛する。一方、エレナがいなくなった公爵家は3ヶ月で経営破綻。 元夫が「戻ってこい」と泣きつくが—— 「お断りです。あと、10年分の未払い給金を請求いたしますね」

物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜

丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。 与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。 専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、 失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。 そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、 セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。 「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」 彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、 彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。 嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、 広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、 独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。 栄養と愛情を取り戻したセレナは、 誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、 社交界で注目される存在となる。 一方、セレナを失った伯爵家は、 彼女の能力なしでは立ち行かず、 ゆっくりと没落していくのだった――。 虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。

「妹の方が可愛い」と不倫夫に捨てられた私。どうぞ借金まみれの実家ごと引き取って。私が肩代わりしていた負債、すべてお二人に引き継いでおきました

唯崎りいち
恋愛
「お前より妹の方が可愛い」 不倫した夫は私を追い出し、略奪した妹と笑った。 どうぞ、その「可愛い妹」と地獄までお幸せに。 私が肩代わりしていた実家と店の多額の借金、すべてお二人に引き継いでおきましたから。 「財布」を失った元夫と、逃げ場を失った妹。 身の丈に合わない贅沢を望んだ寄生虫たちの、惨めな末路を特等席で眺めさせていただきます。

私と義弟の安全は確保出来たので、ゆっくり恋人を探そうと思います

織り子
恋愛
18歳で処刑された大公家の令嬢、セレノア・グレイス。 目を覚ますと――あの日の6年前に戻っていた。 まだ無邪気な弟ルシアン、笑う両親。 再び訪れる“反逆の運命”を知るのは、彼女だけ。 ――大公家に産まれた時点で、自由な恋愛は諦めていた。だが、本当は他の令嬢達の話を聞くたびにうらやましかった。人生1度きり。もう少し花のある人生を送りたかった。一度でいいから、恋愛をしてみたい。 限られた6年の中で、セレノアは動き出す。 愛する家族を守るため、未来を変えるために。 そして本当の願い(恋愛)を叶えるために。

替え玉の私に、その愛を注がないで…。~義姉の代わりに嫁いだ辺境伯へ、身を引くはずが……持ちかけられたのは溺愛契約。

翠月 瑠々奈
恋愛
ベルン皇国の辺境伯ソラティスが求めたのは、麗しき皇都の子爵令嬢レイアだった。 しかし、彼の元へ届けられたのは、身代わりに仕立て上げられた妹のラシーヌ。 容姿も性格も全く違う姉妹。 ​拒絶を覚悟したラシーヌだったが、ソラティスは緋色の瞳を向けて一つの「契約」を持ち掛けた。 その契約とは──? ソラティスの結婚の理由、街を守る加護の力。そして、芽生える一つの恋。それに怯える拙い拒み。 ※一部加筆修正済みです。

愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました

由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。 尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。 けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。 そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。 再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。 一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。 “尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。 静かに離婚しただけなのに、 なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。

処理中です...