24 / 26
第10話 種明かし アンジェリク視点(4)
しおりを挟む
「もういい? 満足できた? いいえ。まだまだデータは集まっていませんよ」
人体を用いての確認は、まだ始まったばかり。100メートル走で例えるとまだ5メートルも進んでいないことを伝えた。
「3人分ありますが、それでも1回だけでは分からないことが沢山あります。薬が完成するまで皆さんにはお付き合いいただきますよ」
「完成するまでだって!? いっ、いつになるのだそれは!?」
「いつになったら自由になれるんですの!?」
「現段階では具体的な数字はお出しできません。それに――そちらに関する話は、おいおいするとしましょうか。とにかく、当分は『9日間』を繰り返すことになるでしょうね」
この薬に関しては、どうしても最終段階の状態が必要になる。本人達にとっては辛いでしょうが、我慢していただきましょう。
「もちろん連続させてしまうと死んでしまいますから、適切なタイミングで肉体を回復させる『空白の時間』を用意します。その際は逃走防止のために制限がある状態ではありますが、自由に過ごせますよ」
「それのどこか自由なんだ!!」
「自由なんてどこにもないわ!!」
「嫌っ!! 嫌っ!! お姉様っ!! 許して!! やめてっ!!」
「そのお願いは聞けません。わたしにとって貴方達はもう家族ではなく、『人』ですらありませんからね。遠慮はしませんよ」
ご先祖様の想いや領民の未来を無視する。それだけでも充分問題があるのに、更にはわたしが生み出したものを我が物としようとした。利益はすべて自分達のために使い、領民のためには僅かたりとも使わないつもりでいた。
こんなことを平気で行える者は人ではなくて、何をしても特に思うことはありません。
「貴方がたが横取りを企まなければ、踏み切ることはありませんでした。なにもかもご自身のせい。自業自得なのですよ」
「あっ、アンジェリクっ、許してくれ! 悪かった!! 私が悪かった!!」
「調子に乗りすぎてしまったわ!! 反省しているの!! ちゃんと反省したからっ、許して頂戴!!」
「お姉様っ、一回だけチャンスをください!! 家のために結婚もしますしっ、無駄遣いもしないと誓いますから!! チャンスをください!!」
「貴方がたのような生き物の『反省』は、口先だけ。そちらは認めませんよ」
これまでの言動を鑑みると、心にもない言葉なのだと簡単に分かる。
まったく反省していないどころか、隙を見てわたしに攻撃してくる――十中八九、殺害を目論む。そんな人達です。
流れ弾が当たる可能性が高い使用人たちの為にも、3人を解放するわけにはいきません。
「お願いだ!! アンジェリク!!」
「お願いよ!! アンジェリク!!」
「お願いします!! お姉様!!」
「……経過を観察して、そこにあるデータを取りたいの。頼めるかしら?」
この人達と話すことは、もうなくなった。
「お願いだ!! アンジェリク!!」
「お願いよ!! アンジェリク!!」
「お願いします!! お姉様!!」
そこでわたしは3人に背を向けて指示を出して、研究を進めるため久しぶりに、2階にあるメイン研究室へと向かったのだった。
人体を用いての確認は、まだ始まったばかり。100メートル走で例えるとまだ5メートルも進んでいないことを伝えた。
「3人分ありますが、それでも1回だけでは分からないことが沢山あります。薬が完成するまで皆さんにはお付き合いいただきますよ」
「完成するまでだって!? いっ、いつになるのだそれは!?」
「いつになったら自由になれるんですの!?」
「現段階では具体的な数字はお出しできません。それに――そちらに関する話は、おいおいするとしましょうか。とにかく、当分は『9日間』を繰り返すことになるでしょうね」
この薬に関しては、どうしても最終段階の状態が必要になる。本人達にとっては辛いでしょうが、我慢していただきましょう。
「もちろん連続させてしまうと死んでしまいますから、適切なタイミングで肉体を回復させる『空白の時間』を用意します。その際は逃走防止のために制限がある状態ではありますが、自由に過ごせますよ」
「それのどこか自由なんだ!!」
「自由なんてどこにもないわ!!」
「嫌っ!! 嫌っ!! お姉様っ!! 許して!! やめてっ!!」
「そのお願いは聞けません。わたしにとって貴方達はもう家族ではなく、『人』ですらありませんからね。遠慮はしませんよ」
ご先祖様の想いや領民の未来を無視する。それだけでも充分問題があるのに、更にはわたしが生み出したものを我が物としようとした。利益はすべて自分達のために使い、領民のためには僅かたりとも使わないつもりでいた。
こんなことを平気で行える者は人ではなくて、何をしても特に思うことはありません。
「貴方がたが横取りを企まなければ、踏み切ることはありませんでした。なにもかもご自身のせい。自業自得なのですよ」
「あっ、アンジェリクっ、許してくれ! 悪かった!! 私が悪かった!!」
「調子に乗りすぎてしまったわ!! 反省しているの!! ちゃんと反省したからっ、許して頂戴!!」
「お姉様っ、一回だけチャンスをください!! 家のために結婚もしますしっ、無駄遣いもしないと誓いますから!! チャンスをください!!」
「貴方がたのような生き物の『反省』は、口先だけ。そちらは認めませんよ」
これまでの言動を鑑みると、心にもない言葉なのだと簡単に分かる。
まったく反省していないどころか、隙を見てわたしに攻撃してくる――十中八九、殺害を目論む。そんな人達です。
流れ弾が当たる可能性が高い使用人たちの為にも、3人を解放するわけにはいきません。
「お願いだ!! アンジェリク!!」
「お願いよ!! アンジェリク!!」
「お願いします!! お姉様!!」
「……経過を観察して、そこにあるデータを取りたいの。頼めるかしら?」
この人達と話すことは、もうなくなった。
「お願いだ!! アンジェリク!!」
「お願いよ!! アンジェリク!!」
「お願いします!! お姉様!!」
そこでわたしは3人に背を向けて指示を出して、研究を進めるため久しぶりに、2階にあるメイン研究室へと向かったのだった。
73
あなたにおすすめの小説
もう好きと思えない? ならおしまいにしましょう。あ、一応言っておきますけど。後からやり直したいとか言っても……無駄ですからね?
四季
恋愛
もう好きと思えない? ならおしまいにしましょう。あ、一応言っておきますけど。後からやり直したいとか言っても……無駄ですからね?
あなたが「消えてくれたらいいのに」と言ったから
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
「消えてくれたらいいのに」
結婚式を終えたばかりの新郎の呟きに妻となった王女は……
短いお話です。
新郎→のち王女に視点を変えての数話予定。
4/16 一話目訂正しました。『一人娘』→『第一王女』
あの日々に戻りたくない!自称聖女の義妹に夫と娘を奪われた妃は、死に戻り聖女の力で復讐を果たす
青の雀
恋愛
公爵令嬢スカーレット・ロッテンマイヤーには、前世の記憶がある。
幼いときに政略で結ばれたジェミニ王国の第1王子ロベルトと20歳の時に結婚した。
スカーレットには、7歳年下の義妹リリアーヌがいるが、なぜかリリアーヌは、ロッテンマイヤー家に来た時から聖女様を名乗っている。
ロッテンマイヤーは、代々異能を輩出している家柄で、元は王族
物語は、前世、夫に殺されたところから始まる。
悪役断罪?そもそも何かしましたか?
SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。
男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。
あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。
えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。
勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。
今まで尽してきた私に、妾になれと言うんですか…?
水垣するめ
恋愛
主人公伯爵家のメアリー・キングスレーは公爵家長男のロビン・ウィンターと婚約していた。
メアリーは幼い頃から公爵のロビンと釣り合うように厳しい教育を受けていた。
そして学園に通い始めてからもロビンのために、生徒会の仕事を請け負い、尽していた。
しかしある日突然、ロビンは平民の女性を連れてきて「彼女を正妻にする!」と宣言した。
そしえメアリーには「お前は妾にする」と言ってきて…。
メアリーはロビンに失望し、婚約破棄をする。
婚約破棄は面子に関わるとロビンは引き留めようとしたが、メアリーは婚約破棄を押し通す。
そしてその後、ロビンのメアリーに対する仕打ちを知った王子や、周囲の貴族はロビンを責め始める…。
※小説家になろうでも掲載しています。
氷の騎士と契約結婚したのですが、愛することはないと言われたので契約通り離縁します!
柚屋志宇
恋愛
「お前を愛することはない」
『氷の騎士』侯爵令息ライナスは、伯爵令嬢セルマに白い結婚を宣言した。
セルマは家同士の政略による契約結婚と割り切ってライナスの妻となり、二年後の離縁の日を待つ。
しかし結婚すると、最初は冷たかったライナスだが次第にセルマに好意的になる。
だがセルマは離縁の日が待ち遠しい。
※小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる